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ファイトクラブ

「ファイト・クラブ」デヴィッド・フィンチャー 評価:3点|現代資本主義社会がもたらした精神的鬱屈に対して、奇妙で斬新な処方箋を提示する作品【アメリカ映画】

1999年に公開されたアメリカ映画であり、今日でも評価が高いハリウッド映画の古典作品の一つです。「ベンジャミン・バトン」や「ソーシャル・ネットワーク」、「ゴーン・ガール」といった作品を後に製作することになるデヴィッド・フィンチャー氏が監督を務めております。大物俳優の出演としては、主人公の相棒であるタイラー・ダーデンをブラッド・ピットが演じており、さすがの演技で魅了してくれます。不眠症に悩んでいるサラリーマンの主人公が「殴り合い」による充実感を得ることで精神的な変貌を遂げていく、というストーリーラインが鬱屈した日常を送っているであろう多くの日本人サラリーマンに刺さること請け合いでしょう。私もそんなサラリーマンの一人だけあって、序盤から中盤までの展開には興奮させられましたが、中盤以降の展開についてはやや突拍子もないものに感じられました。社会派といえばそうなのでしょうが、「社会」を描くにしては手管が大雑把過ぎるように感じられ、大仰な展開に見合うだけの説得力や感情的な揺さぶりが欲しかったところです。あらすじ主人公の「僕」は大手自動車メーカーでリコール調査の仕事に就いている。十分な給料を得ており...
フォレスト・ガンプ

「フォレスト・ガンプ」ロバート・ゼメキス 評価:3点|激動の戦後アメリカを駆け抜けた、実直で不器用な男の人生【アメリカ映画】

1994年公開のアメリカ映画で、大ヒットを記録してアカデミー賞の作品賞を受賞した作品です。いまなお古典としての人気も高く、ハリウッド映画の王道的名作とされています。主人公のフォレスト・ガンプは生まれつき知能指数が低く、足も不自由という、謂わば生来の劣等生として登場するのですが、そんなフォレストが実直な性格を梃子に激動の人生を逞しく歩んでいく様子を描いた、まさに王道を往く物語です。フォレストの辿る人生には、ベトナム戦争や公民権運動、ピンポン外交といった戦後アメリカ激動の歴史が重ね合わされ、ケネディ大統領にニクソン大統領、ジョン・レノン、そしてアップルといった、当時の時代を象徴するような実在の人物や企業が登場することで、主人公の人生という小さな流れと、戦後アメリカの歴史という大きな流れが相互に影響を与え合うダイナミックさが特徴となっております。もちろん、粗を探そうと思えばたくさんあるのですが、大胆な物語構成によって「人生」の良い意味での不思議さを描く、という試みに成功している点において、いくばくかの粗による悪さを超える魅力が形成しており、総合すれば佳作と呼べる映画といえるでしょう。その評価...
ハチミツとクローバー

【ハチミツとクローバー】甘くて切ない「夢」と「片想い」の青春恋愛漫画 評価:4点【羽海野チカ】

1. ハチミツとクローバー2000年代前半に一斉を風靡した少女漫画。著者は羽海野チカさんで、現在は白泉社の月間漫画雑誌「ヤングアニマル」で青春将棋漫画「3月のライオン」を連載されています。10巻完結ながら累計発行部数は800万部に達し、アニメ化と実写映画化も果たしているなど、名実ともに堂々たる人気作品である本作。2度の掲載紙休刊を乗り越えて連載が続いた作品でもあり、マイナーな掲載紙出身ながら大ヒット作にまでのし上がった経緯にもドラマを感じさせます。そんな本作を今更ながら読了したのですが、評判や販売実績に値するような、素晴らしい感動作でした。多様な登場人物たちの恋模様と夢の探求、もがき続ける中で生まれる葛藤が濃密に描かれており、とにかく一話一話の盛り上がり度合いが著しく高い作品です。中だるみや「捨て回」のような話が存在せず、まさに人生のハイライトを駆け抜けているような、甘くて苦い青春のひとときを自分自身が経験したかのように錯覚させられる名作です。2. あらすじ物語の主な舞台は浜田山美術大学。東京に存在する私立大学で、通称は「浜美」。大学近くにある木造で水回り共用の下宿には、竹本祐太(タケ...
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パプリカ

