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「ヒカルの碁」ほったゆみ・小畑健 評価:4点|最強棋士を巡るサスペンスと囲碁を通じて成長する少年の青春物語【囲碁漫画】

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ヒカルの碁
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ヒカル以外の立場から見た佐為/saiという存在の特異さ、その圧倒的実力と匿名性が生むミステリあるいはサスペンス調の展開、動揺と混乱。

この様相が、どこか単調になりがちな単純な少年の成長譚(敗北→悔しい→努力→勝利の繰り返し)物語に絶妙な捻りを加えていて、ヒカルが荒波に揉まれながら成長していく物語であるという基本線に加えて、佐為代行のヒカルが囲碁界に波紋を投げかけるという逆転の物語線が同時に起こることで、物語全体を良い意味で複雑かつ深みのある質感に仕上げています。

そしてまた、佐為の代行として囲碁界に波紋を投げかけたヒカルが、佐為という存在に対してあまりにも真剣になる囲碁界の面々の迫力を感じ取り、囲碁という競技が持つ熱量を感じるという、主人公→佐為→囲碁界→主人公というフィードバック構造があることで二つの物語線がインタラクティブに繋がっていることも感動を濃密にしており高評価です。

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それでも最後の展開は……

このように褒める点だらけの名作ではあるのですが、やはり批判の多い最終盤の展開にはそれ相応の言及をしておかなければならないでしょう。

単行本では全23巻の本作ですが、第15巻で中核的な登場人物であった藤原佐為が失踪し、ヒカルが佐為を探す旅に出るという非常に劇的な展開を迎えます。

その後、16巻の最後で伊角と対局したヒカルは佐為の消失を心理的に受け入れ、再び囲碁の世界に飛び込むのですが、ここまでで「佐為編」となって第一部完となり、番外編を挟んで「北斗杯編」が始まるのです。

この「北斗杯編」が非常に賛否の分かれる部分となっており、本作は「北斗杯編」の最後でヒカルが韓国人棋士に敗北して物語全体が終わるという形をとっています。

もちろん、「北斗杯編」は単独で読めばその面白さにおいて凡百な漫画を十分に超えています。

これまでは東京の日本棋院を中心に動いていた物語の範囲が一気に日本全体及び世界にまで広がり、ヒカルとアキラの新ライバルとして奇手を放つ関西の有望株が登場したり、日中韓若手対抗戦である北斗杯の中国及び韓国側代表として秀麗な実力派の若手が現れてヒカルとアキラの前に立ちはだかったりします。

もし、「ヒカルの碁」が50巻近くまで続いて、「北斗杯編」が中盤の1エピソードだったのであればむしろ高評価一辺倒だったかもしれません。

しかし、現実には、「ヒカルの碁」はこの「北斗杯編」で終わるのです。

本作において、ヒカルのライバルは塔矢アキラであり、ヒカルの師匠であり超越すべき存在は藤原佐為以外にありません。

ライバルを倒し、師匠を超えて、「神の一手」を指せる棋士になること。

これが「ヒカルの碁」における主人公、進藤ヒカルの最終目標であることは第1巻の時点から読者との暗黙の合意だったはずです。

ところが、本作はその原点への明確な回帰が行われず、最終戦は対塔矢アキラでも対藤原佐為でもなく、第二部から出てきた外国人選手相手となってしまいます。

これでは、積み重ねてきた展開への愛着が十全に活かされたとは言えない終幕になっていることは確かでしょう。

やはり、読者側にも登場人物やこれまでの展開に対する思い入れがあります。

「北斗杯編」がそれ単独で見た場合にどれほど良い物語であったとしても、物語のクライマックスという特別な部分を飾るには力不足であり、起承転結がある物語の「結」として相応しいものではなかったと言わざるを得ません。

ヒカルの北斗杯における敗北は、それでも可能な限りでの美しさで描かれているとは思うものの、ヒカルがこれまで積み重ねてきたもの、あるいは、そんなヒカルを支えてきた人々全ての想いが結集した最終戦というわけではなく、あくまでヒカルが今後飛躍していくための布石の一つなのだという演出になっています。

ヒカルの碁が打ちきりだったのか、そうではなかったのか、未だに論争がある点ですが、打ち切りに見える幕切れだったのは確かであり、難ずるべき点です。

結論

挙げればきりがないほど美点だらけの作品であり、夢中になって読んだのは確かである一方、それだけに終盤の惜しさが目立つ作品でもあります。

評価としては是非5点(人生で何度も読み返したくなる名作中の名作)を付けたいという熱情がある一方で、それだと終盤の展開も含めて完璧だと判断したかのようになるため、断腸の想いで4点(概ねどの要素をとっても魅力的な、名作・名著に値する作品)としましょう。

それでも、極めて素晴らしい感動作であることは確かです。

是非、お薦めしたい作品になります。

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