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「響け!ユーフォニアム2」石原立也 評価:4点|せつなく激しい人間関係が交錯する、波乱万丈の吹奏楽スポ根 前編(第1話~第4話)【青春アニメ】

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響け!ユーフォニアム2
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もちろん、そういった育成方法が各選手の才能を伸ばすために最も効率的な手段であるから普及するのでしょうし、厳しい訓練を積んでいる選手個人個人には私も強い敬意を抱いています。

しかし、「早期に選抜されたエリート」であるということ、換言すれば、「エリート養成機関に入れるくらい早期に才能を見出されていたり、エリート養成機関についての情報に触れて、なおかつ入学できるくらい家庭の文化的財力的背景に恵まれている人物」という要素を持っている彼らが、果たして空想の物語の主人公として相応しいと言えるのでしょうか。

悪くはない思いますが、さらなる苦境を課された主人公が「より相応しい」と私は考えております。

上述のような要素は多くの人々にとって当てはまらないものであって、題材となっている競技に普段は興味のない人まで感動させるような普遍性を物語に付与するためには、まずもって競技に関係のない登場人物たちの出自のレベルで共感が必要なわけですから、エリートトラックに乗っている「他人」の物語では広範な支持を獲得するには至らないでしょう。

誰もに愛されるエンタメ性と社会への深い洞察、人生への熱いメッセージの全てを鼎立させる作品たるには、やはり主人公格の人物たちとその所属組織に「庶民感」が必要であると思います。

この点、現実世界の高校野球においては、春の大会に「二十一世紀枠」を設けて進学校や過疎地域の高校を出場させたりしているようで、確かに彼らには「庶民感」があるかもしれませんが、実力をある程度軽視して選抜する方式で全国大会に出場するというのではどうしても盛り上がりに欠けます。

2007年における佐賀北高校の再来、という現象はなかなか起こらないのが現実というわけです。

この点、「響けユーフォニアム!」は京都府立北宇治高等学校という凡庸な公立校が全国大会を目指す物語であり、登場人物とその所属組織の「庶民感」という点では申し分ありません。

それでいて、京都府立北宇治高校が全国レベルの実力を得ていく過程もある程度の説得力を持って描かれており、昭和のスポ根ストーリーの在り方を現代の装いで上手く復活させています。

(この点については、第1期の感想で詳述しています)

「響け!ユーフォニアム」石原立也 評価:4点|せつなく激しい人間関係が交錯する、波乱万丈の吹奏楽スポ根一筋縄ではいかない人間関係が交錯する波乱万丈の吹奏楽スポ根【青春アニメ】
2015年に放送された、高校の吹奏楽部を舞台にしたアニメーション作品。「涼宮ハルヒの憂鬱」や「けいおん!」を手掛け、深夜アニメ界隈では評価の高い京都アニメーションの制作です。原作は武田綾乃さんが著した同名小説であり、ライト文芸が全盛の文芸界ではありますが、どちらかというと昔ながらのジュブナイル青春小説という装いの作品です。「吹奏楽」がテーマなので、音声を入れられる映像表現でさらに磨きをかけられると思ったのかもしれませんが、ライトノベルでもライト文芸でもない原作で勝負をかけてくるところに、京都アニメーションが他のアニメ制作スタジオと一線を画そうとしている気概を感じます.そんな本作ですが、近年の深夜アニメでは稀にみる出色の作品であると感じました。昔ながらの「スポ根」的な要素を上手く現代に蘇らせた作品であり、なおかつ、人間関係を主軸としたヒューマンドラマを魅力的に描けている作品でもあります。時おり挟まる過度な、いわゆる「百合」描写を除けば、そのまま午後6~7時台で放送されていてもおかしくないような、そんな王道青春部活物語になっております。あらすじ舞台は京都府宇治市、主人公は高校の新入生である...

しかし、それでも作者は「平凡な公立校がいきなり全国大会出場」という物語の現実性に不安があったのでしょう。

後述の通り、関西大会では強豪校の一角である秀大付属高校がトラブルによって本来の力を発揮できず、それを北宇治高校が全国大会の切符を掴めた遠因とする演出を物語の中に仕込んでいます。

しょせんはフィクションの物語だからという言い訳に頼ることなく、本作の底流にある「実力主義」のリアリティをこれほど慎重に扱うことで「青春スポ根部活物語」の世界観が壊れないよう努めているところに強く好感が持てます。

さらには、こうした「実力主義」のリアリティを壊さずに公立校の躍進を描いているだけでなく、人間関係の妙が生み出すヒューマンドラマを感動的に描写している点が本作の特徴であることは冒頭にも述べた通り。

公立高校の部活を題材に、「全国を目指す熱血さ」と「人間関係というヒューマンドラマ的要素」を高いレベルで両立している稀有な作品であることが本作の魅力です。

「全国を目指す熱血さ」は私立高校やユース/アカデミーを舞台にすると描きやすいのですが、それでは前述のように主人公への共感が薄くなる設定になってしまいますし、「人間関係」もそのエリート機関に集まった人物同士だけの「上側に偏った」関係になってしまいます。

もちろん、頂上を目指す人物同士の人間関係にも一定の見ごたえがあり、数多くの作品で描かれてきた要素ではありますが、そこでは「強さ」についての会話ばかりが目立ってしまいがちです。

その点、本作は非エリートの高校生らしい、露悪的に言えば低レベルな妬み嫉みが如実に描かれており、この絶妙な「庶民感」が良い塩梅の親近感をもたらして感情移入を誘うのです。

だからこそ、全国大会を目指す情熱も他人事ではなくなるという、素晴らしい構成があります。

「人間関係というヒューマンドラマ的要素」だけに注力しようと思えば、極論を言えば「日常モノ」でも描けるわけですが、この要素と「全国大会を目指す情熱」を両立させようとするのは難しく、考えれば考えるほど本作の希少性には驚かされるばかりです。

さて、ずいぶんと前置きが長くなりましたが、まさに「強い競技集団を目指す熱い物語」と「せつなく激しいヒューマンドラマを描く物語」の両立という意味で、この「響け!ユーフォニアム2」の冒頭はなかなかワクワクさせる展開から始まります。

夏休みを目前にし、昨年部を辞めた傘木希美が復帰を願い出る、という導入からこの第2期は幕を開けるのです

一度部活を辞めた者が復帰を願い出る、という事件は部員各々の心情に波紋を投げかけるのにぴったりな要素であり、しかも、久々の関西大会出場を決めたという上り調子になったタイミングで帰ってこようとするわけですから、訝る気持ちも生まれます。

さらに、北宇治高校吹奏楽部の現2年生の数が少ない理由、それは一年前に上級生たちとの確執から退部者が続出したためであり、辞めた者と残った者との間にある心情的な温度差が極めて大きいという。

そして、その確執の原因として、公立高校の部活に常に存在する熱意の差が設定されているところにこの作品の面白さがあります。

「部活なんか趣味で適当にやっておけばいい」とする当時の3年生と、地元の強豪中学校である南中学校出身者が多く、しかも、南中学校が久々に中学生の京都府大会を勝てなかった世代ということで、「勝つ」ことに並々ならぬ意欲を燃やしている当時の1年生(現2年生)世代の対立というわけです。中学生の京都府大会を勝てなかった世代ということで、「勝つ」ことに並々ならぬ意欲を燃やしている当時の1年生(現2年生)世代の対立というわけです。

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