第3位 「日本社会のしくみ」小熊英二
日本の独特な雇用慣行がどのようにして生まれたのかを歴史的経緯という観点から説明した新書になっております。
「日本社会のしくみ」というタイトルがついているのは、雇用慣行こそが社会の様々な面を規定しているという著者の分析から来ているとのこと。
日本社会の雇用を「大企業型」「地元型」「残余型」に分類し、特に「大企業型」の特徴について詳しく分析しつつ、そこからはみ出した雇用形態として「地元型」と「残余型」が分析されています。
日本の「大企業」における雇用といえば、終身雇用と年功序列賃金制に代表される職能型の昇進体系が特異な点として挙げられることが多いと思います。
本書において、著者である小熊教授は明治時代から始まった官庁採用にその起源を見出し、軍国主義時代を経て戦後の大企業にその雇用形態が広がっていく様子を描き出しています。
全体的に分析が「広く浅く」になってしまっている感のある著作ですが、語り口も読みやすく、事例の紹介等も豊富で、「雇用形態」についての学術的議論の入口としてお薦めできる新書になっております。
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