【長編漫画】おすすめ長編漫画ランキングベスト10【オールタイムベスト】
漫画
漫画 「聲の形」 大今良時 星3つ
1. 聲の形2013年から2014年にかけて週刊少年マガジンで連載されていた作品。小学校における聴覚障がい者への苛烈ないじめ描写から一時は読み切りすら掲載見送りとなりかけたものの、日本ろうあ協会の許可を経て読み切り掲載に漕ぎつけ、それが大反響を生んで連載へと辿り着いた作品となっています。さらに、2016年に京都アニメーションによって製作されたアニメ映画が大ヒットし、本作のさらなる躍進に結びつきます。全七巻の社会派漫画としては異例の総発行部数300万部超となり、漫画史にその名前を残す作品となりました。アニメ映画版は本ブログでレビュー済みです。個人的にも、いじめた側といじめられた側の再生物語として良作だと感じました。少年漫画の王道展開を敢えて避け、世の中の都合よくいかない側面、人間の嫌な部分を描き出そうとしている側面も高評価です。2. あらすじ主人公の石田将也(いしだ しょうや)は小学六年生。親友の島田一旗(しまだ かずき)や広瀬啓祐(ひろせ けいすけ)と一緒に悪ふざけをして過ごすことで活発な小学校生活を送っていた。しかし、小学六年生というのはそんな「子供っぽいこと」から離れていく時期でも...
「スペクトラルウィザード 最強の魔法をめぐる冒険」模造クリスタル 評価:3点|他者を支配する魔法の正体【文学的ファンタジー漫画】
「ミッションちゃんの冒険」というweb漫画で有名になり、現在は「金魚王国の崩壊」などのweb漫画を連載する漫画家、模造クリスタル氏の商業出版作品。前作「スペクトラルウィザード」の続編となっております。「スペクトラルウィザード」の感想はこちら。中編×3と掌編×2という構成だった前作とはうって変わって、今回は一本の長編+エピローグ的な掌編という構成。副題の通り「最強の魔法」を巡る騎士団と魔術師たちの争いが描かれます。陰謀渦巻き、敵味方が入り乱れ、裏切りに次ぐ裏切りが起こる展開でハラハラドキドキさせる展開はエンタメ作品として見事。加えて、物語の裏側に流れる他者との関係性についての示唆が作品に深みを与えています。あらすじ危険な魔術書の研究により魔術師ギルドがテロ組織として認定され、騎士団によって多くの魔術師が逮捕・処刑されてから幾年。魔術師ギルドは解散を余儀なくされ、離散した魔術師たちも危険人物として追われている。そんな中、魔術師のスペクトラルウィザードは騎士団とも関係を持ちながら日々を過ごしていた。一時は自暴自棄になって世界を破壊する魔導書のデータを奪おうとしたこともあったが、その後は改心し...
【なんだこの人生 日曜しか生きた心地がしない社畜OLの日常】労働に打ちひしがれ虚無な日々に絶望する新米社会人の苦悩 評価:2点【橋本ゆの】
1. なんだこの人生奇妙なタイトルの作品ですが、調べてみるとTwitter発のコミックエッセイということでそれも納得できます。橋本ゆのさん(@riko3_)という現時点で4.5万人のフォロワーを抱える人気ツイッタラー(インフルエンサー?)さんが出版する初の単行本とのこと。ポップな雰囲気の表紙やタイトルに違わず気軽に読める内容ですが、反面、現代社会においてサラリーパーソンとして働くことの意義について考えさせられる作品でもありました。社会から受ける暗黙の要請に応じて学校に通い、これまた暗黙の要請に応じて会社に入って働いているのに、まさに「なんだこの人生」と思ってしまうような生活を送っている方々には刺さる作品だと思います。2. あらすじ 藤井香菜子(ふじい かなこ)は都心で働くOLで、社会人二年目。しかしながら、キラキラした生活とは縁遠い日々を送っている。「毎日満員電車に乗りつらい思いをして働き、土曜は一日中寝ていて活動しているのは日曜だけ……という1週間を過ごす。こんな生活が1年後も5年後も10年後もずっとずっと続くと考えると本当に心が折れそうになる。社会人生活はこんなはずではなかった」な...
