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ジョーカー

「ジョーカー」トッド・フィリップス 評価:2点|格差社会における現代的な貧困が生んだ「無敵の人」による凶行を描いた点に注目が集まったバッドマンシリーズのスピンオフ【アメリカ映画】

アメリカンコミックの名作である「バッドマン」は映画シリーズとしても人気ですが、その「バッドマン」シリーズにおける悪役の一人、ジョーカーの過去を描いた所謂スピンオフが本作の位置づけとなります。とはいえ、本作が世界的に大ヒットした理由は「バッドマン」人気とは別のところにあるのです。本作の主人公であるジョーカーことアーサー・フレックは精神疾患を持った中年男性であり、僅かな賃金を得られていた職業としての道化すらクビになって貧困に苦しんでいます。認知症を患っている母と二人暮らしで、介護にも時間と気力体力を奪われる生活。彼の未来には一切の「希望」がありません。彼には失うものが全くないのです。インターネットスラングを用いるのならば、アーサーは「無敵の人」となってしまったわけです。そんな「無敵の人」が辿る人生の行方、その過程の描き方、演出方法が異常なリアリティを持っている。そういった、いわば社会派映画としての側面において本作は世界的に好評を博しているようです。しかしながら、個人的な感想といたしましては、凡庸な作品に感じられました。確かに、「無敵の人」のリアリティを描いているだとか、格差が蔓延る希望なき...
ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー

「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」アーロン・ホーバス 評価:3点|世界的な大人気ゲームシリーズがそのまま映画になって登場。手堅い面白さに一献の工夫が加えられた良作【アニメ映画】

1985年に発売されて以来、世界で圧倒的人気を獲得してきた「スーパーマリオ」というテレビゲームシリーズ。そのゲームの世界をテーマとした初のアニメーション映画が本作となります。「スーパーマリオ」というゲームシリーズ自体がアクションに重点を置いたゲームであり、ストーリー性がほとんど存在しないことから、そもそもどのような映画になるのか分からないといった前評判でしたが、ふたを開けてみれば文句なしの世界的大ヒットを記録しています。アニメ映画だけに限れば興行収入は「アナと雪の女王」シリーズの1と2に次ぐ3位につけているらしく、世界のアニメ映画界に金字塔を打ち立てたと言っても過言ではない作品となっております。そんな本作でしたが、なるほど、世界的に有名なゲームであるという下地がよく考慮されている作品であり、アクション面やストーリー面において、原作シリーズのどれかを一度でもプレイしたことがある人ならば安心感を持って楽しめる内容だと感じました。加えて、これまであまり語られてこなかった主人公兄弟(マリオとルイージ)の出自を掘り下げるような演出もあり、その点においても濃やかな配慮がなされているのには感心いたし...
スラムダンク

「THE FIRST SLAM DUNK」井上雄彦 評価:4点|令和に舞い降りたスポーツアニメーションの傑作、最新の3DCGで蘇った伝説的バスケットボール漫画【アニメ映画】

1990年代に「週刊少年ジャンプ」にて連載され、空前のバスケットボールブームを引き起こした大人気漫画「SLAM DUNK」。連載終了(1996年)から26年の時を経て映画化されることとなり、2022年の12月から上映されております。現在のところ商業的には非常に成功しておりまして、観客動員数も興行収入も大ヒットレベルに到達。公開されている映画の観客動員数ランキングでは毎週のように首位を獲得するなど、まさに破竹の勢いで観客を増やしている作品となっております。私もミーハー的な動機から映画館に足を運んでみたのですが、実際のところ、予想を遥かに上回る感動があり、名作だったな、というのが正直な評価です。「血と汗と涙のスポ根」物語を背景に、原作でも最も人気の高い湘南高校V.S.山王工業高校戦が描かれるという構成は長期連載作品である「SLAM DUNK」を一本の映画として纏めるのに相応しいばかりではなく、近年のフィクション作品に欠ける「情熱と友情」の大切さを赤裸々に押し出しながらも古臭さを感じさせません。むしろ、「SLAM DUNK」を未読の世代にとっては極めて清新かつ斬新な側面すらあり、こうした種類...
風子のいる店

「風子のいる店」岩明均 評価:2点|吃音の少女が働く喫茶店には珍客が多く訪れる【青春漫画】

「寄生獣」や「ヒストリエ」で有名な漫画家、岩明均さんが著した青春漫画です。岩明均さんの作品としては歴史漫画だった「雪の峠・剣の舞」に続いてのレビューとなりますが、やはり歴史漫画に比べると青春漫画はやや苦手としているのかなという印象を受けました。全4巻の中でこれといったエピソードやキャラクターを排出できず、小粒な作品として纏まってしまっております。吃音で悩む内気な女子高生が喫茶店でアルバイトを始める、という掴みそのものは悪くないのですが、吃音設定も喫茶店設定も活かしきれておらず、学校での事件に焦点を当てたエピソードもありきたりな話ばかりで、もっと構成や登場人物を練ってから連載を初めてもよかったのでは、と感じてしまう作品でした。あらすじ有沢ありさわ風子ふうこは吃音に悩んでいる女子高生。学校でも吃音を馬鹿にされ、逃げ込むようにして選んだアルバイト先は「ロドス」という喫茶店。しかし、アルバイトを始めたからといって吃音がすぐに治るわけもなく、鈍くさい性格と相まって「ロドス」でも失敗ばかり。そんな風子も、「ロドス」を訪れる奇妙な客たちが引き起こす騒動に巻き込まれながら少しずつ精神的に成長していく。...
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