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「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」アーロン・ホーバス 評価:3点|世界的な大人気ゲームシリーズがそのまま映画になって登場。手堅い面白さに一献の工夫が加えられた良作【アニメ映画】

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ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー
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1985年に発売されて以来、世界で圧倒的人気を獲得してきた「スーパーマリオ」というテレビゲームシリーズ。

そのゲームの世界をテーマとした初のアニメーション映画が本作となります。

「スーパーマリオ」というゲームシリーズ自体がアクションに重点を置いたゲームであり、ストーリー性がほとんど存在しないことから、そもそもどのような映画になるのか分からないといった前評判でしたが、ふたを開けてみれば文句なしの世界的大ヒットを記録しています。

アニメ映画だけに限れば興行収入は「アナと雪の女王」シリーズの1と2に次ぐ3位につけているらしく、世界のアニメ映画界に金字塔を打ち立てたと言っても過言ではない作品となっております。

そんな本作でしたが、なるほど、世界的に有名なゲームであるという下地がよく考慮されている作品であり、アクション面やストーリー面において、原作シリーズのどれかを一度でもプレイしたことがある人ならば安心感を持って楽しめる内容だと感じました。

加えて、これまであまり語られてこなかった主人公兄弟(マリオとルイージ)の出自を掘り下げるような演出もあり、その点においても濃やかな配慮がなされているのには感心いたしました。

意外性や斬新さはあまりなく、凝った物語があったかといえばそうではなかったものの、映像面の良さも含め、これだけ有名な作品の映画がこのクオリティで仕上がってきたら、確かにこれだけヒットするだろう、というのが私なりの総評となります。

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あらすじ

アメリカのブルックリンに住むイタリア系アメリカ人であるマリオとルイージの兄弟が主人公。

二人は配管工を生業としており、意地悪な上司のいる会社から独立して自分たちの会社「スーパーマリオブラザーズ」を立ち上げ、独立した配管サービスを提供しようとしていたものの、仕事は失敗ばかりであまり上手くはいっていない。

そんなある日、ブルックリンの地下水道が破損し、ブルックリン市街が浸水。

自分たちの名前を売る好機だと察したマリオとルイージは独断で配管を補修しようと地下に潜ったのだが、やはり配管の修理は上手くいかず、それどころか更なる地下へと落下してしまう。

そこで二人が発見したのは謎の土管。

近づいてみると土管に吸い込まれてしまい、二人は異世界へとワープしてしまう。

二人のうち、マリオが着地したのはキノコ王国。

キノピオたちが平和に暮らす国なのだが、このとき、クッパ軍団による侵略のときが近づいていて......。

感想

アクション部分は流石でしたね。

マリオワールド及びマリオカートをモチーフにしながら、ゲームの画面が現実に存在するとすればこんな感じなんだろうな、マリオたちは「実際には」こういうふうに動いているのだろうな、とゲームをしながら想像していた世界がまさにそこにあるという映像が流れている映画でした。

妙な発想で期待を上回ろうなどどいった下心を持つことなく、忠実なゲーム世界の再現こそが期待通りに興奮と感動をもたらすはずだし、その期待通りの興奮と感動というものは、マリオシリーズのブランド力をもってすれば、ほとんど最高クラスの興奮と感動であるはずだ。

そういった制作側の思惑が透けて見えるようで、それでいて、その思惑は成功しており、マリオというゲームシリーズに対する思い出補正が強く働いた結果、映画の世界にいつの間にか惹き込まれておりました。

ゲームシリーズ初期において世界観を共有していたドンキーコングと最初は闘い、後に共闘するという展開もベタだからこそ面白く、見ごたえがあります。

ピーチ姫ではなくルイージが攫われ、それをピーチ姫と一緒に助けに行く、という展開は女性を活躍させなければならないというポリコレ的な配慮もあったのかもしれませんが、マリオとルイージの絆を演出し、また、キノコ王国で初対面となったマリオとピーチ姫の友情が築かれていくという流れを描くためにもうってつけだったのではないでしょうか。

キノコで大きくなる、タヌキで空を飛ぶ、といった原作に忠実なギミックが幾つか使われた後、最後の最後にはスターによる無敵状態で大逆転、という展開は予想通りだからこその興奮という、マリオをテーマとした映画ならではなの面白さがありました。

さて、アクション面やメインストーリー面での感想は以上の通りですが(ベタで予想通りでだからこそ面白いとしか言っていない気がしますが)、ここからは映画独自の設定となったであろう、ブルックリンで暮らす配管工としてのマリオ・ルイージ兄弟に焦点を当てたいと思います。

マリオとルイージはその名前からも分かる通りイタリア系の移民であり、ブルーカラーの典型とも言える配管工という職業に就いています。

当然、暮らし向きがよいはずもなく、マリオとルイージは家族(父母と祖父母)と一緒に狭いアパート暮らしをしているのです。

エンタメ映画であるという特性上、作中で強調されたりはしないのですが、食事はいつもほどんど炭水化物のみのメニューであり、祖父は食事の補助が必要な状態である、六人が住むのには(現代の価値観では)とても足りないような狭い住居しか賃貸できていない、という、一家で助けあってもなお貧しい移民の生活が濃やかに描かれた点には良い意味で驚きを感じました。

メニューが炭水化物のみなのは、貧しいからそれ以外の食べ物を買えないという事情はもちろんのこと、栄養についての知識不足からも起こることであって、ここに貧困層の特性が如実に出ていますし、エンタメ映画であるのに、「貧しくても明るい家族」のような設定にせず、マリオとルイージが落ちこぼれであるがゆえに、父親からは厳しい目で見られている、という雰囲気を出したところはかなり強気の設定だったといえるのではないでしょうか。

こういったリアリティのある背景設定をさりげなく挿入しているからこそ、映画で起こること一つ一つが嘘くさくなく、マリオという青年が持つ誠実さや勇気、それが評価されないことへの葛藤が真摯に伝わってきます。

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