アニメ映画 「パプリカ」 監督:今敏 星1つ

1. パプリカ2006年公開のアニメ映画で、監督は「PERFECT BLUE」や「千年女優」、「東京ゴッドファーザーズ」を手がけた今敏さん。筒井康隆さんの同名小説が原作で平沢進さんが主題歌を手がけるなど、この手の作品が好きな人には好まれる面子が揃っているといえるでしょう。「千年女優」は当ブログでもレビュー済みです。そんな濃密な面子によって製作された本作ですが、過度にマニア向けだったというのが妥当な評価でだと思います。映像表現の技術的な面には見るべきものがあるのかもしれませんが、普通の人が普通に見てエンタメとして楽しめるような映像表現にはなっておりません。さらに、物語という点に目を向けると全体的に稚拙な部分が多く、まるで自意識過剰な学生が急ピッチで撮影しましたとでもいうようなちぐはぐ感が目立っておりました。2. あらすじ主人公、千葉敦子(ちば あつこ)はサイコセラピストとして働いている。「DCミニ」という装置を使って患者の夢の中に入り、精神治療を行うことが彼女の仕事だ。そんなある日、「DCミニ」の開発元であり敦子の勤め先でもある精神医療総合研究所から「DCミニ」が盗まれてしまう。当初、犯...
響け!ユーフォニアム

「響け! ユーフォニアム ~誓いのフィナーレ~」石原立也 評価:3点|スポ根要素と人間関係要素の両輪が魅力の青春吹奏楽アニメシリーズ続編映画【アニメ映画】

同名の小説を原作とするアニメシリーズの第3期に相当する部分ですが、TVシリーズとしてではなくアニメ映画として公開されました。原作の著者は武田綾乃さん。アニメ版は京都アニメーションが手掛けています。原作はともかくアニメ版は私もファンでありまして、本ブログでも継続して取り上げている作品の一つです。アニメ版の第1期、第2期のレビュー及び原作小説のレビューは以下の通りです。序盤~中盤にかけての部活人間関係&スポ根の在り方という本作の原点にまつわる展開の良さに敬意を表しつつも、2冊分の小説を1つの映画に纏めているからか、終盤を中心に粗雑さや異様な駆け足感もあってやや「濃密さ」の不足を感ましたので、評価は3点(全体のレベルが一定以上、なおかつ胸を揺さぶる要素が一つ以上ある佳作)といたしました。お勧めできる作品ではあります。面白かった前半部、イマイチだった後半部に分けて感想を述べていきます。【前半部】あらすじ悲願の全国大会出場を果たした北宇治高校吹奏楽部だったが、全国大会での評価は最低ランクである銅賞。悔しさを噛みしめながらもさらなる躍進を胸に秘める部員たち。しかし、3年生が引退したいま、目下の課題...
☆☆(映画/アニメ)

アニメ 「プラネテス」 監督:谷口悟朗 星2つ

1. プラネテス幸村誠さん原作の漫画をサンライズがアニメ化した作品。サンライズといえば「ガンダム」シリーズが有名ですが、同じ宇宙を舞台にしていても激しいロボットバトルではなく、リアル志向のお仕事アニメになっています。幸村さんは現在連載中の「ヴィンランド・サガ」で有名ですが、その硬派な作風はこの「プラネテス」にも表れています。監督の谷口悟朗さんは「コードギアス 反逆のルルーシュ」が代表作として知られているのではないでしょうか。コードギアスのようなぶっ飛びエンターテイメントから本作のような堅いヒューマンドラマまで作風の広さが伺えます。感想としては、なにもかも「普通」で、捻りがなさすぎるのではないかと思いました。2003~2004年にかけて放送された作品なので、当時としても凡庸だったのではないかと感じます。「ハルヒ」以前ではありますが、「エヴァ」以降ではあり、ただ分かりやすいだけのストーリーが受け入れられる環境は過去のものになっていたはずです。人が抱える割り切れなさ、単純ではない社会を、それに相応しい手法で描かなければならない、という前提に立つ段階まで日本アニメの脚本レベルは求められていたは...
ボヘミアン・ラプソディ