【失敗したコミカライズ】漫画「電車男」原秀則 評価:1点【青年漫画】
あらすじ主人公は秋葉系オタクの「電車男」。ある日、秋葉原から帰る電車で「電車男」は暴漢に出くわす。酔っぱらって女性に絡む暴漢に対して誰もが見てみぬふりをする中、「電車男」は勇気を振り絞って声を挙げ、その女性や乗客たちが助かるきっかけをつくったのだった。後日、そんな「電車男」の自宅にHERMESのティーカップが届けられる。送り主はあの車両に乗っていた美貌の若い女性。伝票には電話番号が記載されており、「電車男」は女性の意図について思い悩む。パソコンの電源を点け、事の顛末を「2ちゃんねる」に書き込んだ「電車男」。彼が立てたスレッドへ馳せ参じたのは、お互いに顔も声も本名も知らないインターネット掲示板の住民たち。ティーカップのブランドにちなんで「エルメス」と掲示板内で呼ばれるようになったその女性へのアプローチを住民たちは「電車男」に勧めるのだが......。感想インターネット掲示板「2ちゃんねる」での書き込みをもとにした恋愛物語という触れ込みで話題となった作品。小説、漫画、映画、そしてテレビドラマと様々なメディアミックスがなされています。特に伊藤淳史と伊東美咲主演のテレビドラマ版は大ヒットし、視...
【中華ファンタジー】漫画 「蓬莱トリビュート」 鮫島円人 星2つ
1. 蓬莱トリビュート漫画中心の出版社、リイド社が運営するweb漫画サイト「トーチ」に連載されていた作品。現在も続編として「蓬莱 エクステンド」が連載されているようです。内容は中国の古典を漫画化したというもので、2~30ページかそれに満たないくらいの短編が10話収録されています。いにしえの時代の物語らしい、独特の展開と早すぎるくらいのテンポが特徴です。2. あらすじ・第3話 狐の掟墓守の男はある日、狐が犬の集団に襲われているのを発見し、狐を救助する。その晩、男の家を訪れてきたのは美しい娘。「今日はどうも助けて頂いて」。男はこの娘と恋仲になるのだが......。・第5話 異類の娘【虎】官僚としての赴任先に向かう申屠澄は道中、猛吹雪に襲われる。飛び込んだ人家で申を迎えたのは半獣半人の夫婦とその美しい娘。一晩で娘と親交を深めた申は娘を連れて行ってもよいかと夫婦に頼むのだが......。3. 感想ハッピーエンドから後味の悪い話、切ない話までバリエーションが豊富で、中国古典由来ということもあり獣人が多く出てくるのが面白いですね。現代的な画風で可愛く描かれているのも親しみが湧くポイントです。テンポ...
【幼馴染が気になる】漫画「ご近所物語」矢沢あい 評価:2点【少女漫画】
「NANA」「天使なんかじゃない」「Paradise Kiss」など多くの代表作を持つ少女漫画家、矢沢あいさんの作品。1990年代の中盤に「りぼん」で連載され、同時期にアニメが放映されていたことから、若手社会人世代にとって懐かしい作品だといえるのではないでしょうか。「天使なんかじゃない」からゲスト出演しているキャラクターがいたり、「Paradise Kiss」が同舞台での数年後の話になっているなど、他の矢沢あい作品とのリンクが楽しめるのも特徴です。そんな本作ですが、総合的な評価としては凡作だと感じました。少女漫画の肝である恋愛面、そして、デザイン系の高校を舞台にしているというところから発される夢を追う若者という面。その両面においてやや盛り上がりに欠けてしまった印象です。あらすじ幸田実果子(こうだ みかこ)は矢沢藝術学院に通う高校一年生。夢はファッションデザイナーとして自分のブランドを立ち上げることで、服のデザインについてはその才能と熱意が学院内でも認められている。そんな実果子には同学年の幼馴染、山口ツトム(やまぐち つとむ)がいる。同じアパートの別室に住み、幼い頃からつるんできた腐れ縁...
