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「人生後半戦のポートフォリオ」水木楊 評価:2点|時間・モノ・カネのトレードオフを意識して時間長者の人生を歩むべき【生き方】

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人生後半戦のポートフォリオ
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元日経新聞記者で取締役まで務めた後に退社し、以後、作家として活躍した水木楊さんの記した新書。

タイトルは「人生後半戦のポートフォリオ」とありますが、主に30代以降の読者を想定しながら、仕事に忙殺されなおかつ浪費をしてしまいがちな人生を上手く律し、自分のための時間を多く持つことで充実した人生を送ろうという主旨の書籍となっております。

著者の水木さんは1937年生まれで2021年に亡くなっているのですが、中国上海生まれで、大学は自由学園最高学部、そこから日経新聞に就職という経歴に時代の流れが色濃く表れています。

いまとなっては「時間を大切に」という風潮こそ主流になりつつあり、フレックスタイムや在宅勤務の増加、さらにはFIREという概念の登場など、とりわけ労働時間を抑制しようという動きが盛んですが、2004年発売の本書はまさに先見の明があったと言えるでしょう。

現代では類書に溢れた本となってしまっておりますが、下手にフリーランスやFIRE、田舎暮らしを持て囃すのではなく、サラリーマンとして家族を持ちながら働く人々がどう時間を大切にできるのかという論点で書かれている点にはまだまだ独自性があります。

「時間を大切にする」系の書籍を読んでいく際の、最初の一冊としては無難なのではないでしょうか。

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目次

第1章 タワーの法則
第2章 時間のバランスシート
第3章 時間戦略
終章 時間の主人公となる

感想

本書の第一章ではまず、時間・モノ・カネの三要素から人生が構築されていることを認識させるため、自分がその三要素に人生をどれだけ配分しているのかという図を描かせます。

労働時間と年収から自分自身の時給を計算したうえで、モノ(物品及びサービス)に消費した金額を時給で割った数値、カネ(貯金や金融商品の購入)に充てた金額を時給で割った数値、そして、自由時間として過ごせる時間。

それらの数値を三角形のグラフに表すことで、自分が何に時間を使っているのかをざっくりと知ることができます。

つまり、単位を時間に揃えて、モノ・カネ・自由時間への分配の現実をまずは直視しようというわけです。

本書でも実例が挙げられておりますが、典型的な日本のサラリーマンであれば、モノへの消費が一番大きく、その次がカネであり、自由時間が極端に少ない人生を過ごしていることが分かるでしょう。

また、こうして三要素の比率を測ると、自由時間と金銭をいくらで交換できるかの比率が算出されるのですが、多くの人々は自由時間を自分の時給以上の金額でないと売り渡せないと言うらしく、それならば労働時間を削って自由時間を増やせばいいのに、ということになるのですが、そこには中々踏み出せないのが実情であるようです。

第二章は家計のバランスシートを書いてみようというテーマであり、最近の家計管理系の書籍ではオーソドックスな内容です。

資産側に持ち家や自家用車、預金の価値金額を記入し、負債側には住宅ローン残高をはじめとした借金の金額を記入、残った純資産の部分が家計の持つ正味資産というわけです。

さらには、人間は時間という無形資産を保持しており、労働によってこれを単なる資産に変えることもできれば、逆に、正味資産を削って時間を得ることも可能。

この交換を意識しながら未来計画を立て、人生を楽しむのに必要な時間を得ていこうというのが本書の主張となります。

この章に限らず、本書では労働に時間を潰される男性サラリーマンと、無労働もしくはゆるふわ労働で手持ち時間を充実させている主婦やOLとの対比がよくなされるのですが、時間という観点で見れば女性が非常に優遇されていた時代なのだなぁと思ってしまいます(いまもそうかもしれませんが)。

さて、込み入った計算は第二章までで終了し、第三章からは具体的な時間戦略が語られます。

といっても、その内容は今日となっては語り尽くされた感のあるものです。

賃貸か持ち家かはよく考えよう、資料はなるべく手元に置かないようにして資料へのアクセス手段を記録するようにしよう、生命保険を契約しすぎないようにしよう、登山や図書館利用、ボランティア活動などコストの低い活動で自分時間を充実させればそれほど労働時間を確保しなくてもよい。

なんだか最近流行しているFIREやセミリタイア系の書籍を読んでいるようです。

しかし、そんな中でも面白い、というより最近はあまり語られなくなったなという主張もありました。

それは、仕事の時間を充実させようというもの。

仕事時間のうち何割が自分にとって充実した時間ですかと自分に問いかけ、例えばそれが三割であれば、その三割は自分時間だと言っても差し支えなく、これこそが自分時間長者へと向かうウルトラC(表現が古いですね......)だと著者は述べます。

何億という資産を保持してフルリタイアできるわけでもなければ、結局、稼得手段に費やす時間をどれほど充実させているか、仕事がどれくらい苦しくなく、一定程度楽しいといえるかが大事になってきます。

本当に、この観点からもっと自分の人生を充実させたいものです。

なお、終章では晩年に豊かな生活を投げうって貧乏放浪俳諧旅に出た松尾芭蕉の時間の使い方が理想の一つとされていることからも、どう考えても人生の豊かさの終着点は時間をたっぷり使って見分を広めつつ創作をすることになるなのだなぁと思ってしまいます。

それを考えると日本のサラリーマン人生はあまりにもむなしいですよね。

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