SF

ガタカ

「ガダカ」アンドリュー・ニコル 評価:2点|「遺伝子操作なし」で生まれてきた男が抱いた宇宙飛行士になるという夢物語【アメリカ映画】

1997年に公開されたSF映画。 遺伝子操作によって優秀な子供を意図的に授かることができるようになった時代に、遺伝子操作なしの「不適正者」として生まれてきたヴィンセント・フリーマン。 彼が本来は「適正者」しか就くことできない職業である宇宙飛行士を目指し、宇宙へと旅立つそのときまでを描いた作品になります。 人間に対する遺伝子操作の技術が実用化するのはまだまだ先のことかもしれませんが、出生前診断による選別や、人工授精を行う際の父親の経歴に対する選別など、実質的には「遺伝子(の組み合わせ)を選ぶ」ことが実現されている現在、1997年に本作が描いた「適正者」と「不適正者」から成る社会とそこにある差別の状況はいまなお時機を得ているといえるでしょう。 また、結婚についての社会的流動性が少なくなりつつあり、資産家であり高収入者であり高学歴者である者が同じく資産家であり高収入者であり高学歴者である者と結婚する傾向が頓に強くなっているという傾向も、一種の遺伝子選別強化だと見なせるのではないでしょうか。 自分に「相応しい」「見合う」人間を選んで結婚する、その循環が資産・美貌...
ヨコハマ買い出し紀行

「ヨコハマ買い出し紀行」芦奈野ひとし 評価:4点|滅びゆく世界が生み出す静かな感動【近未来日常系漫画】

1994年から2006年まで「月刊アフタヌーン」に連載されていた漫画であり、敢えてジャンル分けするならば「近未来日常系」とでも呼べる作品です。 誰もが知っているような有名作ではないかもしれませんが、2007年の第37回星雲賞コミック部門を受賞するなど、SFとしての評価も界隈では高い漫画となっており、隠れた実力派という位置づけが適切でしょう。 文明が後退した世界を長閑に生きる人々の、少し不思議でなぜだかとても感動的な日常に打ちのめされること間違いなしの傑作です。 あらすじ 海面上昇に伴って現在の沿海部が水の底に沈み、文明が後退してしまった日本が舞台。 女性型ロボットである初瀬野アルファ(はつせの あるふぁ)は三浦半島の「西の岬」で「カフェ・アルファ」を経営している。 といっても、一日に2,3人お客さんが来ればよいほうの暇なお店で、アルファはとても長閑に日常を暮らしていた。 近所に住む「おじさん」や、その孫である「タカヒロ」と交流したり、ヨコハマへ買い出しに出かけたり、少し長めの旅に出たりする中で、アルファは様々な人々との出会いと別れを経験する。...
アイの歌声を聴かせて

「アイの歌声を聴かせて」吉浦康裕 評価:2点|AI搭載の転校生がもたらす波乱万丈の青春学園物語【アニメ映画】

2021年10月29日に公開されたアニメ映画で、監督は吉浦康裕さん。 「イブの時間」「アルモニ」「さかさまのパテマ」等の作品を手掛けた監督で、国内の映画祭では文化庁メディア芸術祭では複数回入賞しており、アニメ映画界隈では知られた存在です。 そんな吉浦さんにとって久方ぶりの長編作品となる本作ですが、その内容は「イブの時間」 と同じく、吉浦さんのライフワークともいえる「AIとの共存」と「高校生学園もの」を掛け合わせた作品。 序盤の展開こそAIという要素を活かした面白い側面も見られましたが、全体としては凡庸な青春学園物語だったという印象があり、ぎりぎり佳作とは言えない凡作だと感じました。 あらすじ 舞台は世界的な巨大企業「星間エレクトロニクス」のAI実験都市である景部市。 極めて同質性の高い企業城下町となっており、市立景部高校に通う生徒の親はたいてい星間の関連企業に勤めているというほど。 農業ではロボット田植え機が活躍し、市内を走るバスは無人運転など、AI実験都市らしい光景が日常に溶け込んでいる。 そんな景部市に住む高校生、天野悟美(あまの ...
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ロバート・A・ハインライン

