第3位 「暗いところで待ち合わせ」乙一
【視覚障がい者の女性と殺人容疑者の切ない友情】
・あらすじ
視力を失い、保険金で日々を静かに暮らすミチル。
そんなミチルは、最近、自宅で奇妙な気配を感じていた。
擦れるような小さな音が頻繁に聞こえ、誰もいないはずの空間から空気の揺らぎを感じる。
その気配の正体は、殺人事件の犯人として追われているアキヒロ。
ミチルの運命やいかに。
・短評
サスペンス調の不穏な空気で始まる物語なのですが、非常に心温まるエンディングを迎える作品となっております。
それぞれの抱える事情ゆえに、双方とも人見知りがちだったミチルとアキヒロが奇妙な同居生活の中で少しずつ距離を詰めていく様子が優しく丹念に描かれており、二人の関係が上手く行くのか否か、その緊張感と期待感を絶妙に綱引きさせながら物語は展開していきます。
あまり見かけない突飛な設定を起点としながらも、そこから友情と成長の王道物語に引き寄せていく著者の手腕には驚くばかりです。
「視覚障がい者の女性と殺人容疑者の奇妙な同居生活」という設定に引っかかるものがあれば是非、読んで欲しい一作。
小説に親しんできた人ほど、本作の珍しさと素晴らしさを理解できるはずです。
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