本ブログで紹介した社会学系の書籍からベスト4を選んで掲載しています。
私の好みもあり、「社会経済学」的な本が中心となっております。
第4位 「日本社会のしくみ」小熊英二
日本の独特な雇用慣行がどのようにして生まれたのかを歴史的経緯という観点から説明した新書になっております。
「日本社会のしくみ」というタイトルがついているのは、雇用慣行こそが社会の様々な面を規定しているという著者の分析から来ているとのこと。
日本社会の雇用を「大企業型」「地元型」「残余型」に分類し、特に「大企業型」の特徴について詳しく分析しつつ、そこからはみ出した雇用形態として「地元型」と「残余型」が分析されています。
日本の「大企業」における雇用といえば、終身雇用と年功序列賃金制に代表される職能型の昇進体系が特異な点として挙げられることが多いと思います。
本書において、著者である小熊教授は明治時代から始まった官庁採用にその起源を見出し、軍国主義時代を経て戦後の大企業にその雇用形態が広がっていく様子を描き出しています。
全体的に分析が「広く浅く」になってしまっている感のある著作ですが、語り口も読みやすく、事例の紹介等も豊富で、「雇用形態」についての学術的議論の入口としてお薦めできる新書になっております。
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第3位 「コラプション なぜ汚職は起こるのか」レイ・フィスマン
経済学者であるフィスマン教授と政治学者であるゴールデン教授が「汚職」について共同で著した本になっております。
「汚職」の発生を一種の均衡として捉え、元々「汚職」の少ない地域では「汚職」が起こりずらく、「汚職」の多い地域ではますます「汚職」蔓延るインセンティブが存在するという前提を下地に、低汚職国と高汚職国の特徴や、「汚職」の高低を左右する条件などが明らかにされていきます。
経済的に豊かではない国でも低汚職国と高汚職国に別れるのだという指摘や、政治制度はあまり汚職の蔓延と相関関係がないという分析、高汚職から低汚職に移行するためにはどのような社会的条件が必要なのかといった点が興味深く、珍しい題材だけに「汚職」に関しては鉄板の一冊なのではないかと思います。
「汚職」というテーマに興味がある方は是非、手に取って頂きたい書籍です。
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第2位 「ブルシット・ジョブ」デヴィッド・グレーバー
無意味な書類仕事や会議、イントラシステムの欠陥に付随する謎の手作業、はたまた、そういった類の業務を監視する役割を追った管理職。
そんな業務が世の中には大量に存在している、ということは現代を生きる事務職員のコンセンサスなのではないでしょうか。
そんなブルシット・ジョブ(=クソどうでもいい仕事)がなぜ生まれるのかというのが本作のテーマです。
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