【エンタメ小説】有名エンタメ小説低評価批評集【閲覧注意】
【政治学】おすすめ政治学本(その他)ランキングベスト4【オールタイムベスト】
本ブログで紹介した政治学系の書籍から、政治過程論以外に纏わる書籍ベスト4を選んで掲載しています。政治過程論系のおすすめ本はこちらをご参照ください。第4位 「市民政府論」ジョン・ロック日本国憲法が基本的人権の擁護を柱としていること、政府が存在し様々な活動を通じて国民生活を支えていること。これらは中学校の社会の教科書に載っている内容ではありますが、このような言説の中では基本的人権の存在や政府の存在が自明になっており、なぜ、基本的人権は存在する(べきな)のか、なぜ(民主的な)政府が存在する(べきな)のかといったことはなかなか語られません。こういった発想は優等生的ではないのかもしれませんが、なぜ基本的人権や民主的な政府の存在が自明に良いとされているのか、疑問に思ったことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。本書「市民政府論」はそんな疑問に答える著作の一つとなっております。基本的人権や民主的な政府が当たり前ではなかった時代、その存在を論理的に正当化しようとした人々がおりまして、その代表格の一人が本書の著者であるジョン・ロックです。なお、「市民政府論」はロックの著作である「統治二論」のうち後...
【自己啓発・資産運用】おすすめ自己啓発・資産運用本ランキングベスト3【オールタイムベスト】
本ブログで紹介した自己啓発・資産運用系の書籍からベスト3を選んで掲載しています。時流ばかりを意識した中身のないビジネス書的な作品は避け、なるべく人生の核となるような作品を選んでいくつもりです。第3位 「死ぬ瞬間の5つの後悔」ブロニー・ウェア介護人として数多くの人物を看取ってきた著者がそれぞれの人物の最期に焦点を当て、彼ら/彼女らが死の直前にどのようなことを後悔していたのかを綴った著作になります。本作の概要を説明するには、目次を掲載するのが手っ取り早いでしょう。後悔一 自分に正直な人生を生きればよかった後悔二 働きすぎなければよかった後悔三 思い切って自分の気持を伝えればよかった後悔四 友人と連絡を取り続ければよかった後悔五 幸せをあきらめなければよかったこの手の本にありがちなのが、文字がやたらに大きくて行と行のあいだも極端に広く、見開き2ページごとにサブタイトルが一つといった形式の、要はスカスカな本という形式なのですが、意外なことに、字がびっしりと詰まった読み応えのある本でした。著者に介護を受けた人々が、人生の最終盤に何を想い、著者とともにどのような行動を起こしたのか。人生でやりすぎて...
【経済学】おすすめ経済学本ランキングベスト4【オールタイムベスト】
本ブログで紹介した経済学系の書籍からベスト4を選んで掲載しています。第4位 「資本主義が嫌いな人のための経済学」ジョセフ・ヒースカナダの哲学者、ジョセフ・ヒースによる経済学の本。刺激的なタイトルですが、内容の本質を表しているのは帯のコメント。「ヤバくない経済学」。経済学の主流王道基本の考えをもとに、右派そして左派にはびこる誤謬を指摘するという著作です。経済学を学んだことがある人にとってはその復習に、ない人にとっては経済に関する主張を解釈する際のフィルターとして活用できます。本著は前半と後半に大きく分かれており、前半部では右派、保守派の誤りを、後半部では左派、リベラル派の誤りが指摘されます。SNSや動画投稿サイトで蔓延る俗論的な経済学説に対して、少なくとも学術界の主流派はこのように考えているんだな、ということが分かる著作となっております。経済学に対する自分自身のバランス感覚を保つためにお薦めです。
「リバーズ・エッジ」岡崎京子 評価:3点|独特の退廃的な世界観が魅力的な90年代高校生群像劇【青春漫画】
1980年代から90年代にかけて活躍した岡崎京子さんの作品。漫画雑誌での連載期間は1993年から1994年までとなっており、連載終了後に単巻で単行本が発売されております。1990年代という時代を背景として、ややダウナーでオフビートな高校生たちの生活を描いており、いじめや同性愛、摂食障害や援助交際といった岡崎さんらしい要素が散りばめられています。作中では衝撃的な事件が起こりますが、あくまでメインテーマは高校生間で結ばれる恋愛と友情の機微となっており、掴みどころがないのにぐんぐんと読み進めてしまうような、そんな作品でした。あらすじ大きな河の河口付近に位置する街が舞台。主人公の若草わかくさハルナは女子高生で、素行不良の同級生である観音崎かんおんざき峠とうげと付き合っている。といっても、もはや観音崎への愛情は存在せず、惰性で付き合っているばかり。そんなハルナが通う高校の教室では、同級生の山田やまだ一郎いちろうが激しいいじめに遭っていた。執拗ないじめを見るに見かねたハルナは山田を助けるのだが、そのことがきっかけとなり、ハルナは山田のとある秘密を知ることになる……。やり場のない劣等感を抱えた高校生...
