サン・テグジュペリ

小説 「人間の土地」 サン・テグジュペリ 星2つ

1. 人間の土地 郵便輸送機や偵察機のパイロットとして戦間期から第二次世界大戦にかけて活躍し、その傍らで自身の経験を元にした著作を多数発表した作家サン・テグジュペリの作品。彼の作品では「星の王子さま」「夜間飛行」の次に有名でしょう。新潮文庫版ではカバー絵及び解説を宮崎駿が担当するなど、各方面への影響の大きさが伺えます。「夜間飛行」のレビューはこちら。 評価としては「夜間飛行」に一歩劣るといった印象。飛行機乗りとしてサン・テグジュペリが経験した様々な出来事はどれも印象的で烈しいものですが、「物語」としての質を問われるとイマイチです。 2. あらすじ ベンガジを発ったサン・テグジュペリ機は夜空に迷い、砂漠の上に不時着してしまう。機体は炎上し、サン・テグジュペリと同乗していたプレヴォーの二人は着の身着のままで砂上に放置された。 街の灯りも見えない砂漠の中、三日三晩彷徨い続ける二人の僚友。食料も水も尽き果て、幻覚が見えるようになる。生きることに挫けそうになりながらも立ち直り、生存への道筋を探していく。 「愛するということは、おたがいに顔...
RWBY

アニメ 「RWBY volume3」 監督:ケリー・ショウクロス 星4つ

1. RWBY volume3 アメリカのアニメーション制作会社"Rooster Teeth"による日米混合テイストのバトルアクションファンタジーアニメ。その第3弾です。原案者でありvolume2までの監督であったモンティ・オウム氏が急逝したため、volume3からは脚本担当だったケリー・ショウクロス氏が監督となっております。volume2までの感想はこちら。 volume2までのアクションについてはモンティ・オウム氏の表現技法が駆使されていたらしく、やや劣化という印象は否めませんが、その分、脚本は面白く、少年少女が暗躍する悪に立ち向かっていくという王道ストーリーの中での友情や恋愛、ドキドキハラハラさせる起伏のある展開と、やはりこんなアニメこそ19時台に放映されていて欲しいと思わせるような内容でした。 2. あらすじ 街を襲撃したグリムの群れを撃退し、戦闘の余韻に浸るルビーたち。しかし、学園生活では重要なイベントが差し迫っていて、学園を中心とする街にはあらためて緊張と興奮の気配が漂っていた。 そのイベントの名前は 「バイ...
うたえ! エーリンナ

漫画 「うたえ! エーリンナ」 佐藤二葉 星2つ

1. うたえ! エーリンナ 星海社(講談社100%子会社)が運営する4コマ漫画サイト「ツイ4」で連載されていた作品。古代ギリシアの女学校を舞台に、詩人を目指す女学生エーリンナの学校生活と合唱祭での奮闘を描くという異色のテーマとなっており、著者である佐藤さんがギリシア悲劇に造詣が深く、古代ギリシアの竪琴「リュラー」の演者でもあることからこそ描けたテーマだと言えるでしょう。 そういった作品ではありますので、「古代ギリシア(の女学校)文化」にまつわる部分は興味深く読めました。ただ、物語自体は凡庸で、いかにも「漫画っぽい」展開をなぞっただけという感が否めません。百科事典的な面白さだけが評価できる作品でした。 2. あらすじ 舞台は古代ギリシアのレスボス島。ギリシア史上最高の女詩人サッポーが運営する女学校には嫁入り前の女性たちが集められ、日々、花嫁修業に励んでいた。 そんな女学校に入学したエーリンナだったが、機織りのような花嫁修業科目には全く興味なし。彼女の夢は詩人になることであり、サッポー先生には特別な敬慕の念を抱いている。 しかし、古代ギリシャ...
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☆☆☆(新書・教養書)

教養書 「映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと」 シド・フィールド 星3つ

1. 映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと 映画脚本の書き方を定式化し、今日においてもその理論は色褪せるどころか「三幕構成」として多くの創作家たちに受け入れられている脚本家シド・フィールドの著書。映画脚本の指南書として書かれ、著者自身もそのつもりだったものの、映画に関わらず広い意味での物語創作術の古典として知られています。 内容はなかなか面白かったですね。言われてみれば当然だけれど確かにそれをやるのとしないのとでは違うだろうなぁという脚本づくりの基礎が述べられており、そもそも脚本の中の要素(主題・登場人物・ストーリーライン)がどうやって生まれてくるのか、それらをどのようなフレームワークに収めればよいのかが書かれています。やや繰り返しが多くて文章が散漫、また、具体例として言及する映画が偏っているという点に難を感じましたが、読後は物語を見る目が少し変わるかもしれません。 2. 目次 第1章 映画脚本とはなにか第2章 主題(テーマ)を作る第3章 登場人物(キャラクター)を創造する第4章 登場人物(キャラクター)を構築する 第5章 ストーリーと人物設...
中島敦