【数学ガール】数学要素も恋愛要素も中途半端な失敗作 評価:1点【原作:結城浩 作画:日坂水柯】
数学をテーマにした小説「数学ガール」の漫画版。原作者はプログラミングの実用書で有名な結城浩さん、作画は後に「白衣のカノジョ」を手がけることになる日坂水柯さんとなっております。原作の購入も検討したのですが、「数学の面白さを伝える」がメインで文芸的な特徴が薄いのであれば漫画版でも同じだろうと考え、漫画版を購入いたしました。しかし、これが大失敗。(もしかすると原作もこうなのかもしれませんが)数学については理数系に詳しくない人間を楽しませようという意図が一切ないような説明しかされないうえ、恋愛を軸とした物語にも数学が深く関わるわけではなく、かといってラブストーリーは非常に陳腐。一般向け数学本としても漫画としても平凡の水準にさえ達していない作品でした。あらすじ高校生の「僕」は数学好きで、中学時代は放課後にひとりで数式を展開するほどだった。そんな「僕」にも、高校では数学仲間ができた。同学年のミルカさんと後輩のテトラちゃん。ミルカさんは「僕」よりも数学に長けており、いつも「僕」に問題を出す側。逆に、テトラちゃんは「僕」に数学を教わっている。「僕」はミルカさんと、あるいはテトラちゃんと、今日も放課後の...
漫画 「ピンポン」 松本大洋 星2つ
1. ピンポン1996年から1997年までビッグコミックスピリッツで連載された卓球漫画です。長年にわたり根強い人気を誇る作品で、メディアミックスでは2002年に実写映画化、2014年にアニメ化、書籍としても2002年に新装版が発売、2012年に文庫版が発売、そして2014年にアニメ化記念の大判が発売されるなど、近年においてもその勢いは衰えておりません。著者の松本大洋さんも漫画好きのあいだでは知られた存在で、本作のほかに「鉄コン筋クリート」が代表作として挙げられることが多いです。そんな作品なのですが、個人的には巷の高評価ほどの作品には感じられませんでした。確かに、独特な絵のタッチが醸し出す迫力のある試合風景は良いと感じましたが、なんといっても物語がいまいちなうえ、極端すぎるキャラクター造形がせっかくのリアリティ的良さを削いでいます。2. あらすじ主人公は"スマイル"こと月本誠(つきもと まこと)と"ペコ"こと星野裕(ほしの ゆたか)。二人は幼馴染であり、県立片瀬高校の1年生として同じ卓球部に所属している。しかし、練習嫌いのペコは部活をサボって遊んでいることが多く、スマイルも持ち前の無気力...
漫画 「藤子・F・不二雄 異色短編集」 藤子・F・不二雄 星2つ
1. 藤子・F・不二雄 異色短編集「ドラえもん」や「パーマン」、「エスパー魔美」といった人気作品で知られる藤子・F・不二雄。ハードではないSF設定を中心に日本の漫画界を作り上げてきたレジェンドはブラックな短編の書き手としても漫画好きに知られておりまして、選りすぐりの作品が纏められた商品としてこの「藤子・F・不二雄 異色短編集」が小学館から発売されております。ただ、いまになって読むとやや古臭い印象は拭えません。1970~1980年代に発表された作品が多いのですが、いくつかの作品を除いては特に意外性のないブラックユーモアという感想を抱いてしまいます。もちろん、当時は斬新だったのでしょうし、こういった作品群を基礎に今日の発展した物語構築が存在するからこそ稚拙に感じるのかもしれませんが、いまなお輝きを失っていない作品たちという評価にまでは至らないだろうと思いました。2. あらすじ〇定年退食息子夫婦と穏やかに暮らす老人。健康増進効果があるといって「塩コーヒー」を好み、少し遠い区役所にも健康を意識して徒歩で向かう。無邪気に遊ぶ子供たちを見る視線も温かい。ただ、食事を摂る量は極端に少なく、どうやらい...
「茄子」黒田硫黄 評価:2点|気だるげな雰囲気の中で描かれる奇妙な日常が不思議な感情を揺り起こす【漫画短編集】
「月刊アフタヌーン」で2000年から2002年にかけて連載されていた作品。タイトルが「茄子」だけというなんとも不思議な漫画ですが、名は体をしっかりと表しており、野菜の「茄子」が出てくるのであればどんな物語でもよい、という制約のもとで書かれた短編集となっております。こういった短編集を出すくらいですから、著者の黒田硫黄さんはいくつか著作がありながらもそれほどメジャーな漫画家ではありません。それでも「セクシーボイスアンドロボ」くらいは聞き覚えのある人もいるのではないでしょうか。第6回文化庁メディア芸術祭のマンガ部門で文部科学大臣賞を受賞しており、松山ケンイチさん主演でテレビドラマ化もされています。本作の内容に話を戻しますと、ありがちなマイナー漫画だなぁという印象。全体的に気たるげな雰囲気が漂い、ちょっと変わった人たちがちょっと変わった行動をする様子が淡々と描かれるという作品です。私としては可もなく不可もなくですが、漫画好きでなければつまらないと思ってしまうかもしれない、というのが全体的な感想ですね。あらすじ〇3人(前後編)田舎でのんびりと茄子農家を営む男性のもとに、ある日、二人の子供が訪れて...