「流浪の月」李相日 評価:1点|誘拐犯と少女が育んだ不思議な愛のかたち。十五年後の再会は二人を不思議な運命へと導いていく【恋愛映画】
2022年5月13日に公開された邦画で、主演は広瀬すずと松坂桃李。脇役も横浜流星や多部未華子といった著名な俳優で固められており、力の入っている作品だといえるでしょう。原作は凪良ゆうさんの同名小説であり、第17回本屋大賞受賞作にして累計発行部数80万部突破の人気作。かつて誘拐犯と誘拐された少女という立場だった二人が十五年後に再開を果たし、友情とも恋情とも違った関係をあの頃と同じように取り結んでいくという不思議な物語の大枠自体は原作準拠のようです。そんな本作ですが、少なくとも映画の方はイマイチな出来だったと言わざるを得ないのではないでしょうか。いわゆる「盛り上がる」ような題材の作品ではなく、たおやかな雰囲気にならざるを得ない作風とはいえ、さすがに映画鑑賞体験として「盛り上がり」を感じられる場面が皆無に近く、だからといって「ぐっとくる」ような場面もなかったというのが正直なところです。一般的には理解を得づらいはずの二人の関係を、いかに「あり得る」魅力的な関係として描き出すかというのが本作の肝となり得るはずですが、そこの説得力には欠けるばかりで、誰が本作に共感するんだろうと思ってしまいました。も...
「すずめの戸締り」新海誠 評価:2点|冒険・社会性・家族愛。全要素が中途半端になってしまった新海監督の最新作【アニメ映画】
「君の名は。」の衝撃的な大ヒットで邦画界にセンセーションを起こすと、続く「天気の子」も成功させて国民的アニメ映画監督の地位を固めつつある新海誠さん。そんな新海監督の最新作であり、2022年11月11日から公開されているのが本作となります。本記事執筆時点で興行収入は既に90億円近くに達しているようで、2022年における日本での興行収入ベスト5に入ることを確実にしています。そのうえ、三作連続での100億円超えも視野に入るという人気ぶりなのですから、単なる話題作という以上に多くの人が楽しんで鑑賞しているのでしょう。そんな本作ですが、個人的にはやや凡庸というか、面白い作品になりきれていないように思われました。少女と青年の出会いから始まる日本縦断のロードムービー、自然災害や過疎を題材にしているという現代性、日本的な神事から着想を得た物語展開、そしてもちろん、美麗な映像と音楽の組み合わせ。「面白そう」な要素が揃い踏みしていることは確かなのですが、その全ての要素について掘り下げが中途半端に終わってしまった結果、何とも長所を見出しづらい映画となっております。あらすじ物語の起点は九州某所の田舎町。女子高...
「ミミズクと夜の王」紅玉いづき 評価:2点|彗星のごとく現れた童話風物語、電撃小説大賞受賞の異色作【ライトノベル】
2006年に第13回電撃小説大賞を受賞し、2007年に発売されたライトノベルです。今日でも人気は非常に根強く、2020年から2022年にかけて漫画版が白泉社の漫画雑誌「LaLa」で連載されたほか、2022年3月には完全版が発売されるなど、ライトノベルの古典として定着している感もあります。特徴的なのはなんといってもその作風でしょう。バトル中心の異世界ファンタジーか学園モノが主流だった時期にあって、童話風の優しい作風で電撃小説大賞を受賞したことそのものが話題となった作品でした。出版された際にも、挿絵が用いられず、表紙には美少女や武器が描かれないどころか、抽象的な画風で夜の森と人影だけが描かれているというライトノベルとしては非常に攻めた形でプロモーションがかけられたことも、さすが電撃文庫だと思わせるような斬新さがありました。私も発売当初に一度読んだことがあり、それ以来の再読となりましたが、その作風の独自性はいまなお存在感を放っていると言えるでしょう。ただ、一つの物語としては、露骨に「優しい」物語過ぎる側面が鼻につきます。発想としては悪くないものの、もう少し盛り上がりどころを備えられなかったの...
