☆☆☆☆(漫画)

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H2(エイチツー)

「H2(エイチツー)」あだち充 評価:4点|2人ずつのヒーローとヒロインが織り成す野球と恋愛の青春物語【野球漫画】

1990年代に「週刊少年サンデー」で連載されていた野球漫画です。あだち充さんの作品であればアニメが人気を博した「タッチ」が有名ですが、ファンの間では本作の方が評価が高いのではないでしょうか。あだち充さんの最高傑作として挙げられることも少なくない作品かと思います。とある偶然から強力なバッテリーを擁することになった弱小公立校が夏の甲子園決勝にまで駒を進めるまでの軌跡を描くという野球漫画としての側面と、主人公とライバルという二人のヒーロー及びその二人に想いを寄せたり寄せなかったりする二人のヒロインとの恋物語という側面があり、いずれも魅力的に描かれております。(タイトルである「H2」は二人のヒーローと二人のヒロインという意味から取っているそうです)敢えて多くを語らず「間」で表現するあだち充さん独特の手法が輝いている作品であり、ヒューマンドラマとして感動できる名作です。あらすじ舞台となるのは東京の下町にある千川高校。野球部すら存在しないこの高校に、中学野球で地区大会二連覇を果たしたバッテリーが入学することになった。投手の名前は国見くにみ比呂ひろ。150km/hを超えるストレートに加え、140km...
ヒカルの碁

「ヒカルの碁」ほったゆみ・小畑健 評価:4点|最強棋士を巡るサスペンスと囲碁を通じて成長する少年の青春物語【囲碁漫画】

「週刊少年ジャンプ」に1999年から2003年まで連載され、世界的に大ヒットした空前絶後の「囲碁漫画」です。全世界で数千万部を売り上げたほか、本作をきっかけに囲碁を始めた人物がプロ棋士(関達也氏)になるなど囲碁界に与えた影響も大きかった作品。「ヒカルの碁を最終巻まで夢中になって読んだが、最後まで囲碁のルールは分からなかった」そんな感想がインターネット上でも見られるように、本作は囲碁が持つ駆け引きの醍醐味や戦略性よりを主眼とした作品ではありません。それよりも、囲碁界を舞台に、主人公である進藤ヒカルの成長や周囲の人物たちが繰り広げる人間ドラマ、そして、ヒカル以外には姿が見えない最強棋士、藤原佐為が囲碁界にもたらす激震と、正体が分からない最強棋士を巡るサスペンス的な展開に面白味がある漫画となっております。平安時代に活躍した史上最強棋士の幽霊が現代の平凡な少年に乗り移り、その少年はときに囲碁初心者として、ときに最強棋士の代役として囲碁を打つ。それによって、少年は異形のミステリアスな存在として囲碁界に認知され、様々なドラマが生まれるきっかけとなる。一方、本人は囲碁の魅力に目覚め始めることで腕白坊...
ルックバック

「ルックバック」 藤本タツキ 評価:4点|二人の創作者が歩んだ青春の記録、創作が持つ異形の力を添えて【短編漫画】

「チェーンソーマン」の大ヒットによって一躍名を馳せた漫画家、藤本タツキさんによる約140ページの短編漫画です。集英社が運営するweb漫画サイト「少年ジャンプ+」に掲載されるとたちまちSNSで大反響を巻き起こし、「このマンガがすごい!2022」においてはオトコ編で1位を獲得するなど、短編漫画ながら飛ぶ鳥を落とす勢いのヒットとなった作品。書店で単行本を手に取ったときも、その薄さと本体価格440円という安さに驚いたもので、いわゆる「読切」がここまでのセンセーションを巻き起こしたのかと思うと感慨深いものがありました。しかもその内容が、あまり「ジャンプ」らしくないヒューマンドラマとなっているのも注目するべき点でしょう。お調子者でギャグ漫画が得意な藤本と、不登校で背景画の天才である京本。二人の劇的な出会いと別れ、夢を追うこと、友情の価値、そして「創作」という生業が持つ凄まじい力。それらのテーマが、とても温かく、それでいて物悲しく描かれている傑作漫画です。あらすじお調子者の小学四年生、藤野歩が最近嵌っていることといえば、学年新聞に自分の描いた四コマ漫画を連載すること。小学四年生にしては上手い絵と、や...
GUNSLINGER GIRL

