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「ブルシット・ジョブ」デヴィッド・クレーバー 評価:3点|無意味な仕事ばかりが増大していく背景を社会学的に分析 【社会学】

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ブルシット・ジョブ
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その点とは、労働者自身ですらその仕事を無意味なものだと思っているということ。

おそらく、非常に充実した仕事を日々こなしているという自覚がある人々の目からすれば、自他共に認めるブルシット・ジョブを毎日こなしているなんて、それこそ奇妙な光景に映るでしょう。

労働者自身がそれを「クソどうでもいい仕事」だと感じている。

このどこか薄ら寒いまでの奇怪さこそがブルシット・ジョブの特徴であり、また、本書におけるブルシット・ジョブの定義になります。

実際にブルシット・ジョブを日々こなしていたり、過去に経験したりしていた人からすれば、素晴らしく納得できる定義だと思えるのではないでしょうか。

個人的にも、こういった観点から物事を観察していくという論調は非常に好みです。

第2章では、ブルシット・ジョブが5種類に分類され、それぞれの特徴が語られていきます。

その分類名は以下の通り。

  1. Flunkies[取り巻き]
  2. Goons[脅し屋]
  3. Duct Tapers[尻ぬぐい]
  4. Box Tickers[書類穴埋め人]
  5. Taskmasters[タスクマスター]

まず、1番目の「取り巻き」ですが、これは「偉い人」を偉く見せるため、権威づけのためだけに存在するポジションのことを示しています。

その実例として、本書ではある出版社で働く受付嬢の話が挙げられています。

彼女の主な仕事は一日に一回程度しか架かってこない電話に応対することであり、その他にやることといえば、受付のキャンディ皿にキャンディを補充することといった、とんでもなく矮小な業務ばかり。

それでも「この出版社はまともで立派な会社である」ということを示すためだけに、その受付嬢の仕事は存在するのです。

実際には何もしていないのですが、会社に権威付け不足による損失を回避させるため、彼女は毎日暇をしながら受付に立っています。

2番目の「脅し屋」ですが、こちらは無駄なだけどころか、社会に対して実害がある仕事になっております。

「脅し屋」の仕事とは、潜在顧客を「脅迫」することで恐怖心を与え、それにより顕在顧客にするという業務。

実例として、広告のための画像・動画修正業務が本書では挙げられています。

つまり、シャンプーや歯磨き粉、洗剤などの効き目をよく見せるために俳優(主に女優)の容姿を「修正」する仕事というわけです。

これくらい綺麗じゃなくちゃ“ダメ”なんだと視聴者の恐怖を煽り、商品を買わせようとします。

現実ではありえないくらいの“綺麗”を写真加工技術でつくりだし、生身の人間では到達不可能なレベルに修正された美貌と視聴者自身の生身の容姿を強制的に比較させることで購買意欲を煽り立てるのです。

本来、一切不安に思わなくてよいはずのことに対して、幻想の“普通”をつくりだすことにより「あなたは“普通”より劣っている」と不安を煽り商品を買わせるという、半ば詐欺的なセールスマーケティングが跋扈する世の中では、そういった「脅迫」マーケティングのために自身が磨いてきた画像・動画編集技術を使わざるを得ない技術者が存在しており、彼らはまさに悪辣な「脅し屋」の一味として働いているわけです。

3番目の「尻ぬぐい」は、何らかの理由によりいつまでも改善されない組織の欠陥に対する後始末仕事のことです。

こちらもいくつか実例が挙げられておりますが、グレーバー教授自身が顧客として直面することになった事件が最も面白かったのでここに紹介いたしましょう。

大学にあてがわれた部屋の棚が壊れたため大工を呼んだところ、大工は一度だけ様子見に来たものの、それ以来全く姿を表さない。

業を煮やしたグレーバー教授が大学の施設部に連絡すると、部屋にやってきたのは大工ではなく施設部の男性職員。

大工が来ないことを神妙な面持ちで謝罪する彼こそ「大工が来ないことを謝罪する」というブルシット・ジョブをこなす業務をその役割としている職員なのです。

設備が壊れたときに素早く大工が来て修繕をする、という組織としてのあるべき姿が何らかの事情で達成されないため、その「尻ぬぐい」要員として彼は雇われているのです。

イントラシステムの欠陥に対するクレーム受付係であったり、無能なお飾りなのに色々やりたがる上司の相手をする係だったりと、皆様の職場にもきっと「尻ぬぐい」のブルシット・ジョバーがいるはずです。

4番目の「書類穴埋め人」はその名前からして仕事内容も明らかでしょう。

意味のない書類をつくりあげる仕事です。

誰の目にも触れられず何にも役立てられることのないアンケートを集めたり、市民の誰も読まないような市民向け広報を書いたり、マーケティングの一助にならない形ばかりの市場調査をでっちあげて顧客に提供したり、といった業務が実例です。

私の個人的な体験ではありますが、社内会議用プレゼン資料の見栄えを良くするために、見かけだけで中身のない無駄なグラフが必要で、そのグラフ作成のためのデータをどこぞの調査会社に請求するといったような、ブルシット・ジョブの連鎖が思い出されます。

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