漫画&アニメ映画 「この世界の片隅に」 著者:こうの史代 監督:片渕須直 星3つ
1. この世界の片隅に2019年1月現在において「この世界の片隅に」といえばアニメ映画を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。事務所との係争により「のん」への改名を余儀なくされ、仕事が激減していた能年玲奈さんを主演声優に迎えてたった63館での公演と、マイナー映画的な興行から始まったにも関わらず口コミによって人気が広まった本作。最終的には30億円近い興行収入を獲得し、世界60ヶ国以上で公開されるようになるなどまさに日本映画界のシンデレラといってもよい作品でしょう。2019年12月20日には新カットを加えた「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」として改めて公開される予定で、その勢いは留まるところを知りません。本作が公開された2016年は本作のほかにも「君の名は。」「聲の形」といったアニメ映画界の転換点となる作品が公開された年であり、いまや日本の映画シーンを牽引している「子供向けでもオタク向けでもないアニメ映画」というジャンルの礎を築いた作品でもあります。「君の名は。」「聲の形」は本ブログでも既にレビュー済み。これでようやく三作品コンプリートとなりました。続いて原作漫画の紹介になります...
漫画 「足摺り水族館」 panpanya 星2つ
1. 足摺り水族館同人誌掲載作を集めた作品集ながら「このマンガがすごい! 2014 オトコ編」において第14位にランクインして一部界隈で注目を浴びた作品。著者であるpanpanyaさんは同人活動を中心とされている漫画家でしたが、現在は白泉社発行の漫画雑誌「楽園 Le Paradis」にて作品を連載しております。感想としては、「このマンガがすごい! 2014 オトコ編」 へのランクインに著者自身が驚いたと述べているように、明らかに万民向けの作品ではありません。独特な絵柄と不思議な世界観が魅力だとするファンもいらっしゃるのでしょうが、一般人にとっては意味不明の一言でしょう。私もどちらかというとマイナー分野好きの人間ですが、この作品はあまり受け付けませんでした。2. あらすじ〇足摺り水族館少女は親戚から貰った本に「足摺り水族館」の入場チケットが挟まっているのを発見する。翌日、チケット裏に記されていた道順を頼りに「足摺り水族館」を目指すのだが、だんだんと不思議な世界に迷い込んでしまい……。〇イノセントワールド京都での修学旅行の途中、同級生とはぐれてしまった少女。仕方なく最後の集合場所となってい...
漫画 「うたえ! エーリンナ」 佐藤二葉 星2つ
1. うたえ! エーリンナ星海社(講談社100%子会社)が運営する4コマ漫画サイト「ツイ4」で連載されていた作品。古代ギリシアの女学校を舞台に、詩人を目指す女学生エーリンナの学校生活と合唱祭での奮闘を描くという異色のテーマとなっており、著者である佐藤さんがギリシア悲劇に造詣が深く、古代ギリシアの竪琴「リュラー」の演者でもあることからこそ描けたテーマだと言えるでしょう。そういった作品ではありますので、「古代ギリシア(の女学校)文化」にまつわる部分は興味深く読めました。ただ、物語自体は凡庸で、いかにも「漫画っぽい」展開をなぞっただけという感が否めません。百科事典的な面白さだけが評価できる作品でした。2. あらすじ舞台は古代ギリシアのレスボス島。ギリシア史上最高の女詩人サッポーが運営する女学校には嫁入り前の女性たちが集められ、日々、花嫁修業に励んでいた。そんな女学校に入学したエーリンナだったが、機織りのような花嫁修業科目には全く興味なし。彼女の夢は詩人になることであり、サッポー先生には特別な敬慕の念を抱いている。しかし、古代ギリシャにおいて女性が自由に振舞えるのは学校に通っている時期だけ。...