コメディ

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クレヨンしんちゃん オトナ帝国の逆襲

「クレヨンしんちゃん オトナ帝国の逆襲」原恵一 評価:2点|大人たちが選ぶのは無邪気な享楽か責任ある幸福か、子供向け映画の異色作【アニメ映画】

1992年に始まり、現在まで続く大人気アニメシリーズ「クレヨンしんちゃん」の劇場映画シリーズ第9作目にあたる作品です。放映当初はその下品な内容から猛烈な批判を浴びるも、絶大な子供人気を誇ったことからゴールデンタイムのアニメとして定着。その後、徐々に家族愛を中心としたハートフル寄りの作風が意識されるようになり、いまなお地上波で放送され続ける超長寿アニメの一つとなっております。そんな「クレヨンしんちゃん」シリーズは毎年アニメも放映しているのですが、中でも大きな人気を得ているのが本作。「クレしん」らしいギャグテイストな作風を基調としながらも、当時の大人世代をターゲットにした切なくノスタルジックなテーマで物語がつくられており、子供は爆笑し大人は泣いた作品として知られています。そんな本作をいまになって見返してみたのですが、印象的な場面は多いものの物語の作り込みが甘く、一本調子感が拭えない映画であるように思われました。基本的には子供に向けた作品でそこまで複雑な脚本にはできないだろうという批判は正論として受け取りますが、大人受けという意味で見ても、当時における題材の斬新さが良かったまでで、物語作品と...
いちご100%

「いちご100%」河下水希 評価:2点|2000年代前半のジャンプを支えたお色気恋愛漫画【学園ラブコメ】

2002年から2005年まで週刊少年ジャンプに掲載されていた、所謂「ラブコメ」枠の漫画。1984年連載開始の「きまぐれオレンジ☆ロード」から始まったジャンプラブコメの歴史ですが、比較的シリアスな恋愛を描いた「電影少女」や「I"s」といった90年代の作品からうって変わって、小中学生男子の欲望を全乗せしたハーレムコメディ路線を貫いて人気を得たのが本作となっております。まだまだインターネットが普及初期にあった2000年代前半、二次元美少女たちの際どい画像が毎週拝める漫画は非常に希少であり、この間に年頃だった男性諸氏の心には深く刻まれている作品であることに間違いはないでしょう。非常に有名なネタバレですが、正ヒロインがサブヒロインに敗れるというまさかの結末でもラブコメ界に衝撃を与えた作品です。正直なところ、最序盤と最終盤を除いてはその殆どが微エロシーンをつくりだすための無理やりなラブコメ展開を中心とした話ばかりであり、物語作品として高く評価できる側面はあまりありません。少年にとっての「エロ」成分補給源として少年誌が主役を張っていた時代の「魅せ方」を楽しむために読むか、そうでなければ、序盤と終盤の...
堀さんと宮村くん

「堀さんと宮村くん」HERO 評価:3点|抑制的な作風が笑いと切なさを誘う、天然色系青春恋愛漫画【ラブコメ】

2007年からweb上で連載されている四コマ形式のラブコメディ。いまでこそ大手出版社によるweb漫画雑誌や漫画アプリが乱立しておりますが、当時は各個人がそれぞれのホームページでweb漫画を公開していた時代でした。そんな「個」の時代において圧倒的な人気を誇った作品のひとつであり、連載開始から1年に満たない2008年にはスクウェア・エニックスから単行本が発売されているなど、web漫画の単行本化による出版という流れの先駆けともなった作品です。私も一時期、HERO氏のホームページである「読解アヘン」を毎日覗いていたくらいハマっておりました。2021年にはついにアニメ化されたこともあり、再度手を伸ばしてみようと思い読んでみた次第。結論としては、当時ほど熱中しなかったにせよ、やはり他の青春漫画(特に最初から商業出版されることを前提に練られた漫画たち)にはない独特の魅力がある作品で、最終話を読んだ後は切なく優しい気持ちになりました。あらすじ学校では生粋のギャルとして通っている堀京子(ほり きょうこ)だが、家になかなか寄り付かない両親に代わって幼稚園児の弟を世話する家庭的で献身的な側面を隠し持っている...
月刊少女野崎くん

