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「GUNSLINGER GIRL」相田裕 評価:4点|テロリストとの闘いに身を投じるのは「義体」を与えられた少女たち【社会派サスペンス漫画】

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GUNSLINGER GIRL
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2002年から2012年まで「月刊コミック電撃大王」に連載されていた作品。

「電撃大王」といえば所謂オタク向けの「萌え」漫画を中心とした雑誌ですが、その中にあって異彩を放っていたのがこの作品。

現代イタリアが抱える「南北問題」という政治問題を嚆矢に、北部イタリアの分離独立派テロ組織と政府が創設した対テロ組織である「社会福祉公社」との戦いを描いた硬派な作品となっております。

しかし、本作の特色はそういった欧州の政治問題を背景にしたサスペンスという側面ばかりではありません。

「社会福祉公社」に所属するのは様々な機関から集められた訳ありの元軍人や元警察官たち。

そして、そういった「大人」たちとペアを組むのは、瀕死の状態だったところに身体改造と精神洗脳を施され、テロリストと戦うために蘇った「少女」たちである、という点が他にはないオリジナリティを醸し出しています。

社会問題を巡って政治家や軍人、メディア、市井の人々が織りなす政治活劇というマクロな枠組みと、テロとの戦いの中で明かされていく「社会福祉公社」組織員が辿った苦節の人生、「義体」となった少女たちの愛憎劇というミクロな枠組みの双方に魅力のある、他に類を見ない高度な漫画作品。

出会ったとき、そして読み切ったあとの衝撃がいつまでも忘れられない、間違いなく名作だと言い切れる逸品です。

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あらすじ

舞台は超近未来のイタリア。

貧しい南部と豊かな北部という、イタリアが伝統的に抱える格差問題を巡る政争は熾烈を極め、北部独立派によるテロが横行する事態となっている。

豊かな北部から搾取された税金が、怠惰な南部人を食わせるための公共事業や補助金に投下されている。

そんな主張には北部人の多くが同調しており、テロリスト側の勢いは止まるところを知らない。

そんな折、テロとの戦いに勝利して統一を維持したい中道左派政権は「社会福祉公社」という機関を創立する。

表向きは身体に障がいを抱える子供を支援するための福祉組織だが、実態は、身寄りがなく命が助かる見込みもない子供の身体に特別な手術と洗脳を施し、テロと闘う「義体」として復活させ運用する秘密公安組織。

義体となった子供たちは担当官と呼ばれる公社の戦闘員とペアを組み、今日もテロ撲滅のために戦いを続ける。

義体と担当官を待ち受ける運命や如何に......。

感想

圧倒的感動、なんて言葉を安易には使いたくありませんが、本作にはうってつけの言葉だと思います。

何よりも本作を感動作たらしめているのは「義体」に関する設定でしょう。

「義体」に改造された少女たちは、絵に描いたようなサイボーグになってしまうわけではありません。

生前の造形(少女としての外見)はそのまま温存され、感情も条件付きで残されています。

とはいえ、筋肉や骨格は最新の医療技術によって驚異的に強化されていて、感情についても、社会福祉公社の命令に逆らわないこと、担当官(ペアを組む社会福祉公社の構成員)に好意を持ち、指示に従うこと、というプログラムが課された洗脳を受けているのです。

それにより、彼女たちは異質な身体能力と銃やナイフについての技術を持っており、加えて、担当官に対して愛情と忠誠心を折衷したような感情を抱きます。

改造されて「義体」となった少女と一緒に作戦を遂行することについて、罪悪感を抱く担当官もいれば、自分が果たすべき任務あるいは復讐のためだと割り切る担当官もいる。

そして、少女たちのほうでも、疑似恋情が強いばかりに担当官からの愛情を求め過ぎてしまう少女もいれば、そういった洗脳による恋情について割り切った態度を取れる少女もおり、なかには、そういった洗脳に逆らおうとする姿を見せることで逆に本音で語り合えるパートナーになろうとする少女もいます。

様々な「訳アリ」経歴を持って社会福祉公社に流れ着いてきた担当官たちにも、義体となって戦う少女たちにもそれぞれの個性があり、度重なる戦闘とひとときの休息という日々の中でそういった個性がぶつかり合い、葛藤する。

その生々しい心理描写には胸がつまりそうになり、登場人物たちの心境と関係性が激しく変化していく展開は先が気になってページをめくる手が止まりませんでした。

また、物語を牽引する「テロとの戦い」の描写も非常にリアリティがあり、社会問題を深堀りした漫画としても、ガンアクション漫画としても高いレベルを誇っております。

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