「ボヘミアン・ラプソディ」ブライアン・シンガー 評価:3点|「クイーン」のボーカル、フレディ・マーキュリーの情熱と悲愴を描いた伝記映画【海外映画】

1970~1980年代に活躍したロックバンド、「クイーン」のボーカルだったフレディ・マーキュリーの生涯を描いた伝記映画。現在も日本全国で公開中ですが、既に2018年を代表する大ヒット映画と呼べるほどの興行収入を挙げている作品です。公開後にSNSで大きく話題になったことから、公開から日を重ねるごとに観客が増えていくという現象が起きているらしく、まさに二十一世紀型の大ヒットだと言えるのではないでしょうか。平成最後の年だから思うのかもしれませんが、インターネット隆盛時代だからこそのヒットコンテンツなのかもしれません。というのも、本作はストーリーよりもライブシーンに強く惹かれるタイプの作品であり、まさに「臨場感」が売りの作品だといえるからです。消費が「モノ」から「コト」に移っているとも評される今日ですが、実際、音楽業界でもCDの売り上げが落ちならがらもライブの売り上げが伸びているようです。伝統的な祭りが衰退し、日常でも空気感による抑制で羽目を外しづらくなったいま、「集まって騒ぐ」という機会が希少価値として高まっているのかもしれませんね。個人的にもライブシーンには感じるものがありましたが、やはり...
ペンギン・ハイウェイ

【真夏のファンタジィ冒険譚】映画「ペンギン・ハイウェイ」石田祐康 評価:1点【アニメ映画】

人気小説家である森見登美彦さんの同名小説を映画化した作品。「台風のノルダ」(文化庁メディア芸術祭アニメーション部門新人賞受賞、2016年地上波放送)や「陽なたのアオシグレ」(第17回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門審査委員会推薦作品)で頭角を現してきた新進気鋭の石田祐康氏が監督を務めています。制作も2011年設立のスタジオコロリドが手がけるなど、インディーズ色の濃い布陣。こういった映画が大手から配給され、上映館数もそれなりに確保できるのは近年のアニメ映画ブームによるところが大きいのでしょう。そんな本作、全体的な感想としてはイマイチだったというのが正直なところです。とはいえ、そもそもジブリや人気版権もの(ポケモン、ドラえもん、コナン、クレしん、アンパンマン)ではないアニメ映画なんてこんなものである、といったところでしょうか。あらすじアオヤマ君は非常に研究熱心な小学4年生。気になったことは何でもノートに書き留め、観察と探求を怠らない。そんなアオヤマ君にも気になる人がいて、それは同級生のハマモトさん、ではなく、近所の歯科医院に勤める「お姉さん」。歯科医院に通うアオヤマくんとの仲は、喫茶...
響け!ユーフォニアム

アニメ 「響け!ユーフォニアム2」 監督:石原立也 後編(第6話~最終話) 星2つ

1.響け!ユーフォニアム2 後編(第6話~最終話)近年のアニメの中では稀に見る傑物だった「響け!ユーフォニアム」シリーズ。第2期にあたる「響け!ユーフォニアム2」の感想、前編、中編に続く後編です。前半部分とは対照的に、第2期はこの第6話以降の後半部分が非常に(粗末とまでは言わないが)凡庸な内容で、総評としてはイマイチというのが率直な感想です。響け!ユーフォニアム2 7巻 posted with カエレバ黒沢ともよ ポニーキャニオン 2017-06-21Amazon楽天市場
響け!ユーフォニアム

アニメ 「響け!ユーフォニアム2」 監督:石原立也 中編(第5話) 星5つ

1.響け!ユーフォニアム2 中編(第5話)高校吹奏楽アニメ「響けユーフォニアム2」の感想、前編に続き中編です。といっても第5話だけを取り上げるのですが、関西大会本番での演奏を描いたこの話は前後の「吹奏楽部の猛練習と繊細な人間関係という日常」とは別の角度からも語るべき題材で、前編の内容と混ぜるのは良くないと思い分けました。近年のアニメシーンの中でも傑出したいわゆる「神回」と形容すべき話で、これ以降TV放映の30分アニメを作成するにあたっては必ず参照されるべき作品に「響け!ユーフォニアム」を押し上げた話だといえるでしょう。2. あらすじ関西大会まであと1日と迫った北宇治高校吹奏楽部。夏休み中に指導にあたった橋本真博(はしもと まさひろ)と新山聡美(にいやま さとみ)の退任が発表されるとともに練習は終わり、ついに本番を迎える。本番当日、副部長である田中あすかが大会にかける思いを部員の前で話し、部長である小笠原晴香(おがさわら はるか)の掛け声で気合を入れる部員一同。舞台裏でも、思い思いの方法で演奏へと精神を昂らせてゆく。そしてついに、北宇治高校の演奏順が訪れる。顧問である滝昇(たき のぼる)...
響け!ユーフォニアム