「存在消滅 死の恐怖をめぐる哲学エッセイ」高村友也 評価:2点|自己が永遠に消滅するという、その現象への向き合い方、向き合えなさ【生き方】
東大の哲学科出身という出自を持ちながら(持つからこそ?)、田舎の雑木林を購入し、自作の小屋を建てて自給自足生活を送っている(送っていた?)高村友也さんという方が「死」について考えたことを著したエッセイ本です。高村さん自身は何年も前から自作小屋暮らしブロガー/YouTuberして界隈では注目を集めておられた方で、小屋暮らしについての書籍も出版されています。そんな高村さんを幼少期から悩ませてきたのが「死」という現象への恐怖。自分時間が永遠に消滅してしまうという現象であり、避けることはできずいつかは必ず訪れるこの現象。やや内向的で思索的な人であれば、ふとした瞬間に考えたこともある「死」についての想いが淡々と綴られており、その中から自分自身の「生」についてのヒントが得られるかもしれない、という書籍になっております。目次第一章 危機第二章 永遠の無第三章 世界の神秘第四章 問いの在り処第五章 他人と孤独第六章 対処療法としての逃避と忘却第七章 執着と諦観、信頼と不信第八章 文明第九章 自己矛盾第十章 旅の動機第十一章 宗教第十二章 人生の意味第十三章 小屋暮らし、再び感想小屋暮らしを始めてから一...
「人生後半戦のポートフォリオ」水木楊 評価:2点|時間・モノ・カネのトレードオフを意識して時間長者の人生を歩むべき【生き方】
元日経新聞記者で取締役まで務めた後に退社し、以後、作家として活躍した水木楊さんの記した新書。タイトルは「人生後半戦のポートフォリオ」とありますが、主に30代以降の読者を想定しながら、仕事に忙殺されなおかつ浪費をしてしまいがちな人生を上手く律し、自分のための時間を多く持つことで充実した人生を送ろうという主旨の書籍となっております。著者の水木さんは1937年生まれで2021年に亡くなっているのですが、中国上海生まれで、大学は自由学園最高学部、そこから日経新聞に就職という経歴に時代の流れが色濃く表れています。いまとなっては「時間を大切に」という風潮こそ主流になりつつあり、フレックスタイムや在宅勤務の増加、さらにはFIREという概念の登場など、とりわけ労働時間を抑制しようという動きが盛んですが、2004年発売の本書はまさに先見の明があったと言えるでしょう。現代では類書に溢れた本となってしまっておりますが、下手にフリーランスやFIRE、田舎暮らしを持て囃すのではなく、サラリーマンとして家族を持ちながら働く人々がどう時間を大切にできるのかという論点で書かれている点にはまだまだ独自性があります。「時...
「ポケモンをつくった男 田尻智」菊田洋之・田中顕 評価:3点|天才ゲームクリエイターの半生に迫る【学習漫画】
1996年に発売されると、世界中で大ヒットとなり、いまなお世界的大人気シリーズとしてゲーム業界に君臨しているビッグタイトル「ポケットモンスター」。四半世紀経ったいまでも最新作「ポケットモンスター スカーレット・バイオレット」の発売が控えており、ゲーム本編以外でも、アニメ・映画・スマホゲーム・関連グッズの展開は留まることを知りません。日本を代表するコンテンツの一つだと言っても全く過言ではないでしょう。そんな「ポケットモンスター」の生みの親と呼ばれる存在。その人物こそ、ポケモンの開発元メーカーである「ゲームフリーク」の創業者、田尻たじり智さとしという男です。第一作である「ポケットモンスター 赤・緑」の主人公のデフォルトネームであり、アニメ版ポケットモンスターの主人公の名前でもある「サトシ」はこの田尻智から取られています。そんな田尻智さんの伝記漫画が本書なのですが、なるほど、こういう人物が斬新なゲームをつくるのだなと感心させられた次第です。子供時代の自然体験とゲーム体験、その二つが見事なバランスで融合した思想から生まれたのがポケモンというゲームだったことに納得すること間違いありません。ゲーム...