「夏への扉」ロバート・A・ハインライン 評価:2点|夢と恋に破れた青年の鮮やかな復讐が見どころのタイムトラベル冒険小説【古典SF小説】

1957年に出版されたタイムトラベル小説の古典的名作で、SF作家であるロバート・A・ハインラインの代表作としても知られています。 大昔に出版された小説ながら特に日本での人気は根強く、新装版がたびたび出版されるほどのロングセラー。 2021年にも山崎賢人さん主演で映画化され、公開に合わせて新装版が発売されました。 読後の感想としては、王道の物語を纏める手堅い構成には見るべきところがあるものの、肝心の「面白さ」にはやや欠ける作品という印象です。 あらすじ 1970年のロサンゼルスで青年ダンは絶望の淵にいた。 友人であるマイルズと立ち上げた会社の業績は絶好調。 しかし、マイルズと自分の秘書であるベルの奸計により、ダンは会社を追い出されてしまったのである。 絶望のあまり、開発されたばかりの新技術「冷凍睡眠」を利用して長い眠りにつき、遥か未来で目覚めることにより人生をやり直そうと一度は決断するダンだったが、直前に思い直し、マイルズとベルへの復讐を実行に移す。 しかし、復讐は失敗。 そして、ダンは自分の意思によってではなく、マイルズとベ...
機動戦士ガンダム

「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」村瀬修功 評価:2点|普遍的なサスペンスに見せかけたガンダムオタク向け作品【アニメ映画】

1979年から続く「機動戦士ガンダム」シリーズの最新映画で、1989年に発売された同名小説が原作となっております。 いわゆる「ガンダム世界内の歴史」においては「逆襲のシャア」という映画の続編にあたり、初代ガンダム(ファーストガンダム)が宇宙世紀79-80年を描いた作品であるところ、本作は舞台は宇宙世紀105年、つまり約35年後の世界。 とはいえ、私が鑑賞した限りでは「逆襲のシャア」を知らなくても鑑賞に問題はないと思われました。 しかし、本作の問題は別の場所にあります。 気取らないドキュメンタリー調の演出や素晴らしい作画は褒めることができますが、物語の筋があまりにも意味不明で、市街地戦は迫力がある一方でモビルスーツ同士の戦闘は魅力に欠けます。 また、登場人物たちの寒い言動も影響してか、どうしても「子供が考えた『大人の世界』を描いた映画」という印象を抱いてしまいます。 あらすじ 宇宙世紀105年。 人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになって、すでに半世紀と35年が経過した世界。 地球に居住できるのは選ばれた特権階級とその生活を...
映画/アニメ特集

【アニメ】おすすめアニメランキングベスト3【オールタイムベスト】

本ブログで紹介したアニメの中からベスト3を選んで掲載しております。 私の好みもあり、バトルやファンタジー、ハーレムというよりはヒューマンドラマをテーマとした作品が中心となっております。 第3位 「少女終末旅行」尾崎隆晴 【荒廃した世界を旅する二人の少女】 ・あらすじ 舞台は激しい戦争の末に回復の見込みがないほどに荒廃した世界。 人類は僅かに生存しているのみで、集団を形成するほどの人口さえ残っていない。 そんな世界を旅するのが、チトとユーリの二人組。 半装軌車ケッテンクラートを繰り、食料と燃料を求めて進む日々。 ときには生き残っている人間と出会って彼らの生きざまを見届け、ときには文明の残り香漂う工場や墓地に辿り着き、かつての人類社会の面影を新鮮な驚きとして受け止める。 荒廃した巨大都市の最上層を目指す彼女たち。 旅路の果てにたどり着く場所とは......。 ・短評 チトとユーリという二人のキャラクターの会話劇で物語が進みます。 荒涼とした世界の中で、過酷な出来事に立ち向かったり、新鮮な光景に感動...
小説特集