「響け!ユーフォニアム2」石原立也 評価:4点|せつなく激しい人間関係が交錯する、波乱万丈の吹奏楽スポ根 前編(第1話~第4話)【青春アニメ】

高校の吹奏楽部を舞台にした青春部活物語。大学生で作家デビューを果たした武田綾乃さんの原作を、深夜アニメ界隈では大きなブランド力を持つ京都アニメーションがアニメ化した作品です。第1期の出来が素晴らしかったため、個人的にも非常に期待していた第2期でした。第1期の感想はこちら。この第2期は、正直なところ第1期よりは良いとは言えず、終盤の失速は残念でした。しかし、それでも並大抵のアニメよりは十分に良いと言える作品だったことは間違いありません。深夜アニメ的すぎる要素を排して更なる工夫を加えれば、午後7時前後やゴールデンの時間帯に流しても評価を得られるような、そのれくらいのポテンシャルがあると感じる作品です。あらすじ主人公、黄前久美子(おうまえ くみこ)は京都府立北宇治高校に通う高校一年生。同じ中学校からの進学者が少ないというだけの理由で北宇治高校進学を決めた久美子は、中学校で所属していた吹奏楽部に引き続き入部する気もなく、また、入学時に聴いた吹奏楽部の演奏は酷いもので、当初は北宇治高校の吹奏楽部そのものに良い印象を抱いていなかった。しかし、同級生である川島緑輝(かわしま さふぁいあ)や加藤葉月(...
響け!ユーフォニアム

アニメ映画 「リズと青い鳥」 監督: 山田尚子 星2つ

1. リズと青い鳥高校の吹奏楽部をテーマにしたアニメ/小説作品、「響け!ユーフォニアム」の映画になります。アニメ版及び小説版の感想はこちら。本映画はストーリー本編ではなくスピンオフ的な扱いとなっており、脇役の二人、傘木希美(かさき のぞみ)と鎧塚みぞれ(よろいづか みぞれ)の関係にスポットを当てた作品になっております。タイトルから「響け!ユーフォニアム」を消しているあたり、独立した作品としても見て欲しいという思いが制作サイドにはあるのかもしれません。とはいえ、内容的には「響け!ユーフォニアム」のことをかなりの程度知っていなければならないものでしたし、それどころか、本編で見られたようなアニメーション的な良さが消え失せ、ただ観念的なだけのマニア受けを狙った邦画のようになってしまっており、残念でした。リズと青い鳥posted with カエレバ種﨑敦美 ポニーキャニオン 2018-12-05Amazon楽天市場 
僕らのウォーゲーム

「ぼくらのウォーゲーム!」細田守 評価:3点|情熱と技巧と夏の切なさが詰め込まれたデジモン映画の佳作【アニメ映画】

人気シリーズ「デジモンアドベンチャー」の映画2作目。いまでは著名となった細田監督が指揮した作品です。アニメファンからの高評価を聞いて試聴してみましたが、40分と短い中で冒険アニメの良さを存分に引き出した作品だと感じました。あらすじデジモンたちと別れ、それぞれの生活を楽しむ太一たち。しかし、西暦2000年の春休み、ネット上で生まれた新種デジモンがまたたく間に進化。NTTからアメリカの軍事機関まで、ありとあらゆる場所を侵食していった。このデジモンの暴走を止めるため、パートナーのデジモンたちと一緒に再び戦いへと身を投じる太一たち。あまりにも凶悪なデジモンとの戦いは熾烈を極め、そしてついに、謎の新種ポケモンは核ミサイルを発射させてしまう。ミサイルが着弾されるまでの時間は10分間。太一たちは世界を救うことはできるのだろうか......。感想非常に巧妙で感動的な映画でした。「大量に送られてくる応援の名を借りた迷惑メール」を最後に武器として活かす展開は意外性がありながら少年向けアニメの王道でもあって胸を打たれます。また、空と太一の関係性も絶妙。アニメの趣旨を理解した、恋愛をバトルに持ち込ませないよう...
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