「イニシエーション・ラブ」乾くるみ 評価:2点|1980年代の世相を背景に大胆なトリックで衝撃のラストを演出した人気作【恋愛ミステリ小説】
2004年に発売された小説で、2005年版の「本格ミステリ・ベスト10」の第6位、「このミステリーがすごい!」の12位にランクインするなど、ミステリ小説としての評価が高い作品です。売上としてはミリオンセラーを記録し、2015年には映画化されるなど、非常に息の長いロングセラーの人気作となっており、著者である乾くるみさんの代表作だといえるでしょう。そんな本作を読んでみた感想ですが、宣伝文句の「最後2行の衝撃」が面白いことは確かである一方、それまでの経過は凡庸な恋愛小説のそれであり、やはりミステリ小説を推理しながら読んでいける人向けの作品だと感じました。ミステリ小説を読むと、謎が解ける瞬間は面白いけれどそれまではイマイチという感想を抱くことが多いので、あまりミステリ小説の読書に向いていない人間なのではないかと思う今日この頃です。あらすじ静岡大学に通う内気な大学生、鈴木夕樹すずきゆうきが主人公。ある日の合コンで鈴木は成岡繭子なるおかまゆこという女性に一目惚れする。紆余曲折あって成岡と付き合うことになり、深い関係を築くことに成功した鈴木。時は巡り、地元静岡の企業に就職した鈴木だが、幸か不幸か同期...
「億男」川村元気 評価:1点|宝くじで三億円を当てた男が旅の末に気づく「お金」と「幸福」の関係性【マネーエンタメ小説】
数々の大ヒット映画をプロデュースしたことで知られる川村元気さんの小説第2作が本作となります。古くは「電車男」や「告白」といった実写映画でヒットを飛ばし、近年では「君の名は。」や「ドラえもん のび太の宝島」といったアニメ映画に携わったことで名を上げた人物です。本作も何十万部と売れているとのことで期待して読み始めたのですが、全く期待外れな読書経験となりました。しかも、単に期待外れではなく結構衝撃的な読書経験でもありました。というのも、一般に良い小説を書くためにはこれをしてはいけないという事項が本書内では次々と実行され、まさにそういった要素によって本書はつまらない作品となっていたからです。本当にこの作者は小説を読んだことがあるのだろうか、小説を読んで一度でも感動したことがあるのだろうか、そんな疑いさえ抱いてしまうほどです。しかし、この作品が世間では受け入れられているのですから、もう小説というものは今後このような形になってしまうのかもしれないという思いもあり、非常に侘しく感じられます。あらすじ弟が残した三千万円の借金を肩代わりした一男かずおは、その返済を行うべく、昼は図書館司書として働き、夜は...
「グッバイ・コロンバス」フィリップ・ロス 評価:2点|1950年代のユダヤ系アメリカ人コミュニティにおける若者の恋愛と家庭や世代による価値観の相克について【海外純文学】
1959年に出版されたアメリカの恋愛純文学小説で、20代のユダヤ系アメリカ人同士の恋愛を主題としつつ、アメリカにおけるユダヤ人コミュニティ内での価値観分裂に焦点を当てた作品です。若者同士の恋愛については現代日本人から見てもまだ通じる話にはなっているのですが、当時のアメリカ社会の様相であったり、その中で重視されている価値観(特に信仰や純潔についての拘り)という面では、これは現代日本とは全く違う世界の話なのだということを意識しつつ読まなければ混乱するような筋書きになっております。著者は本書を表題作とする短編集で1960年の全米図書館協会賞を受賞しており、当時としてはまさに瑞々しくセンセーショナルな作品だったのでしょう。確かに、翻訳の良さも手伝って瑞々しく端正な文章には惹きつけられるものの、物語そのものにはあまりのめり込めなかったなというのが率直な感想です。あらすじ主人公は大学卒業後図書館員として働いているニール・クルーグマンという青年。ある日、プールで出会ったブレンダ・パティムキンに一目惚れすると、たちまち彼女にアプローチをして成功し、二人は付き合うことになる。しばらくは清純な関係を楽しん...