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「ポケットモンスター ヴァイオレット」評価:2点|オープンワールドを採用した世界的大人気シリーズの最新作【テレビゲーム】

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ポケットモンスター バイオレット
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さらには、こちらはやや共感を得づらい点かもしれませんが、スター団のボスは最後のポケモンとして必ずスターモビールという改造戦闘車両を使用してきます(動力源がブロロロームというポケモンなので、「ポケモン」であるという建前で使ってきます)。

このスターモービルなのですが、戦闘エフェクトがどう考えてもこちらのポケモンを轢き殺しにきているんですよね。

なんというか、それが「あり」ならば、こちらもトラックで基地に突っ込んだり、銃器をポケモンに持たせて「バトル」できるはず、と思ってしまいます。

ポケモン同士が徒手空拳で戦うという形式のポケモンバトルに至上の価値が認められていて、悪の組織のトップですらポケモンバトルで雌雄を決しようとしてくる世界観の中で、改造戦闘車を相手に戦わなければならないという場面が訪れるだけでも興醒めでした。

もちろん、タイプ相性や能力値等の特長を考えながらポケモンを出し入れして技を選ぶ、というポケモンの原理的な楽しみは健在であり、ポケモンバトルを全く楽しめないかといえばそれは全然違うのですが、これが第九世代なのか、と思えるほどに進化の方向が間違っていると感じる要素ばかりでした。

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ストーリー面での評価

本作はポケモン史上初めての学園ものであり、物語開始時に主人公がグレープアカデミーという学校に入学するところから始まります。

ところが、何らかのクラスに転入する描写があるにはあるのですが、その後、授業を受けたり定番の学校行事に取り組むことがゲームのメイン動作になるかといえばそうではなく、すぐに「宝探し」という独自の学校行事が始まり、自分自身にとっての「お宝」を探すという名目で本作の舞台であるパルテア地方を巡る旅に出ることになります。

一応、学校ではポケモンについての授業を受けることはできるのですが、「宝探し」が始まったあと、一度も学校に戻ることなくチャンピオンになってしまうこともできますし、授業を受けたところでストーリーに影響があるということもありません。

つまり、実際問題として学校など必要のない、いつも通りの「突然旅に出て放浪する」ポケモンです。

そんな旅の中で主人公が行うことは主に三つ。

一つ目はジムリーダーや四天王を倒してポケモンリーグのチャンピオンになること。

二つ目は各地のヌシポケモンを倒して特別なスパイスを入手し、ペパーという登場人物が持つマフィティフというポケモンの体調不良を回復すること。

三つ目は不登校児たちによって形成されたスター団の各基地を襲撃し、スター団を解散に追い込むこと。

チャンピオンを目指して戦うという路線は従来作を踏襲しており、ここにはあまり述べることがありません。

強いて言うならば、今回のジムリーダーたちは全員兼業ジムリーダーであり、それぞれが従事している別の職業(パティシエ、漁師、配信者、DJ、コスメ会社社長......)が強調されていたのですが、もうちょっと「ポケモンバトルが強い」という感じを出さないと強敵感に不足があるかなと思いました。

四天王を含め、全体的に主人公に対して親しく接しすぎであり、厳しい道のりを歩んでいる感がない点に冒険への没入が妨げられます(このポップな感じが現代のゲームなのだと言われればそうなのでしょうが)。

これは個人的な好みなのですが、やはりジムリーダーや四天王は謎めいた強者つわものである方がワクワクしますね。

また、従来作同様ライバルポジションのキャラクターが登場するのですが、単なる明るい戦闘狂であり、彼女がいることで物語に深みが出るかというと全くそうでないところが痛いですね。

二つ目のヌシポケモンとの戦いですが、こちらは典型的なお涙頂戴ストーリーとなっており、いい話ではあるのですが、大きな感動があるというほどでもありませんでした。

これも好みの問題かもしれませんが、たいしたストーリーを付けられないならば、いちいち奇妙な登場人物を出してヌシポケモンとの戦闘のたびにムービーイベントを用意したりせず、洞窟の奥や森の奥、あるいは虹の向こうにヌシポケモンが淡々と佇んでいて、無音のうちに(あるいはヌシポケモンの咆哮のみで)戦闘が始まってしまう方が緊張感があったと思います。

もしくは、悪の組織が悪い目的のために「ヌシポケモン狩り」を行おうとしていて、主人公は先回りしてヌシポケモンを捕獲しに行く、といった物語の方が、勧善懲悪の冒険譚になったのかなと思います。

そうする方が男の子好みの思い出に残る冒険になると思うのですが、まぁ、旧い時代の感覚かもしれませんね。

ペパーは悪の組織の尖兵としていつも立ちはだかるけれど、本当はイイやつで、しかしながら、マフィティフの治療のために渋々悪の組織に従っている、なんて設定でも良いかもしれません(クライマックスでは味方側に寝返り、悪の組織を倒すために共闘する)。

三つ目のスター団関係のストーリーですが、こちらは重い話のわりに掘り下げ不足を感じました。

物語開始時点の一年以上前、いじめられっ子の不登校集団が自助組織スター団を結成し、いじめっ子集団へのささやかな報復に成功したものの、その報復が却ってスター団を不良組織とする風潮をつくってしまい、いまでも不登校集団は不登校のまま各地に基地をつくって独自活動をしているという設定。

主人公は「カシオペア」という謎の人物からの指示を受け、スター団の壊滅を狙って各地の基地に乗り込んでいくのだが......、という物語になっています。

ロケット団が鞭を持ってポケモンをしごいていた頃に比べればずいぶんとマイルドな悪役ですが(赤・緑ではスロット場を資金源にしていたり、大企業に浸透して悪事を働かせようとしていたりと、なかかなえげつないですよね)、不登校という繊細な事象を扱っているだけあって話は重く、それなりに深刻さのある物語ではあります。

しかしながら、結局のところ上述した以上に深い事情が語られることはなく、漠然とした「いじめられていた」という過去と、スター作戦(いじめっ子に報復する作戦)のせいで学校に戻りづらいという物語開始時点で明らかな背景が繰り返されるだけ。

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