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「劇場版 からかい上手の高木さん」赤城博昭 評価:2点|日常系ラブコメの新機軸を打ち出した原作の雰囲気をそのままに表現した小さな感動作【アニメ映画】

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劇場版からかい上手の高木さん
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2013年から小学館の月刊誌(ゲッサンmini→ゲッサン)に連載されているラブコメ漫画「からかい上手の高木さん」をアニメ映画化した作品。

テレビシリーズもしくは原作漫画を鑑賞していることが前提の劇場版となっております。

原作は所謂「日常系」のラブコメなのですが、ギャグを中心としたコメディ路線でもなければ、ハーレム的な路線でもなく、主人公が何らかの努力で意中の女の子を「落とす」という昭和・平成古典路線でもない、という点がまず原作の特徴だと言えるでしょう。

それでは一体、原作は何をする漫画なのでしょうか。

既読者には分かりきったことでしょうが、高木さんという中学生女子が西片という同級生男子に悪戯を仕掛け、西片が動揺するのを楽しむという過程を、西片目線で楽しむという漫画です。

突き放した見方をすれば、自分が特に何もしなくても同級生女子が自分のことを好きになってくれて、その女子が好意の照れ隠しとして悪戯を仕掛けてくれるという、圧倒的な精神優位の状態で敢えて弄ばれるのを楽しむ作品となっております。

(読者側からすれば高木さんが西片を好きなのは明白だが、超純粋中学生男子という設定の西片はそれに気づいていない。読者は女の子に悪戯されて翻弄されるという愉しみと、その悪戯は照れ隠しであり、女の子側は西片(=読者自身)が好きで好きでたまらず、高木さんを生かすも殺すも実は西片(=読者自身)次第という、「追いかけられる側の恋愛」の愉しみを得られる)

そんな作品を長編映画化して一体どうなるのか、という疑問を抱きながら鑑賞し始めたのですが、なるほど、上手く纏めたな、と思いました。

大感動の大作映画とはもちろんならないわけですが、昔で言うところのテレビスペシャル的な(ドラえもんやクレヨンしんちゃん、ポケモンの1時間スペシャルと言えばお分かりいただける方もいらっしゃるのではないでしょうか?)作品として好感を抱けるような、本編を上手く発展させた内容でした。

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あらすじ

舞台は香川県の小豆島。

中学三年生の夏休みを直前に控えつつも、西片はいつものように高木さんにからかわれていた。

しかしながら、目前に迫っているのは中学生活最後の夏休み。

西片も、高木さんも、二人のクラスメイトたちも、何か特別なことをしたい気持ちに駆られている。

島で季節外れの蛍を見た二人は、永遠に結ばれる。

そんな噂を聞いた高木さんは西片と蛍を見ることを意識するようになり、西片もまた、高木さんと一緒に蛍に出会うことを望んでいたのだが......。

感想

80分しかない映画なのですが、「高木さん」映画らしく、序盤は高木さんが西片をからかうパートが長く続きます。

ただ、さすが映画だけあって、日常編的なからかいとはやや一線を画したからかいが為される点が特長でしょう。

じゃんけん対決で「チョキで負けたらキスをすること」と仕掛ける高木さん。

水中息止め対決で高木さんに見とれて負けそうになる西片、高木さんの「好き」口パクに敗北する西片。

もうすぐ、じれったいだけだった二人の仲に新しい展開が訪れるのでは、という予感をさせるようなからかいの構成が視聴者の心をぞわぞわさせます。

とは言いつつも、こんなシーンの連続なんて「からかい上手の高木さん」のような作品が好きな人でなければ飽きずに見続けられはしないだろうとも思われて、やはり、万民向けというよりはファン向けの映画だなという印象でもありました。

さて、物語が動くのはようやくここからで、西方と高木さんは地元のお祭りに参加するのですが、そこで蛍に出会うことはありません。

どうせ蛍に出会わないのであれば、この場面をつくる意味がないのでは、と一瞬思ってしまうのですが、最後まで映画を観ると、製作陣が敢えてこの場面を映画に挿入した意図が分かるような気がします。

つまり、蛍に偶然出会うといったような、他力本願の為せる業によって二人の恋愛を成就させたりはしない、そういった「運命の力」に導かれて二人は結ばれるのではなく、お互いを想う気持ちとそれが発露された行動、気持ちのすり合わせによって結ばれるのだ、という側面を視聴者に見せたかったのではないでしょうか。

映画の尺としてはここまでで半分ほど、この後、西片と高木さんは捨て猫を発見し、飼い主が現れるまで神社でこの捨て猫を飼うことにします。

夏休みも毎日一緒に遊ぼう、なんて面と向かっては言えない二人にとって、夏休みも毎日顔を合わせるための格好の材料になるわけです。

ハナと名付けられた捨て猫と、西片、高木さんとの日々は楽あり苦あり。

一緒に楽しく遊ぶ日もあれば、土砂降り雨からハナを救出する日もある。

そんな生活の中で二人が得るのは、「からかい」以外を通じて発見できるお互いの魅力というわけです。

西片も高木さんも、ハナを楽しませたり労わったりするために手を尽くし、その過程を通じて、相手が非常に優しく心温かい人間であることを確認していくのです。

(もちろんその「優しさ」は、気弱な優しさ、何もできない人間に対して向けられるお情けとしての「優しい」ではなく、優しさを実行し実現するだけの行動力と能力を持った人間に対する尊称としての「優しい」です)

安直な想像としては恐らく、西片と高木さんが将来「家族」になることは確定している(公式スピンオフとして二人が夫婦になった後の生活を描く「からかい上手の元高木さん」が発売されている)ため、二人の関係性が単なる「仲良しの同級生」から「信頼関係のある夫婦」に変化していく過程の一つとして、相手が友人や恋人以上の関係を築くに値するような内面を持った人物であることを確認する一幕を映画の中で描いてみた、という感じなのではないかと思います。

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