「月刊少女野崎くん」椿いづみ 評価:3点|王道の笑いで攻める、少女漫画制作にかける青春学園コメディ【青年漫画】

ガンガンオンラインにて2011年から連載されているウェブ漫画。今年で連載10周年を迎えた長期連載のコメディ漫画です。少女漫画のパロディで笑いを取るという独自性を有している作品であり、だからこそ、少女漫画ではあまり見られない「ヒロインが意中の男性の気を引くために頑張る(が空回りする)」という構図が特徴となっております。サブキャラクターたちも個性豊かな面子が揃っており、テンポの良い4コマの中でオタク的な寒いノリに頼らない王道の笑いを提供してくれる点に本作の良さがあります。漫画文化に浸ってきた人ならば必ず笑える作品。忙しない日常の息抜きにお薦めです。あらすじ舞台は私立浪漫学園高校。佐倉千代(さくら ちよ)は意中の人である野崎梅太郎(のざき うめたろう)に告白しようとするも、緊張のあまり「ずっとファンでした」と叫んでしまう。そんな佐倉に、野崎はなぜかサイン入りの色紙を手渡してくれる。サインとして記されていた名前は「ゆめの咲子」。野崎の正体は人気少女漫画家である夢野咲子だったのである。紆余曲折あって野崎の漫画制作を手伝うことになった佐倉だが、武骨で恋愛経験皆無、デリカシーなど欠片もない野崎の少女...
雑記特集

【エンタメ】おすすめエンタメ評論雑記4選【雑記まとめ】

変革するツッコミの役割タイトル?うっせぇわ。恋も2度目なら俺たちのインターネットが帰ってきた当ブログを訪問頂きありがとうございます応援クリックお願いします!
エンタメ

【日常雑記】ぺこぱの漫才の革新性について語る

「M-1グランプリ2019」での決勝進出以降、人気芸人の座を手に入れたぺこぱですが、あらためてM-1での漫才を鑑賞すると、その漫才としての革新性には驚きを禁じえません。そもそも、漫才は「ボケ」が馬鹿げた発言や行動を見せ、それに対して「ツッコミ」が常識的な発言をすることで「ボケ」を諌めるという形式が王道とされています。しかしながら、ぺこぱの漫才では「ボケ」が常識外れなのではないかと思われるような言動をしたあと、「ツッコミ」が「常識は変わりつつある」という現状分析を表明して笑いを誘うわけです。「ツッコミ」が常識的な発言をする、という面白さの枠組みを変えないままに、ツッコミ方に全く新しい方法をもたらし、それまでのツッコミを一瞬にして古いものに変えてしまった。その衝撃はいつ見ても新鮮なものです。ぺこぱの漫才を見て以降、他の漫才師の漫才を観るときには「そのボケに対する否定的なツッコミは、果たして現代における『常識』的発言なのか」という視点でつい見てしまうようになりました。また、時代を取り入れる難しさ、特にある種のポリティカル・コレクトネス的な風潮を漫才に取り入れることの難しさに正面突破で成功した...
LOVE理論

「LOVE理論」水野敬也・佐藤まさき 評価:3点|熱血体育教師によるモテ理論指南ラブコメ【恋愛指南漫画】

「夢をかなえるゾウ」などで有名な作家、水野敬也さんが記した恋愛指南本「LOVE理論」の漫画版です。非モテの大学生、屋良畑寛二を恋愛体育教師「愛也」が指導し、モテる男子へと導くという物語。各章で「〜理論」と称した水野流モテ理論が一つずつ紹介され、その実行を通じて屋良畑はモテる男子の話法や行動を身に着けていきます。全体的な感想としては、そこそこ面白かったといったところ。紹介される理論は納得できるものから首をかしげるものまでありますが、それを忠実かつコミカルにこなしていく漫画のテンポが良く、飽きずに読むことができます。また、どこか「いちご100%」を思わせるような絵柄でパンチラも多用されるため、往年のラブコメ読みにとってもニヤニヤできる漫画になっています。あらすじ主人公、屋良畑寛二(やらはた かんじ)は20歳の大学生。彼女いない歴=年齢の童貞であり、バイト先の可愛い同僚、吉野咲(よしの さき)にも禄に話しかけられないくらい女性が苦手な性格。そんな寛二のもとに現れたのは「愛也」と名乗る謎の幽霊。彼は寛二の祖父が天国から送り込んできた恋愛体育教師であり、1年以内に寛二に彼女ができなければ屋良畑...
湯神くんには友達がいない