小説 「李陵・山月記・弟子・名人伝」 中島敦 星4つ

1. 李陵・山月記・弟子・名人伝 高校の教科書掲載作品としてお馴染みの「山月記」ほか、中島敦の代表的作品を連ねた短編集です。「李陵」及び「山月記」は巻末の「参考文」にある通り実在する中国の古典を改変したもので、オリジナル作品かと問われれば結構答えに窮するのではないかと思うのですが、「山月記」の教科書掲載によりフィクション作家として多くの人に名前を知られているのが中島敦という小説家です。 「山月記」はやはり名作で、多くの(国語・文学好きの)心を掴んで離さない作品としてこれからも輝き続けるのだろうと思わされました。それ以外では「名人伝」がそれなりに楽しめましたが、そのほかの作品は淡々とし過ぎてあまりよく分からなかったというのが正直な感想です。 2. あらすじ ・名人伝 紀昌という男が天下一の弓の名人を目指し飛衛という名手に弟子入りする。しかし、飛衛は紀昌に弓を持たせず、基礎訓練として瞬きをしない訓練や視力を上げる訓練を命じるのだった。紀昌は素直に従い、鍛錬を続けること五年、ついに飛衛から奥義伝授を許可され、瞬く間に腕前を上げていく。最後には飛衛との弓...
RWBY

アニメ 「RWBY volume2」 監督:モンティ・オウム 星4つ

1. RWBYvolume2 アメリカのアニメーション制作会社"Rooster Teeth"の手による作品。日本風のキャラクター造形ながらアメリカタッチな掛け合いとアクションシーンで一部のアニメファンに好評を博しています。 かくいう私もファンの一人でありまして、本ブログでも以前にvolume1を取り上げています。 そして、RWBYはこのvolume2でも期待を裏切らない楽しさを提供してくれました。 独特のバトルアクションはもちろん、恋と友情の学園ものという側面もますます磨きがかかっています。 2. あらすじ 港を襲ったローマン・トーチウィック率いるホワイト・ファング部隊を撃退し、ワイスとブレイクも仲直りしてその絆を修復。いつもの学園生活に戻ったルビーたちは食堂でリアル・フード・ファイトに興じるなどやんちゃで楽しい日々を送っていた。 しかし、チームRWBYの一員、ブレイクの心は落ち着かない。トーチウィックやホワイト・ファングが暗躍し、ビーコンの街を狙っているかもしれないという状況でのんきにしてなどいられないと言うのだった。 ...
少女終末旅行

漫画 「少女終末旅行」 つくみず 星2つ

1. 少女終末旅行 新潮社が運営するweb漫画サイト「くらげバンチ」に掲載されていた作品。単純な線が却って趣を醸し出すような絵柄が特徴的で、いわゆるバトル漫画やラブコメ、ギャグ漫画、萌え漫画という分類とは一線を画す作風です。2017年にアニメ化されており、アニメの方は本ブログでも感想を書きました。 アニメ版にオリジナル要素がほとんどなく、展開が漫画版をなぞっていることから抱く感想もほとんど同じなのですが、荒廃した世界で繰り広げられる単純な会話劇だったからこそアニメ版の方がその良さを際立たせられていたという印象です。また、漫画がアニメの終了後に完結したため双方でエンディングが異なっている(アニメ版は漫画版の途中のエピソードを締めに使っている)のですが、ここもどちらかといえばアニメ版の方が心に残る終わり方だったように思います。 2. あらすじ 舞台は激しい戦争の末に回復の見込みがないほどに荒廃した世界。人類は僅かに生存しているのみで、集団を形成するほどの人口さえ残っていない。 そんな世界を旅するのが、チトとユーリの二人組。半装軌車ケッテ...
☆☆☆(新書・教養書)

