
定数が最小の選挙区は、青梅や武蔵野、昭島、島部の定数1であり、最大の選挙区は世田谷の8である。
この定数差を変えないまま連記制を導入すると、世田谷の有権者は8票を投じて8人を議会に送り込むことができるのに対し、定数1選挙区の有権者は1票を投じて1人を送り込むことしかできない。
これはあまりに不平等だろう。
連記制の導入にあたっては、選挙区の合併や分割によってなるべく全ての選挙区の定数を揃える必要があり、小選挙区制や比例代表制ほど劇的な変化ではないにしろ、導入に際してのハードルとなるだろう。
また、定数を少なくすればするほど大政党有利になり、多くすればするほど小政党有利になるため、定数決定の困難も予想される。
次に、②定数が多すぎる選挙区では非現実的、を検討していきたい。
これは単純な話で、一人を選ぶ小選挙区制や大選挙区単記非移譲式、一政党を選ぶ比例代表制と比較して、定数分だけ投票先候補者を選出しなければならい連記制は有権者にとって負担が大きいのではないかという懸念である。
一人の候補者、一つの政党だけを選べばいい選挙ですら投票率が50%前後であったりするのに、複数選出するとなると、選挙のために考えることが多くなってさらに投票率が低下すると予想される。
それも、定数が2や3であればまだマシで、例えば、選挙区が一つで定数40の東京都北区議会選挙や、同じく選挙区が一つで定数22の大阪府守口市議会選挙で、凄まじい数の候補者の中から40名や22名を選出するのは無謀の極みである。
選挙区を分割する手もあるだろうが、そんなことをするくらいならば選挙区を変えないまま選び方を比例代表制にするほうが制度移行に対する抵抗が小さく円滑に進むだろう。
そのため、現実的に連記制を導入できるとすれば、例えば田舎の県議会で選挙区が少なく、定数を揃えることが比較的容易であったり、あるいは町村議会等で議会全体の定数が異様に少なく、さらに、候補者も有権者も全員が顔見知りという場合に尽きるだろう。
前者の例として、鳥取県議会を挙げることにする。

https://www.nhk.or.jp/senkyo/database/touitsu/2019/31/11430/jyo11430.html
なお、改善後選挙区の地理的妥当性を勘案するべく以下のサイトも参照した
https://www.pref.tottori.lg.jp/9577.htm
定数の多い鳥取市や米子市を分割し、定数の少ない郡部の選挙区を統一することで殆どの選挙区を定数3で統一。この程度の選挙区数であれば定数を調整しながら連記制を導入することができるのではないだろうか。
なお、2019年度の鳥取県議会選挙では、定数12の鳥取市選挙区においてトップ当選者が10,420票(得票率14.2%)、最下位当選者が4,150票(同5.7%)と凄まじい歪みが発生している一方、八頭郡(定数2)と日野郡(定数1)は無投票となっている。
つまり、鳥取市選挙区においてはわずか5.7%の票を固めたに過ぎない候補が当選して鳥取県議会においてトップ当選者と同じ1票を握るという歪みが発生しており、八頭郡と日野郡においては、強固な地盤を誇る現職に対して挑戦する人物さえ現れないという硬直化が現実問題として横たわっているのである。
定数3の連記制であれば、市部においてはより広範な支持基盤を固めなければならなくなるだろうし、トップ当選者と最下位当選者の得票数差も小さくできる。一方、郡部においても、定数3でなおかつ有権者1人が3人に対して投票するという形式であれば、3番目の当選者になることを狙って立候補する人物が現れるだろう。
低得票当選や無投票当選を避けて真っ当な選挙戦を発生させるためには、このような改革が有効になるだろう。
(これはまだ検討段階の極端な私見ではあるものの、比例代表制を導入した場合、各候補者は人口密度の高い市部での選挙活動を増やすだろうと思われる。なぜなら、その方が時間当たり活動当たりの有権者との接触効率が良いからである。そのような状況では、人口比以上に郡部がないがしろにされる可能性が高い。その意味でも、郡部の選挙区が存在し、郡部を明示的に代表する議員が存在することは重要であるように思われる)
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