「GUNSLINGER GIRL 第1巻」相田裕 評価:4点|もしも誰かを好きで好きでしょうがなくなって、それでも永遠に満たされないとわかってしまったら【社会派サスペンス漫画】

本ブログで一度紹介した作品ですが、あまりにも感動が深いので単巻ごとのレビューを書いていきたいと思います。全体のレビューはこちらテロリズムの脅威に揺れるイタリアで、政府側の対テロ組織に所属する訳あり元軍人・元警察官、そして、彼らとペアを組むことになる、身体改造手術を施されて「義体」となった少女たちの物語。息の詰まるような葛藤の連続、その果てにある悲壮な感動。そんな本作の魅力がいきなり炸裂する第1巻のレビューです。あらすじ舞台は超近未来のイタリア。貧しい南部と豊かな北部という、イタリアが伝統的に抱える格差問題を巡る政争は熾烈を極め、北部独立派によるテロが横行する事態となっている。豊かな北部から搾取された税金が、怠惰な南部人を食わせるための公共事業や補助金に投下されている。そんな主張には北部人の多くが同調しており、テロリスト側の勢いは止まるところを知らない。そんな折、テロとの戦いに勝利して統一を維持したい中道左派政権は「社会福祉公社」という機関を創立する。表向きは身体に障がいを抱える子供を支援するための福祉組織だが、実態は、身寄りがなく命が助かる見込みもない子供の身体に特別な手術と洗脳を施し...
GUNSLINGER GIRL

「GUNSLINGER GIRL」相田裕 評価:4点|テロリストとの闘いに身を投じるのは「義体」を与えられた少女たち【社会派サスペンス漫画】

2002年から2012年まで「月刊コミック電撃大王」に連載されていた作品。「電撃大王」といえば所謂オタク向けの「萌え」漫画を中心とした雑誌ですが、その中にあって異彩を放っていたのがこの作品。現代イタリアが抱える「南北問題」という政治問題を嚆矢に、北部イタリアの分離独立派テロ組織と政府が創設した対テロ組織である「社会福祉公社」との戦いを描いた硬派な作品となっております。しかし、本作の特色はそういった欧州の政治問題を背景にしたサスペンスという側面ばかりではありません。「社会福祉公社」に所属するのは様々な機関から集められた訳ありの元軍人や元警察官たち。そして、そういった「大人」たちとペアを組むのは、瀕死の状態だったところに身体改造と精神洗脳を施され、テロリストと戦うために蘇った「少女」たちである、という点が他にはないオリジナリティを醸し出しています。社会問題を巡って政治家や軍人、メディア、市井の人々が織りなす政治活劇というマクロな枠組みと、テロとの戦いの中で明かされていく「社会福祉公社」組織員が辿った苦節の人生、「義体」となった少女たちの愛憎劇というミクロな枠組みの双方に魅力のある、他に類を...
ヨコハマ買い出し紀行

「ヨコハマ買い出し紀行」芦奈野ひとし 評価:4点|滅びゆく世界が生み出す静かな感動【近未来日常系漫画】

1994年から2006年まで「月刊アフタヌーン」に連載されていた漫画であり、敢えてジャンル分けするならば「近未来日常系」とでも呼べる作品です。誰もが知っているような有名作ではないかもしれませんが、2007年の第37回星雲賞コミック部門を受賞するなど、SFとしての評価も界隈では高い漫画となっており、隠れた実力派という位置づけが適切でしょう。文明が後退した世界を長閑に生きる人々の、少し不思議でなぜだかとても感動的な日常に打ちのめされること間違いなしの傑作です。あらすじ海面上昇に伴って現在の沿海部が水の底に沈み、文明が後退してしまった日本が舞台。女性型ロボットである初瀬野アルファ(はつせの あるふぁ)は三浦半島の「西の岬」で「カフェ・アルファ」を経営している。といっても、一日に2,3人お客さんが来ればよいほうの暇なお店で、アルファはとても長閑に日常を暮らしていた。近所に住む「おじさん」や、その孫である「タカヒロ」と交流したり、ヨコハマへ買い出しに出かけたり、少し長めの旅に出たりする中で、アルファは様々な人々との出会いと別れを経験する。よもや人類には滅亡の運命しか残されていない「夕凪の時代」に...
ハチミツとクローバー

