第1位 「時をかける少女」細田守
【「タイムリープ」が大切なことを教えてくれた】
・あらすじ
紺野真琴は高校2年生。
男友達の間宮千昭や津田巧介とキャッチボールやカラオケで放課後の時間を潰すような平凡な日々を送っている。
そんなある日、真琴はひょんなことから自身がタイムリープ(過去の自分に戻る)能力を得ていることに気づいてしまう。
タイムリープの能力を駆使して愉快な日常を楽しむようになった真琴だが、ある日、転機が訪れる。
いつものように三人で遊んだ帰り道、真琴は千昭から愛の告白を受けたのだ。
思いがけない事態に動揺した真琴は、告白される運命を変えようと何度もタイムリープを行うものの、千昭は何度でも真琴に告白する。
最後はなんとか告白を回避した真琴だったが、それ以来、千昭のことを避けがちになってしまう。
そんな中、巧介のことが好きだという友人、藤谷果穂(ふじたに かほ)の恋を応援することになる真琴。
タイムリープの能力で二人の仲を接近させようとする真琴だが、試みは全て裏目裏目に出てしまい......。
・短評
頭を空っぽにして観賞していてもワクワクしたり切ない気持ちになるのに、「なぜこれほど感動できるのか」と考え出すと、その巧みな構成と普遍性に驚かされるという、娯楽性と真理性を両立した名作です。
タイムリープの能力を駆使することで日常の不満を解消し、楽しい日々を築いていく序盤の真琴と、「恋」の悩みに直面し、人間の心だけはタイムリープでも容易には動かせないことに戸惑い葛藤する中盤以降の真琴。
その対照的な描かれ方がいい味を出しています。
タイムリープという極端に便利な能力があるからこそ、却って「人の心」の難しさが現実以上に強調される、という構成はまさに非現実要素を入れることができる「フィクション作品」の醍醐味を存分に生かしていると言えるでしょう。
人間の心理的な強さや弱さを濃やかに描きながら、未熟な少女であった真琴がタイムリープによって繰り返される日々を通じて「人との付き合い方」や「他者を慮ること」の真実に気づいていくという成長物語が爽やかに描かれており、そんじょそこらの薄っぺらい青春恋愛作品とは一線を画す深い感動が持ち味の作品となっております。
これからも夏の青春アニメとして定番であり続けるでしょうし、定番というよりもはや古典とも呼べる地位を築いているアニメ映画です。
一生に一度は見て欲しい、できれば思春期に、できれば真夏に見て欲しい作品です。
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