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「響け! ユーフォニアム ~誓いのフィナーレ~」石原立也 評価:3点|スポ根要素と人間関係要素の両輪が魅力の青春吹奏楽アニメシリーズ続編映画【アニメ映画】

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響け!ユーフォニアム 誓いのフィナーレ
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特段「悪い」シーンはないのですが、課題もトラブルもなく進行する映像には退屈さがありました。

1年生編が終わるとやたらに展開が早くなり、一人ひとりの登場人物や一つ一つの事件をほとんど掘り下げないまま映画が進行してしまった印象です。

置いていかれた、という感じが強かったですね。

鎧塚よろいづかみぞれと傘木かさき希美のぞみの組み合わせについては「リズと青い鳥」で描いているため省略もやむなしですが、顎関節症で演者を退くことになった加部友恵や、部長として様々な悩みを抱えながら行動していたはずの吉川優子、そしてもう一人の主人公ともいえる麗奈についてはあまりにも描写が少なすぎ、唖然としました。

これまでのシリーズでも準主役級だった優子と麗奈の扱いがこれではいままでの感情移入が否定された気になりますし、加部先輩に至っては「怪我による引退」と初めてスポットライトを当てておいたにも関わらず、意味もなく唐突に梯子を外されてしまった感があります。

京都府大会もいつのまにか通過したことになっており、合宿の描写も極めて薄く、田中あすかを中心とするOG勢も義務的に出した雰囲気さえあります。

月永の父親がライバル校である龍聖高校の顧問であるという設定も活かされませんでした。

久美子と秀一の関係にいたってはこんな重要なことをいかにもあっさりと、という印象です。

おそらく(原作未読ですが)原作で関西大会までに起こった事件をとりあえず形式的にでもこなしておこうということなのでしょうが、そんなやり方では楽しい映画になり得るはずもありません。

こんな展開ですから、関西大会での敗北に対する悔しさというものを、映像が空元気に発するように多くの視聴者が感じ取れたかは疑問です。

従来のテレビシリーズで濃密に描かれていた複雑な人間関係や厳しい指導、合宿でのひと悶着からもたらされる技能・精神両面での成長などが「省略」されてしまっていたため、そういった努力や必死さの描写から来る「本番」の重さ・濃さがどうしても小さくなってしまいます。

もちろん、第1期の焼き増しのような演出をされても困りますが、面子としては新入生を加えて昨年の3年生が抜けたのですから、そこから新しく生じた演奏の悪い傾向とそれを乗り越える様子などが少しでも描かれていればまだマシだったのかもしれません。

もちろん、そうなると関西大会敗北の理由付けが難しくなりますが、以下のような状況をもっと上手く映像的に説明すれば「努力」描写があってからの敗北でも自然な結果だったでしょう。

本作では敗北への前振りとして、久美子と麗奈の「今年は(1年生が)弱い」トークの伏線と、「龍聖が新顧問で成長」の伏線がありました。

ですが、そんなあからさまなことをしなくても、実力に劣る中川夏紀やブランクのある傘木希美をコンクールメンバーに選出しなければならない苦しい台所事情をもっと強調すれば良かったのではないでしょうか。

合宿等でも滝先生ほか指導陣の求めるレベルについてこれていない描写をする機会はあったでしょうし、「つい昨年と比べてしまう」のようなシーンだって入れられたはずです。

香織先輩(中世古なかせこ香織かおり:麗奈に次ぐトランペットの実力者)とあすか先輩(田中あすか:抜群の実力を持つユーフォニアム担当)の高音低音のダブルエースが抜けたにも関わらず、補充メンバーで強キャラ描写は低温パートの月永求と鈴木美玲だけで、特に演奏の華ともいえるトランペットで穴が大きい。

久石奏も夏紀より上手いだけでずば抜けて上手い描写はないからユーフォも弱体化かもしれない。

二年生の成長描写があるのは久美子だけで、それも演奏技術ではなく精神面。

原作ではもっと細かく説明があるのかもしれませんが、映画でもそのあたりを前面に押し出して昨年度にはない「焦り」が出ればそれはそれで熱かったでしょう。

もがいても届かない気持ちは青春スポ根ものにぴったりのはずです。

終盤のまとめとしては、もっと「敗北」を劇的に演出できていれば一つ抜けた作品になったかもしれないという思いが強いです。

優子が最後に行う「きっと明日につながる」演説もテンプレ気味であり、全体的として三年生の存在感が弱くなっています。

最終学年として臨む大会であるからにはもっと濃く、様々な趣向を凝らして描き、無念を露わにすれば序盤の感動を持続できただろうという面では惜しい作品になりました。

ちなみに久美子と秀一の関係ですが、個人的には「恋も部活も一生懸命、むしろ両輪で上手くいく」という展開が好みなので、この視点に限ればむしろ関西大会敗北はなんとなくほっとしました。

また、結局のところ結論が出なかった「将来のこと」は第4期(3年生編)への伏線なのでしょうね。父親の顔をぼやかすのは「親との関係」というテーマから逃げるアニメのようで良くないと直感的には思いましたが、後から振り返れば、久美子は自分の将来に対する想いに自信がなく、父親を直視できないという暗喩かもしれないとも感じて判断を保留中です。

次の作品で久美子が両親とどう渡り合うのかに期待ですね。

そう思うと、関西大会敗北は「将来」に向き合えてない久美子が必死さや精神的なものでライバル校に勝てていない的なところもあったのかもしれません。

今回は久美子がユーフォニアムのエース格でしたが、前年のエースであったあすか先輩は自分の将来のことまでしっかりと考えて部活に取り組んでいましたから、久美子がまだそこに達せていないということを示しているのかもしれませんね。

姉妹編アニメ映画「リズと青い鳥」のレビューはこちら

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