【ハチミツとクローバー】甘くて切ない「夢」と「片想い」の青春恋愛漫画 評価:4点【羽海野チカ】

1. ハチミツとクローバー2000年代前半に一斉を風靡した少女漫画。著者は羽海野チカさんで、現在は白泉社の月間漫画雑誌「ヤングアニマル」で青春将棋漫画「3月のライオン」を連載されています。10巻完結ながら累計発行部数は800万部に達し、アニメ化と実写映画化も果たしているなど、名実ともに堂々たる人気作品である本作。2度の掲載紙休刊を乗り越えて連載が続いた作品でもあり、マイナーな掲載紙出身ながら大ヒット作にまでのし上がった経緯にもドラマを感じさせます。そんな本作を今更ながら読了したのですが、評判や販売実績に値するような、素晴らしい感動作でした。多様な登場人物たちの恋模様と夢の探求、もがき続ける中で生まれる葛藤が濃密に描かれており、とにかく一話一話の盛り上がり度合いが著しく高い作品です。中だるみや「捨て回」のような話が存在せず、まさに人生のハイライトを駆け抜けているような、甘くて苦い青春のひとときを自分自身が経験したかのように錯覚させられる名作です。2. あらすじ物語の主な舞台は浜田山美術大学。東京に存在する私立大学で、通称は「浜美」。大学近くにある木造で水回り共用の下宿には、竹本祐太(タケ...
あずまんが大王

漫画 「あずまんが大王」 あずまきよひこ 星4つ

1. あずまんが大王「よつばと!」で有名なあずまきよひこさんの出世作。女子高生たちを主人公にした4コマギャグ漫画、というジャンルは1999年の連載開始当初において斬新であり、現在の日常系4コマの基礎となっている作品だといえるでしょう。とはいえ、近年の粗製乱造な漫画群とは違います。主に男性読者に媚びた「萌え」に走りがちな漫画や、「メタ」「パロディ」でニッチな笑いばかりを狙いにいく漫画とは一線を画し、ギャグはいたって王道。むしろ、「よつばと!」に通じる普遍的な笑いと感動がある作品です。あずまんが大王 (1) (Dengeki comics EX)posted with ヨメレバあずま きよひこ メディアワークス 2000-02AmazonKindle楽天ブックス
☆☆☆☆(漫画)

漫画 「1518! イチゴーイチハチ!」 第2巻 相田裕 星4つ

1. 1518! イチゴーイチハチ! 第2巻高校生たちのささやかな青春をきめ細かいタッチで描く名作(予定)漫画、「1518!」の第2巻です。第1巻の感想はこちら。登場人物紹介兼プロローグだった第1巻に対し、第2巻では怪我により野球を諦めた少年、烏谷公志郎の心の再生にスポットが当たっています。折り合いをつけるということ、目の前のことを楽しむということ、自分との戦いを意識すること。決して説教臭くなく、むしろ一貫したエンターテイメント性に支えられた作品ながら、通底するメッセージが深く切なく染みわたります。1518! イチゴーイチハチ! 2 (ビッグコミックス)posted with ヨメレバ相田 裕 小学館 2015-11-30AmazonKindle楽天ブックス楽天kobo
☆☆☆☆(漫画)

漫画 「1518! イチゴーイチハチ!」 第1巻 相田裕 星4つ

1. 1518! イチゴーイチハチ! 第1巻前作「GUNSLINGER GIRL(ガンスリンガーガール)」によりニッチな漫画界隈で有名になった相田裕さん。イタリアの対テロ秘密結社が舞台だった前作とうって変わって、現在連載中の本作は日本の高校を舞台にした青春ものです。突飛で唐突な物語ばかりが溢れた現代漫画界の中で、繊細かつ丁寧に高校生活を描く稀有な作品となっており、私が新刊を追っている数少ない漫画の一つです。通底するテーマの深さは文学的で普遍的と言えるにも関わらず、エンターテイメントとしても一級品。是非、メジャーになって欲しい作品です。イチゴーイチハチ!(1) (ビッグ コミックス〔スピリッツ〕) (ビッグコミックス)posted with ヨメレバ相田 裕 小学館 2015-03-30AmazonKindle楽天ブックス楽天kobo
☆☆☆☆(漫画)

漫画 「トーマの心臓」 萩尾望都 星4つ

1. トーマの心臓少女漫画界の伝説的至宝で、ついに紫綬褒章まで受賞してしまった萩尾望都さん初期の傑作です。愛と信仰という重いテーマを鮮やかに描き切った、まさに「文学」と呼べる漫画といえるでしょう。
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