【海外エンタメ小説】おすすめ海外エンタメ小説ランキングベスト3【オールタイムベスト】

本ブログで紹介したエンタメ小説の中からベスト3を選んで掲載しています。 「エンタメ小説」の定義は難しいところでありますが、本記事では、肩の力を抜いて楽しめる作品でありながら、同時に深い感動も味わえる作品を選ぶという方針でランキングをつくりました。 第3位 「アルジャーノンに花束を」ダニエル・キイス 【知性を得た元知的障がい者の幸福と苦悩】 ・あらすじ チャーリィ・ゴードンは知的障がい者で、ビークマン大学知的障がい者成人センターに通いながらパン屋で下働きをしている。 読み書きも碌にできない彼だったが、ある日、ビークマン大学の二―マー教授とストラウス博士からある実験への協力を求められる。 それは、チャーリィの知能を劇的に高める手術のドナーになって欲しいというものだった。 手術を受けたチャーリーの知能はゆっくりとだが確実に向上していき、最終的には天才的な知能を得ることに成功する。 しかし、だからこそ、彼には苦難の時間が訪れるのだった。 あまりの知能の違いから人間関係に破綻が生じ始め、社会の欺瞞に気づくたびに葛藤する。 ...
星新一

【唯一無二の超短編作家】小説「地球から来た男」星新一 評価:2点【ショートショート作品集】

「ショートショートの神様」として知られる星新一さんの作品集。 ショートショートを精力的に発表し続けた異端の作家であり、1957年デビューでありながら現在においてもその作品群は根強い人気を誇っております。 日本経済新聞社が毎年開催している小説新人賞「星新一賞」に名前を冠していることもその証左だと言えるでしょう。 文学賞の受賞こそ2度(日本推理作家協会賞・日本SF大賞特別賞)と少ないですが、刊行された作品集の数は膨大で、漫画化やドラマ化されたメディアミックス作品も枚挙に暇がありません。 そんな星新一さんの作品集の中でも、本作は2007年に角川文庫から発売された比較的新しい作品集です。 SF色の濃い表題作から、ミステリ仕立ての作品、あるいはヒューマンドラマに重きを置いた作品など、バラエティ豊かな内容となっておりました。 あらすじ ・地球から来た男 産業スパイとして活躍していた男だが、ある日、潜入先で産業スパイであることが暴かれてしまう。 口封じのため、特殊な装置を使って遥か遠くの惑星に飛ばされてしまった男。 しかし、男の眼...
時をかける少女

【時をかける少女】昭和の青春をノスタルジックに描く名作SF小説の実写映画版 評価:2点【大林宣彦】

1983年公開の旧い映画ですが、近年でも話題に上ることが多い作品です。 広島県尾道市を舞台にした「尾道三部作」の一作として、大林宣彦監督の代表作に連ねられています。 同監督が2020年4月に亡くなられたため、4月18日には追悼の意味を込めた再放送が行われたりもしました。 本作が恒常的に注目を集める理由として、原作である同名小説がメディアミックスの底本として定番化しており、近年においても度々リメイクされていることの影響が大きいでしょう。 2006年のアニメ映画(監督:細田守、主演:仲里依紗)、2010年の実写映画(監督:谷口正晃、主演:仲里依紗)、2016年のテレビドラマ(主演:黒島結菜)、2015年の舞台版(演劇集団キャラメルボックス)と、2000年代においてもその勢いは留まるところを知りません。 本ブログでも、原作小説及び2006年のアニメ映画版を既にレビュー済みです。 リメイクされるたびに、「時をかける少女」映像化の元祖として注目を集めるのが今回取り上げる1983年の実写映画版であり「元祖」足りうるだけの知名度を維持しな...
アーサー・C・クラーク

「都市と星」 アーサー・C・クラーク 評価:2点|快適で無機質なディストピア世界、青年による脱出と帰還の冒険譚【古典SF小説】

「2001年宇宙の旅」や「幼年期の終わり」で知られるSFの巨匠、アーサー・C・クラークの作品。 1956年に出版された作品ですが、2009年に新訳版が出るなどいまでも根強い人気を誇っております。 そんな本作、SFの人気作品というだけあってSF的な設定や世界観は魅力的で面白いと感じましたが、肝心のストーリーがやや冗長で起伏に欠けていると思いました。 序盤では閉じられた世界から新しい世界に主人公が踏み込むまでが長すぎ、終盤では主人公が宇宙に旅立ってその現況を眺めるという展開にしてしまったことで風呂敷が広がり過ぎて展開が拙速かつ大味になっています。 あらすじ 物語の舞台は遥か未来の地球。 ダイアスパーという都市では人間生活の全てをコンピュータが管理しており、生誕や死さえもその例外ではない。 人間のデータは全て「メモリーバンク」に記録されており、人間は両親の身体からではなく「メモリーバンク」から生まれ、そして死にたくなったときには再び「メモリーバンク」へと還り、時間をおいて新しい肉体を得て生まれ変わるというサイクルを繰り返していた。 人間の一生...
パプリカ

