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タコピーの原罪

「タコピーの原罪」 タイザン5 評価:2点|凄惨な環境で過ごす少女と、救済を図る無能な異星人、皮肉な展開と仄かな希望【短編漫画】

集英社が運営しているweb漫画サイト「ジャンプ+」に連載されていた作品。 全16話の短期連載ながらインターネット上で好評を博して多数のPVを獲得、上下巻にて単行本化された漫画です。 いじめられている少女の前に、宇宙から来た「タコピー」というマスコットキャラクターのような生き物が現れ、少女を助けようと奮闘するという物語。 そう紹介すると聞こえがよいのですが、実態は真逆で、少女たちが抱える背景の陰惨さと、「タコピー」の無能ぶりによって悪いほう悪いほうへと事態が進行していくというサスペンス調の展開が特徴となっております。 全体的な評価としては、発想は面白いと感じたのですが、いかにも漫画的な「ベタ」さが多く、とりわけ深刻に描かなければならないはずの、登場人物たちの家庭環境の酷さがステレオタイプだった点が惜しいと感じました。 物語の枠組みは悪くないのですが、細部に工夫がないために凡庸だと言わざる得ない作品です。 あらすじ 小学四年生の久世しずか(くぜ しずか)が公園で出会ったのはタコのような形をした謎の生き物。 しずかによって「タコピー」と名付け...
ルックバック

「ルックバック」 藤本タツキ 評価:4点|二人の創作者が歩んだ青春の記録、創作が持つ異形の力を添えて【短編漫画】

「チェーンソーマン」の大ヒットによって一躍名を馳せた漫画家、藤本タツキさんによる約140ページの短編漫画です。 集英社が運営するweb漫画サイト「少年ジャンプ+」に掲載されるとたちまちSNSで大反響を巻き起こし、「このマンガがすごい!2022」においてはオトコ編で1位を獲得するなど、短編漫画ながら飛ぶ鳥を落とす勢いのヒットとなった作品。 書店で単行本を手に取ったときも、その薄さと本体価格440円という安さに驚いたもので、いわゆる「読切」がここまでのセンセーションを巻き起こしたのかと思うと感慨深いものがありました。 しかもその内容が、あまり「ジャンプ」らしくないヒューマンドラマとなっているのも注目するべき点でしょう。 お調子者でギャグ漫画が得意な藤本と、不登校で背景画の天才である京本。 二人の劇的な出会いと別れ、夢を追うこと、友情の価値、そして「創作」という生業が持つ凄まじい力。 それらのテーマが、とても温かく、それでいて物悲しく描かれている傑作漫画です。 あらすじ お調子者の小学四年生、藤野歩が最近嵌っていることといえば、学年新聞に自分...
フォレスト・ガンプ

「フォレスト・ガンプ」ロバート・ゼメキス 評価:3点|激動の戦後アメリカを駆け抜けた、実直で不器用な男の人生【アメリカ映画】

1994年のアメリカ映画で、大ヒットを記録してアカデミー賞の作品賞を受賞、いまなお古典として人気を誇るハリウッド映画の王道的名作とされる作品です。 知能指数が低く、足も不自由に生まれた少年がその実直な性格を梃子に激動の人生を歩んでいく、というまさに王道を往く物語であり、ベトナム戦争や公民権運動、ピンポン外交といった戦後アメリカ激動の歴史を重ね合わされ、ケネディ大統領にニクソン大統領、ジョン・レノン、そしてアップルといった、当時の時代を象徴するような実在の人物や企業が登場することで、主人公の人生という小さな流れと、戦後アメリカの歴史という大きな流れが相互に影響を与えている点が特徴となっております。 そんな本作ですが、もちろん、粗を探そうと思えばたくさんあるのですが、物語のダイナミックさと「人生」の不思議さといった大奔流の要素がそれらの粗による悪さを超える魅力を形成しており、総合すれば佳作と呼べる映画となっております。 その評価も、今日に鑑賞すれば佳作といったところで、きっと、時代の流れによりマッチしていた当時に鑑賞すればその感動もひとしおだっただろう、ということは容易...
ガタカ

「ガダカ」アンドリュー・ニコル 評価:2点|「遺伝子操作なし」で生まれてきた男が抱いた宇宙飛行士になるという夢物語【アメリカ映画】

1997年に公開されたSF映画。 遺伝子操作によって優秀な子供を意図的に授かることができるようになった時代に、遺伝子操作なしの「不適正者」として生まれてきたヴィンセント・フリーマン。 彼が本来は「適正者」しか就くことできない職業である宇宙飛行士を目指し、宇宙へと旅立つそのときまでを描いた作品になります。 人間に対する遺伝子操作の技術が実用化するのはまだまだ先のことかもしれませんが、出生前診断による選別や、人工授精を行う際の父親の経歴に対する選別など、実質的には「遺伝子(の組み合わせ)を選ぶ」ことが実現されている現在、1997年に本作が描いた「適正者」と「不適正者」から成る社会とそこにある差別の状況はいまなお時機を得ているといえるでしょう。 また、結婚についての社会的流動性が少なくなりつつあり、資産家であり高収入者であり高学歴者である者が同じく資産家であり高収入者であり高学歴者である者と結婚する傾向が頓に強くなっているという傾向も、一種の遺伝子選別強化だと見なせるのではないでしょうか。 自分に「相応しい」「見合う」人間を選んで結婚する、その循環が資産・美貌...
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