新書 「日本社会のしくみ」 小熊英二 星3つ その2

1. 日本社会のしくみ その2 日本の特徴的な雇用慣行の形成過程を国際比較や歴史的観点から解説する分厚い(600ページ!)新書。レビューも長くなって「その1」を受けての「その2」になります。「その1」はこちら。 感想欄の記述は「その1」から直に繋がっておりますので、「その1」を読んでからご覧ください。 2. 目次 序章第1章 日本社会の「三つの生き方」第2章 日本の働き方第3章 歴史の働き第4章 「日本型雇用」の起源第5章 慣行の形成第6章 民主化と「社員の平等」第7章 高度成長と「学歴」第8章 「一億総中流」から「新たな二重構造」へ終章 「社会のしくみ」と「正義」のありか 3. 感想 それでは、どうしてこのような差が生まれたのでしょうか。その理由は歴史的経緯の違いであり、その解説こそ本書のメインディッシュになります。欧州では中世の「ギルド」からの名残りで職種別組合が発展し、組合が特定技能の教育・技術認定を行ったほか、組合が同一技能だと認めた職人同士が所属企業の違いという理由で給与差が生まれないようはたらきかけたためです。一方...
☆☆☆(新書・教養書)

新書 「日本社会のしくみ」 小熊英二 星3つ その1

1. 日本社会のしくみ その1 あとがき・参考文献一覧含めると600ページにも及ぶ新書として一部界隈で有名になった作品で、定価も税別1300円と新書らしからぬ値段です。しかしながら、それに値する中身も備わっておりました。 著者は慶応大学総合政策学部教授の小熊さん。本ブログでは若き日の傑作「単一民族神話の起源」をレビュー済みです。 「単一民族神話」からはうって変わって「日本の雇用慣行」がテーマの本作。しかし、ステレオタイプを退け、データや具体例をもとに社会の構造や傾向を解き明かしていこうとする姿勢は変わっておりません。より現代的なテーマになり、新書という枠組みで著すにふさわしい時機を捉えた作品になっていると感じました。 2. 目次 序章第1章 日本社会の「三つの生き方」第2章 日本の働き方第3章 歴史の働き第4章 「日本型雇用」の起源第5章 慣行の形成第6章 民主化と「社員の平等」第7章 高度成長と「学歴」第8章 「一億総中流」から「新たな二重構造」へ終章 「社会のしくみ」と「正義」のありか 3. 感想 「日本社会のしくみ」...
☆☆☆(新書・教養書)

教養書 「千の顔を持つ英雄」 ジョーゼフ・キャンベル 星3つ

1. 千の顔を持つ英雄 哲学者・神話学者として有名なジョーゼフ・キャンベル教授の代表的著作で、ジョージ・ルーカス監督が本作を参考にして映画「スター・ウォーズ」シリーズを製作したと述べていることでも有名です。 世界各地の神話に見られる「英雄の旅」。一見、それぞれの神話は全く異なる物語や意味を提示しているようで、その実、そこには共通の構造や意味があり、それこそ過去の人々が神話を構築して後世に伝えようとしたある種の「真理」だという画期的な神話解釈で脚光を浴び、今日まで創作者のバイブルとして扱われています。 2. 目次 プロローグ モノミスー神話の原型第一部 英雄の旅第二部 宇宙創成の円環エピローグ 神話と社会 3. 感想 神話での「英雄の旅」における典型的な展開が短く説明されたのち、それを立証するために大量の古今東西神話エピソードが紹介されるという流れで基本的には話が進んでいきます。 とはいえ、さすが「哲学者・神話学者」という著者の肩書だけあって、決して読みやすい本ではありません。 紹介される神話のエピソードはほとんどが断片的なもので...
青木祐子

小説 「これは経費で落ちません ~経理部の森若さん~」 青木祐子 星1つ

1. これは経費で落ちません いわゆる「ライト文芸」や「キャラ文芸」と呼ばれるジャンルの作品で、「働く女性(都市部の事務員)」が主人公と、流行りの要素を詰め込んだ作品。シリーズは現在(2019年9月)時点で6巻まで刊行されており、累計70万部突破と出版不況の中で気を吐く人気作品です。NHKでドラマ化もされており、2019年7月から放送されています。 しかしながら、私個人としてはあまり楽しめませんでした。いかにもフィクションな「キャラクター」で埋め尽くされる現実感のない職場が舞台で、「経理部」や「経費」という表題の要素もおまけ程度で掘り下げられることもなく、いわゆる「日常の謎」をさらに薄めたような、起伏も何もあったもんじゃない程度の出来事ばかりで物語は進行します。リアリティがないのに日常ものという長所が見出しづらい作品で、なぜヒットしているのか理解しがたいというのが正直な感想です。 2. あらすじ 主人公、 森若沙名子(もりわか さなこ)は 20代後半 。「天天コーポレーション」の経理部に勤めている。部長を含め4人の経理部の中では3番目の年次だが、その的...
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