アニメ映画 「パプリカ」 監督:今敏 星1つ

1. パプリカ 2006年公開のアニメ映画で、監督は「PERFECT BLUE」や「千年女優」、「東京ゴッドファーザーズ」を手がけた今敏さん。 筒井康隆さんの同名小説が原作で平沢進さんが主題歌を手がけるなど、この手の作品が好きな人には好まれる面子が揃っているといえるでしょう。 「千年女優」は当ブログでもレビュー済みです。 そんな濃密な面子によって製作された本作ですが、過度にマニア向けだったというのが妥当な評価でだと思います。 映像表現の技術的な面には見るべきものがあるのかもしれませんが、普通の人が普通に見てエンタメとして楽しめるような映像表現にはなっておりません。 さらに、物語という点に目を向けると全体的に稚拙な部分が多く、まるで自意識過剰な学生が急ピッチで撮影しましたとでもいうようなちぐはぐ感が目立っておりました。 2. あらすじ 主人公、千葉敦子(ちば あつこ)はサイコセラピストとして働いている。 「DCミニ」という装置を使って患者の夢の中に入り、精神治療を行うことが彼女の仕事だ。 そんなある日、「D...
orange

「orange」高野苺 評価:2点|素敵な友情が炸裂するハイテンポな”リア充文学”【少女漫画】

2015~2016年における大ヒット漫画の一つで、名前くらいは聞いたことがある人が多いのではないでしょうか。 「このマンガがすごい!」などでランキング上位入りを果たし、累計発行部数は500万部近くに到達。 アニメ化はもちろん、土屋太鳳さんと山崎賢人さん主演で実写映画にもなっています。 高野苺さんが漫画家としてジャパニーズドリームを掴んだ作品ともいえるでしょう。 おおまかな感想としては、「未来から手紙が届く」というSF要素と王道少女漫画展開を合わるという手法が斬新で(意外にもこれまでなかったんですね)、画力も高く、双葉社版の装丁も魅力的で大ヒットしたのは頷けます。 ただ、主人公二人の魅力と、物語の作り込みという点ではイマイチな点が多く、じっくり読んで味わうには不十分だと感じました。 後世に残る作品というよりはカジュアルに消費されていく作品の成功作という印象です。 あらすじ 舞台は長野県松本市。高校二年生に進級した高宮菜穂(たかみや なほ)は、始業式の日の朝に奇妙な手紙を家の郵便ポストに発見する。 差出人は10年後の自分で、自...
ダニエル・キイス

「アルジャーノンに花束を」ダニエル・キイス 評価:3点|特別な手術を受けた知的障害者が直面する知性の幸福と傲慢の悲哀【古典SF小説】

アメリカのSF作家、ダニエル・キイスの作品で、1959年に中編として、そして1966年には長編に書き直されて発表されています。 ネビュラ賞とヒューゴー賞という権威ある賞を受賞しており、日本でも2015年に新版が出るなど、定評ある古典として読まれ続けています。 感想としては、「手堅い名作」という印象。斬新な設定で唯一無二の地位を確立しており、特殊な題材ながら人を選ばない筆致には素晴らしいものがあります。 一方で、これほど突飛な設定ながらあと一押しとなるようなどんでん返しなどがないところはやや肩透かしでありました。 あらすじ チャーリィ・ゴードンは知的障がい者で、ビークマン大学知的障がい者成人センターに通いながらパン屋で下働きをしている。 読み書きも碌にできない彼だったが、ある日、ビークマン大学の二―マー教授とストラウス博士からある実験への協力を求められる。 それは、チャーリィの知能を劇的に高める手術のドナーになって欲しいというものだった。 賢くなりたい、賢くなればもっとみんなの期待に応え、仲良くなれるはずだと考えていたチャーリィ。 ...
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