漫画 「スペクトラルウィザード 最強の魔法をめぐる冒険」 模造クリスタル 星3つ

スペクトラルウィザード 最強の魔法をめぐる冒険
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1. スペクトラルウィザード 最強の魔法をめぐる冒険

「ミッションちゃんの冒険」というweb漫画で有名になり、現在は「金魚王国の崩壊」などのweb漫画を連載するほか、同人誌即売会コミティア等で作品を発表しているサークル、模造クリスタルの商業化作品。前作「スペクトラルウィザード」の続編となっております。

「スペクトラルウィザード」の感想はこちら。

漫画 「スペクトラルウィザード」 模造クリスタル 星3つ
1. スペクトラルウィザード「ミッションちゃんの冒険」というweb漫画で有名になり、現在は「金魚王国の崩壊」などのweb漫画を連載するサークル、模造クリスタルの商業化作品。「金魚王国の崩壊」のファンなので手に取ってみたのですが、そこそこ良かったというのが総評です。魔術師ギルド解散後というファンタジー設定で世界観全体を包みながら、「自分らしさ」「居場所」「関係性」といった現代的なテーマを暗に示した物語が展開されるのが面白い点です。模造クリスタルの特徴である独特のテンポや不思議な世界観を楽しめるのであれば買ってみてもよいのではないでしょうか。2. あらすじ危険な魔術書の研究により魔術師ギルドがテロ組織として認定され、科学技術集団である騎士団によって多くの魔術師が逮捕・処刑された。魔術師ギルドは解散を余儀なくされ、離散した魔術師も危険人物として追われている。そんな中、魔術師の生き残りであるスペクトラルウィザードは孤独な日々を過ごしていた。身体を「ゴースト化」する魔術により騎士団からの逃亡はたやすいものの、指名手配されている手前、孤独を...

中編×3と掌編×2という構成だった前作とはうって変わって、今回は一本の長編+エピローグ的な掌編という構成。副題の通り、「最強の魔法」を巡る騎士団と魔術師たちの争いが描かれます。陰謀渦巻き、敵味方が入り乱れ、裏切りに次ぐ裏切りが起こる展開でハラハラドキドキさせながらも、その裏に流れる他者との関係性についての示唆が物語に深みを与えています。

2. あらすじ

危険な魔術書の研究により魔術師ギルドがテロ組織として認定され、科学技術集団である騎士団によって多くの魔術師が逮捕・処刑された。魔術師ギルドは解散を余儀なくされ、離散した魔術師も危険人物として追われている。

そんな中、魔術師のスペクトラルウィザードは騎士団とも関係を持ちながら日々を過ごしていた。一時は自暴自棄になって世界を破壊する魔導書のデータを奪おうとしたこともあったが、その後は改心し、逆に魔導書のデータを守ったり、発動してしまった世界を破壊する魔法を食い止めるなどの活躍を見せている。

世界滅亡の危機は過ぎ去り、再び平穏な生活へと戻ったスペクトラルウィザードだったが、またも事件に巻き込まれてしまう。魔術師でありながら騎士団の魔法顧問を務めていたクリスタルウィザードが反乱を起こしたので、助けて欲しいと騎士団から頼まれたのだった。

クリスタルウィザードが拠点とする南極に向かう船の中で、スペクトラルウィザードは「ぶどう畑」での敗戦を思い出す。かつて、スペクトラルウィザードはクリスタルウィザードと戦い、敗れていたのだ。

騎士団の「味方」として南極を訪れたスペクトラルウィザードだったが、クリスタルウィザードは彼女を暖かく迎える。反乱を起こした事情を問いただすスペクトラルウィザードに対して、クリスタルウィザードは答えをはぐらかすが、クリスタルウィザードの協力者であるカオスウィザードがスペクトラルウィザードに衝撃の事実を告げるのだった......。

