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「響け!ユーフォニアム」石原立也 評価:4点|せつなく激しい人間関係が交錯する、波乱万丈の吹奏楽スポ根一筋縄ではいかない人間関係が交錯する波乱万丈の吹奏楽スポ根【青春アニメ】

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響け!ユーフォニアム
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2015年に放送された、高校の吹奏楽部を舞台にしたアニメーション作品。

「涼宮ハルヒの憂鬱」や「けいおん!」を手掛け、深夜アニメ界隈では評価の高い京都アニメーションの制作です。

原作は武田綾乃さんが著した同名小説であり、ライト文芸が全盛の文芸界ではありますが、どちらかというと昔ながらのジュブナイル青春小説という装いの作品です。

「吹奏楽」がテーマなので、音声を入れられる映像表現でさらに磨きをかけられると思ったのかもしれませんが、ライトノベルでもライト文芸でもない原作で勝負をかけてくるところに、京都アニメーションが他のアニメ制作スタジオと一線を画そうとしている気概を感じます.

そんな本作ですが、近年の深夜アニメでは稀にみる出色の作品であると感じました。

昔ながらの「スポ根」的な要素を上手く現代に蘇らせた作品であり、なおかつ、人間関係を主軸としたヒューマンドラマを魅力的に描けている作品でもあります。

時おり挟まる過度な、いわゆる「百合」描写を除けば、そのまま午後6~7時台で放送されていてもおかしくないような、そんな王道青春部活物語になっております。

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あらすじ

舞台は京都府宇治市、主人公は高校の新入生である黄前久美子(おうまえ くみこ)。

小学四年生のときにユーフォニアムの演奏を始め、中学校でも吹奏楽部に所属していたものの、最後の大会での出来事が胸に引っかかっていて、高校では吹奏楽部に入るつもりはない。

入学した高校も、同じ中学校からの入学者が例年少ないからという理由で選んだ京都府立北宇治高校。

高校吹奏楽の世界においては、全国大会への出場経験はあるものの、いまや見る影もない落日の古豪である。

しかし、級友たちの強引な誘いを断れず、久美子は吹奏楽部に入部することになる。

全体として士気が低く、練習への熱意にも温度差がある吹奏楽部ではあったが、辣腕の音楽教師、滝昇(たき のぼる)が顧問に就任したことで、部の雰囲気は少しずつ変わっていく。

ところが、コンクールに向けてレギュラーの演奏メンバーが選ばれる段になり、吹奏楽部には嫌な緊張感が漂い始める。

これまでは上級生が優先して選ばれていたという事情があるのだが、実力主義を前面に押し出す滝はユーフォニアムのメンバー選考で二年生の中川夏紀(なかがわ なつき)を落として一年生の久美子を選ぶなど、上級生に対する温情を一切見せることがない。

そういった選考の中でも特に吹奏楽部を動揺させたのは、トランペットのソロ演奏者に、三年生であり精神的にも部の中核である中世古香織(なかせこ かおり)ではなく、一年生の高坂麗奈(こうさか れいな)が選ばれたことだった。

久美子と同じ中学校出身の麗奈は、彼女の父親と滝の父親とが親交深く、北宇治高校にも滝が赴任するという事前情報を得て入学したという異色の存在であった。

そんな麗奈を滝が選んだことに、部員の間ではえこひいきがあったのではないかという疑惑が生まれる。

そんな中、個人的にもソロ演奏者を諦められない香織は、滝に再度のオーディションを願い出るのだが......。

感想

弱小高校が偶然に良い指導者と2、3人の才覚ある選手を得て、そこに圧倒的な努力を加えて全国への道を駆け上がる、という昔ながらの王道熱血部活物語。

それでいて、単なる王道に留まらない構成の力と、ありそうでなかった「弱さの理由」が面白いと思わせる作品です。

構成において、この作品は起承転結が非常に明快でスムーズに流れていくという面において非常に高く評価できると考えます。

「起」は久美子と麗奈が北宇治高校に入学して吹奏楽に入部する場面であり、「承」は吹奏楽の雰囲気が変化していく場面、そして「転」が選考・オーディション、「結」はコンクールでの演奏にあたるのですが、無駄が少なく、常にテンポ良く、それでいてそれぞれの場面に面白い要素が詰め込まれ、視聴者を楽しませてくれます。

まず「起」ですが、本作のような「弱小公立校が全国大会への道を駆け上がる」物語においては、弱小高校に実力者が入学する理由の合理性がリアリティの観点から問われます。

傑出した実力を持った生徒は中学生時代から注目を集め、潤沢な資金と設備がある強豪私立高校が攫っていってしまうのが現実であり、また、それほどではなくとも、ある程度の能力がある生徒は公立の中でも比較的芽がありそうな高校に入ろうとするものです。

この生々しい現実の様相を無視してしまっては全てがご都合主義的展開となってしまい、努力の描写さえしらけたものに見えてしまうでしょう。

本作はその点において抜かりなく、冒頭にある「事件」を用意して舞台環境を整えます。

それは、久美子と麗奈の所属する中学校の吹奏楽部が、府大会で惜しくも関西大会進出を逃すという事件です。

「くやしい、くやしくて死にそう」

金賞ではあるが上位大会には進めない「ダメ金」という結果に多くの部員は身の丈以上の結果だと喜びますが、高坂麗奈だけはそう言いながら涙を流していました。

「本気で全国いけると思ってたの?」

そのとき、久美子の口から咄嗟に出てしまった言葉がこれなのですが、この言葉こそが部員たちの本音を代弁しています。

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