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【なんだこの人生 日曜しか生きた心地がしない社畜OLの日常】労働に打ちひしがれ虚無な日々に絶望する新米社会人の苦悩 評価:2点【橋本ゆの】

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なんだこの人生
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1. なんだこの人生

奇妙なタイトルの作品ですが、調べてみるとTwitter発のコミックエッセイということでそれも納得できます。

橋本ゆのさん(@riko3_)という現時点で4.5万人のフォロワーを抱える人気ツイッタラー(インフルエンサー?)さんが出版する初の単行本とのこと。

ポップな雰囲気の表紙やタイトルに違わず気軽に読める内容ですが、反面、現代社会においてサラリーパーソンとして働くことの意義について考えさせられる作品でもありました。

社会から受ける暗黙の要請に応じて学校に通い、これまた暗黙の要請に応じて会社に入って働いているのに、まさに「なんだこの人生」と思ってしまうような生活を送っている方々には刺さる作品だと思います。

2. あらすじ

藤井香菜子(ふじい かなこ)は都心で働くOLで、社会人二年目。

しかしながら、キラキラした生活とは縁遠い日々を送っている。

「毎日満員電車に乗りつらい思いをして働き、土曜は一日中寝ていて活動しているのは日曜だけ……という1週間を過ごす。こんな生活が1年後も5年後も10年後もずっとずっと続くと考えると本当に心が折れそうになる。社会人生活はこんなはずではなかった」

なんだこの人生......!!

3. 感想

既に社会人であるという方々にとって、隅から隅まで共感できる内容になっております。

こんな漫画がTwitterにアップロードされていたら、確かにダラダラと見続けてしまいそうですね。

平日は帰宅するとすぐに寝てしまい(orベッドの中でスマホ)、土曜は2度寝と動画投稿サイトの閲覧で潰れてしまう。

有休を取ろうにも会社の予定を確認すればするほど機会がなく、いざ取ったら取ったで仕事の進捗が頭をよぎり不安に。

友人知人の結婚出産報告をSNSで見ては病み、一人行動が好きな自分の生き方に不安を覚え、趣味に没頭する気力も失われつつありながら、仕事で出世するための自己啓発をする気力など更にないという日々。

まさに、現代を生きる若手社会人の写し鏡のような漫画ですよね。

もちろん、給料の高低や休暇の多寡という点に個人差はあるかもしれませんが、こういった「感覚」そのものは誰もがある程度共有しているのではないでしょうか。

そう考えると、現代社会において普通の人が普通に働く意義って何、という点にどうしても思考が行き着いてしまいます。

高度経済成長期やバブル期には日進月歩で手取りが上昇していたらしいので、日々の頑張りにも報われている感があってどんなくだらない仕事にもやりがいを感じられたのかもしれません。

しかし、賃金上昇が停滞し、税金や社会保険料だけが上がっていく中で、まさに日々のありきたりな仕事が「つまらないルーチン」未満のものにしか感じられないのは妥当なことでしょう(ここでの「ありきたりな仕事」の意味には、仕事にはつきもののありきたりな辛さを含めていますし、そのありきたりな辛さがときに耐えがく死にたくなるほどの辛さであったりすることも含めております)。

高度経済成長期はもちろん、バブル期さえも体感したことのない世代にとって「あの頃のような輝きを持った働き方」は感覚として理解しがたいものでして、かつて存在した栄光ある日本の復活を夢見たり、何もかもが「上昇」していく希望に満ち溢れた未来を想像しながら自分自身に鞭を打つことは現実問題として難しいわけです。

仕事をいくらこなせども給料が上がらず、高賃金でもなければやりがいもない仕事を行うだけの無味乾燥な毎日が永遠に続くことしか想像できない。

そうして「希望が持てない」という感覚が常態化していきます。

そのように、仕事に希望を見いだせないからこそ「自分探し」や「プライベート重視」が跋扈するのでしょう。

さらに、この現象を殊更に苦味のあるものにしている社会的な要因として、学校に普通に通い、普通に就職すると高確率でこうなってしまうという点も重要でしょう。

いまや旧式の「企業戦士」が利潤を生みだす経済環境ではないにも関わらず、旧式の「企業戦士」を生み出すための学校教育が続いている点は問題ですよね。

(もし旧式の「企業戦士」が利潤を生みだせるのならば、誰もが旧式の「企業戦士」として働くような働き方がいまでも当然のように続けられているでしょう。「企業戦士」たちが利潤を生みだすことで企業業績が上向き、業績に連動して給料が上昇し続ける、という流れが続く限り、多くの人はそれなりの満足感を覚え続けるでしょうから)

学科教育はジェネラリストを養成するための内容に偏っていますし、それ以外の点でも、同調圧力に従うことを重んじるような教室・部活・行事の雰囲気などはいまだに変わっていないんじゃないかと思います。

かといって、近年になってよく見られる「自分らしく」とか「ほどよく働く」のような論調を私はあまり好ましく思ってはいません。

幼い頃からインターネットに没頭してきた人間としては異端な思想かもしれません。

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