3. 感想

本作の鍵となっているのは副題にもなっている「最強の魔法」です。物語のプロローグ的な場面で、スペクトラルウィザードは騎士団の友人であるミサキちゃんと食事をするのですが、そこで「最強の魔法」にまつわる話がスペクトラルウィザードの口から語られます。

魔術師ギルドが存在していた時代、魔術師たちは競い合って「最強の魔法」の研究をするのですが、地球を丸ごと破壊できるような破壊魔法を上回る「最強の魔法」候補として、クリスタルウィザードは他者を支配する魔法を研究しておりました。

結局、他者を支配する魔法は完成しないのですが、それでもクリスタルウィザードの使う魔法はそれに近い効果を持ったものになっています。その魔法とは、触れた獲物に呪いをかけていつでも氷漬けにできるという魔法。いつでも氷漬けにできるという状況を作り出すことでクリスタルウィザードは獲物を脅迫し、意のままに動かします。

当たればその場で殺せる魔法と、当たれば「いつでも」殺せる魔法の違い。この違いがクリスタルウィザードを強力な魔術師にしているとスペクトラルウィザードは語ります。

この流れからすれば、当然、本作でスポットライトが当たる「最強の魔法」は他社の心を支配する魔法なのですが、クリスタルウィザードは自らの魔法をたった一度しか使いませんし、しかも、それは序盤に使用されて終盤までどんな決定的な場面でも使用されることはありません。

それでも、本作の鍵は「最強の魔法」としての他者支配です。よく考えてみれば、現実世界でもわたしたちは他者の心を支配したり、逆に心を支配されたりします。そう、ただの人間だって言葉や態度で他者を操ることができます。クリスタルウィザードが使うのはまさに私たちが現実で使ったり使われたりするこの「魔法」なのです。

南極にやってきたスペクトラルウィザードを、クリスタルウィザードは温かく迎えます。冷酷非道であったかつての自分は変わり、いまは思いやりと優しさこそが世界を動かしていると信じていると語ることでスペクトラルウィザードの疑念を払拭しようとするのです。みなしごを引き取って育てているという状況証拠や、なにより魔術師ギルド解散後の自分自身の変化を知っているスペクトラルウィザードはその言葉に惹きこまれていきます。

そして、クリスタルウィザードが反乱を起こした真の理由が仲間であるカオスウィザードの口からに告げられます。実は、騎士団が危険な魔導書を集めて魔法を発動し、世界を滅ぼそうとしているというのです。かつては魔術師ギルドをテロ組織認定して滅ぼした騎士団自体が今度は取り返しのつかないテロを画策している。いま世界を救えるのは私たちしかいないと。

その言葉に押され、スペクトラルウィザードはクリスタルウィザードの一派に肩入れしていくことになります。ミイラ取りがミイラになるわけですね。途中、かつて魔術師ギルドでの友人だったネクロキネティックウィザードも仲間に加わり、スペクトラルウィザードは魔術師たちの結集に望郷の念に近いような希望を感じ始めます。

しかしながら、スペクトラルウィザードが騎士団の施設を襲い始めるのを見て「裏切られた」と感じるのは騎士団の側です。特に、魔術師ギルドが解散してからの孤独な生活を送っていたスペクトラルウィザードの唯一といって言い友人だったミサキちゃんはスペクトラルウィザードの裏切りに衝撃を受けます。そして、スペクトラルウィザードもまた「合わせる顔がなかったんだ」とミサキちゃんに対しては罪悪感を覚えるのです。

ただ、そもそも正義感の強いこのミサキちゃんは自分の中での葛藤を振り切ってスペクトラルウィザードとの対決を決意します。対照的に、動揺を隠せないのがスペクトラルウィザード。この差が最終決戦の結果に繋がっていきます(騎士団の一般団員は騎士団の前団長が魔法による世界破壊を目論んでいることを知らず、魔術師たちの反乱を抑えることこそが社会正義のために課せられた自分たちの使命だと考えています)。

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