治と信代が初枝の死体を密かに埋葬し、その後、亡くなった初枝の年金を不正受給する場面。
もちろん、その1つ1つが驚きをもたらすのは確かなのですが、ここでもやはり、そういった「衝撃動画」の切り貼り以上の意味を映画にもたらすことはできていません。
パッチワークは色彩全体の組み合わせの妙によって芸術作品になるのであって、布切れ一つ一つの色合いが良ければそれでよいというわけではないのです。
そして、最終盤の展開もまた凡庸というか、予想がつく程度のものでした。
「万引き」がバレて警察の取り調べを受けることになり、結局は「一家離散」することになる、という幕引きは確かに「万引き家族」の締めとして自然だとは思いますが、万引きをしていたらいつかは逮捕されるとか、本作にような形式の家族形態は長続きせず、どこかで崩壊してしまうとか、そういった展開は誰もに予想できる言わば「常識的」な流れに過ぎず。映画のクライマックス/フィナーレとしては弱々しく感じざるを得ません。
最後に、本作で描かれる「貧困」の程度について少しばかりの疑問を申しますと、父親の日雇い労働、母親のパート、祖母の年金受給(+義息子夫婦に集っているお金)という資金源があり、なおかつ、持ち家に住んでいるので家賃やローンの支払い不要、そのうえ万引による食料品や生活必需品の無料入手という組み合わせがあれば、さすがにもっと良い暮らしができているはずなのではないかと思います。
娘と息子は学校に通っていないため教育関連費用もかかりませんし、娘は性風俗店で働いていて給料を全て自分のものとしているため、家計には貢献していないものの、小遣いを貰う必要もないわけです。
「貧困」がテーマの作品としては、所得と生活費の関係、生活水準の描き方にややこだわりが不足しており、その点も本作が生々しい迫力に欠けてしまう要因だと感じました。
全体的に悪くはないのですが、飛びぬけた美点もなく凡庸止まりの作品。
評価は2点(平均的な作品)が妥当でしょう。
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