【学園コメディ】漫画 「湯神くんには友達がいない」 佐倉準 星3つ

1. 湯神くんには友達がいない2013年から「週刊少年サンデー」で連載されていた作品で、2019年7月に最終巻が発売され完結となりました。連載中にアニメ化がされることもなく、超有名作とは言い難いですが、月イチ連載とはいえ週刊誌連載をやり切って円満完結(おそらく)した作品ということもあり内容はなかなか充実しておりました。分類としてはコメディ(ギャグ)漫画であり、実際なかなか笑わせてくれるのですが、安易に俗っぽい笑いを取りに来るのではなく、人間心理の深いところを探求し、それをユーモラスに表現しているのが本作独自の魅力になっています。高校生あるあるを交えながら、ときに寂しさや切なさ、やりきれなさといった感情を絶妙に表出させることでほろっとくるような展開もあるという作品で、まさに現代版人情コメディという呼び名が相応しいのではないでしょうか。メタ表現や特定クラスタのネタに頼らず、万民向けの普遍的な笑いと感動を追求している点でも卓越した作品です。2. あらすじ高校二年生の綿貫ちひろ(わたぬき ちひろ)は転勤族の父を持ち、これまでも転校を繰り返してきた。しかし、今回の転校先である上星高校には長くい...
あずまんが大王

漫画 「あずまんが大王」 あずまきよひこ 星4つ

1. あずまんが大王「よつばと!」で有名なあずまきよひこさんの出世作。女子高生たちを主人公にした4コマギャグ漫画、というジャンルは1999年の連載開始当初において斬新であり、現在の日常系4コマの基礎となっている作品だといえるでしょう。とはいえ、近年の粗製乱造な漫画群とは違います。主に男性読者に媚びた「萌え」に走りがちな漫画や、「メタ」「パロディ」でニッチな笑いばかりを狙いにいく漫画とは一線を画し、ギャグはいたって王道。むしろ、「よつばと!」に通じる普遍的な笑いと感動がある作品です。あずまんが大王 (1) (Dengeki comics EX)posted with ヨメレバあずま きよひこ メディアワークス 2000-02AmazonKindle楽天ブックス
夜は短し歩けよ乙女

「夜は短し歩けよ乙女」湯浅政明 評価:3点|夜の京都を舞台にした不思議で楽しい幻想恋愛エンターテイメント【アニメ映画】

森見登美彦さんの人気小説を原作に、湯浅政明監督が映画化。「夜明け告げるルーのうた」でアヌシー賞を受賞された監督です。小気味よいファンタジー展開に加え締りの良いラストシーンは印象に残ります。エンターテイメントとしてはこういう作品がもっと世に出て欲しいですね。あらすじ冴えない大学生である「私」は美しき後輩、黒髪の乙女に恋をしていた。そんな「私」が乙女との距離を埋めるために執っていた作戦、その名も「ナカメ作戦」。「ナるべくカのじょのメにとまる」の略であり、要は付け回して偶然を装いすれ違うだけの行動である。サークルOB・OGの結婚式の二次会に参加している今日も、二次会で乙女に近づくチャンス。しかし、乙女の行先はいつも気まぐれ。夜の先斗町で飲み歩いたり、幼き日に読んだ絵本を探して古本市を訪ねてみたり、文化祭のゲリラ演劇で代役ヒロインを務めたり、風邪のお見舞いに京都じゅうを駆け巡ったり。そんな乙女に(勝手に)振り回される「私」と、幻想的なほどに可愛らしい「乙女」。そして、主人公を取り巻く愉快な大学生と大人たちが織り成す、一夜限りのファンタジックエンターテイメント。感想湯浅監督らしい、現在の日本にお...
街の灯

「街の灯」チャールズ・チャップリン 評価:2点|切ないラストシーンが印象的なチャップリンの代表作【コメディ映画】

1931年に発表された映画で、映画好きの間では定番の作品だそうです。チャップリンの代表作の一つということで見てみました。筋書きは面白いのですが、やはり全体的に表現が冗長だと感じます。あらすじチャップリン扮する浮浪者の男は、おふざけばかりの生活で日常を過ごしていた。そんな男はある日、花売りの少女に一目惚れしてしまう。本来ならば見込みがない恋だが、花売りの少女は盲目であり、ひょんなことから男のことを別の大金持ちと取り違えてしまう。貧しい盲目の女性に献身しようと男は身を粉にして働くようになるのだが、男は大富豪の家に入った強盗として逮捕されてしまい.......感想もうちょっと圧縮できるのに、というのが正直な感想です。テンポの良い現代の作品と比べてしまうとかなり冗長に感じてしまいます。各コメディシーンも、当時は斬新だったのかもしれませんが、いまとなってはややグダグダ感があり、一般の視聴には堪えないでしょう。映画好きは細かいところをいろいろ褒めるのかもしれませんが、フィクション作品である以上、気づかれなければ存在しないことと同じです。ただ、ラストシーンはやはりジーンときました。短い「You?」の...
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