伝奇

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すずめの戸締り

「すずめの戸締り」新海誠 評価:2点|冒険・社会性・家族愛。全要素が中途半端になってしまった新海監督の最新作【アニメ映画】

「君の名は。」の衝撃的な大ヒットで邦画界にセンセーションを起こすと、続く「天気の子」も成功させて国民的アニメ映画監督の地位を固めつつある新海誠さん。そんな新海監督の最新作であり、2022年11月11日から公開されているのが本作となります。本記事執筆時点で興行収入は既に90億円近くに達しているようで、2022年における日本での興行収入ベスト5に入ることを確実にしています。そのうえ、三作連続での100億円超えも視野に入るという人気ぶりなのですから、単なる話題作という以上に多くの人が楽しんで鑑賞しているのでしょう。そんな本作ですが、個人的にはやや凡庸というか、面白い作品になりきれていないように思われました。少女と青年の出会いから始まる日本縦断のロードムービー、自然災害や過疎を題材にしているという現代性、日本的な神事から着想を得た物語展開、そしてもちろん、美麗な映像と音楽の組み合わせ。「面白そう」な要素が揃い踏みしていることは確かなのですが、その全ての要素について掘り下げが中途半端に終わってしまった結果、何とも長所を見出しづらい映画となっております。あらすじ物語の起点は九州某所の田舎町。女子高...
蓬莱トリビュート

【中華ファンタジー】漫画 「蓬莱トリビュート」 鮫島円人 星2つ

1. 蓬莱トリビュート漫画中心の出版社、リイド社が運営するweb漫画サイト「トーチ」に連載されていた作品。現在も続編として「蓬莱 エクステンド」が連載されているようです。内容は中国の古典を漫画化したというもので、2~30ページかそれに満たないくらいの短編が10話収録されています。いにしえの時代の物語らしい、独特の展開と早すぎるくらいのテンポが特徴です。2. あらすじ・第3話 狐の掟墓守の男はある日、狐が犬の集団に襲われているのを発見し、狐を救助する。その晩、男の家を訪れてきたのは美しい娘。「今日はどうも助けて頂いて」。男はこの娘と恋仲になるのだが......。・第5話 異類の娘【虎】官僚としての赴任先に向かう申屠澄は道中、猛吹雪に襲われる。飛び込んだ人家で申を迎えたのは半獣半人の夫婦とその美しい娘。一晩で娘と親交を深めた申は娘を連れて行ってもよいかと夫婦に頼むのだが......。3. 感想ハッピーエンドから後味の悪い話、切ない話までバリエーションが豊富で、中国古典由来ということもあり獣人が多く出てくるのが面白いですね。現代的な画風で可愛く描かれているのも親しみが湧くポイントです。テンポ...
人魚シリーズ

「人魚シリーズ」 高橋留美子 評価:2点|大人気漫画家が描くグロテスクな伝奇調物語【短編漫画】

「うる星やつら」や「らんま1/2」、「犬夜叉」といった代表作を持つ人気漫画家、高橋留美子さん。本ブログでも「めぞん一刻」を評価5点でレビューしておりますが、漫画家としての極めて高い実力は改めて言及するまでもないことでしょう。そんな高橋留美子さんの作品の中でも、かなりマイナーな位置づけにあるのがこの「人魚シリーズ」。「週刊少年サンデー」に不定期連載されているのですが、第1話である「人魚は笑わない」の掲載が1984年、最新話である「最後の顔」の掲載が1994年となっていて、ここしばらく新しい話が出てきていません。加えて、ややグロテスクな表現が多く、後ろ暗い作風が高橋留美子さんの普段の漫画作品とは一線を画しています。「大衆受けを狙わず、書きたい話を書きたいときに書いた」結果の産物という印象です。そして、そういった作品にこそ興味を抱くのが本ブログなのですが、読んでみた結果としてはイマイチな作品という感想。単に「暗くてグロテスク」を超えるような、「物語」としての魅力を見出すことはできませんでした。あらすじ1980年代の日本、浮浪者のような姿をした青年が一人、人魚を求め無人島とされている島を訪れる...
赤い雪 勝又進作品集

「赤い雪 勝又進作品集」 勝又進 評価1点|旧い東北の風俗を劇画風に描いただけの作品【青年漫画】

個性的な漫画家が集ったことで一部界隈では有名な週刊漫画誌「ガロ」。その執筆陣の一人であった、勝又進さんの作品集。第35回(2006年度)日本漫画家協会賞大賞を受賞した「赤い雪」が表題作です。絵柄はいわゆる「劇画」で、かつて存在した東北地方の旧い風俗がテーマとなっております。「遠野物語」に近いコンセプトと言えるかもしれません。もちろん、そういった旧い文化の描き方は素晴らしいのでしょうが、そういった旧い文化における人々の暮らしを描いた以上の価値があったかといえば、そうではないという結論です。テンプレートのような「起承転結」や「劇的なクライマックス」を支持しているわけではありませんが、やはり人々の心を動かすための意図を持った物語構成がなければフィクション作品として良い評価を与えることは難しいでしょう。あらすじ・「桑いちご」ドジョウ売りの男の子はある日、桑の木に登って桑いちごを盗み食いしている女の子を見つける。女の子は名前をトミ子といい、千寿館という宿の女中なのだが、妾の子であるため差別されていた。お互いに悪態をつき、喧嘩しながらも心のどこかでつながりを感じている二人。しかし、ある事をきっかけ...
天人唐草

【幻想怪奇譚】漫画「天人唐草」山岸凉子 評価:1点【漫画短編集】

「日出処の天子」等の作品がある山岸凉子さんの自選作品集。表題作にもなっている「天人唐草」は彼女の代表作に数えられることが多いようです。ただ、少女漫画界の古豪的な地位にある著者の作品ということでしたが、私には合いませんでした。読解力が足りないからか、起伏のない凡庸なストーリーラインに投げっぱなしのオチが付いているだけのように感じてしまいます。あらすじ幼いころから厳格で旧い価値観の父に育てられてきた岡村響子。その教育のせいもあって自分を過度に抑制するようになってしまい、学生時代、そして社会人になっても男性とうまくコミュニケーションをとることができない。そしてついに、職場で憧れていた男性が自分とは真逆の気質をもつ女性と結婚してしまう。そんな響子のもとに、父親が倒れたとの一報が飛び込んでくる。慌てて父のもとへ向かう響子。しかし、呼ばれた先で響子が目にしたのは、あの表面上は厳格だった父の意外な素顔だった......。(表題作「天人唐草」)その他4つの短編を収録。感想全体的に「ベタ」過ぎるか「あり得なさ」過ぎる話しかないんですよね。表題作の「天人唐草」は厳格過ぎる父に育てられた女性の話ですが、父の...
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