☆☆☆(教養書)

新書 「物語 フランス革命」 安達正勝 星3つ

1. 物語 フランス革命 フランス革命の経過を有名な事件のあらましや活躍した著名人のエピソードを中心として「物語」風に語っていく著作。 中公新書から出版されている本ですが、学術的な知識や思考を大衆に伝えるためというよりは、世界史の教科書やwikipediaを詳しくしたような内容になっております。 私もフランス革命の知識は高校の世界史止まりであり、「バスチーユ」や「ジャコバン派」、「ロベスピエール」といった穴埋め問題を解くレベルの断片的な文言だけが頭の中にある状態でしたが、本書を読むことでフランス革命という出来事全体が「物語」として頭の中で繋がっていく感覚を得ることができました。 2. 目次 序章 フランス革命とは第1章 「古き良き革命」の時代第2章 革命的動乱の時代へ第3章 国王の死第4章 ジャコバン政府の時代第5章 恐怖政治ー革命政府の暗黒面第6章 ナポレオンの登場 3. 目次 ルイ16世の治世下で始まった財政改革が民衆の怒りに火をつけ、王政を打倒するにまで至ったフランス革命。 バスチーユ牢獄襲撃の成功によって深まる大衆の自信...
スペクトラルウィザード

漫画 「スペクトラルウィザード 最強の魔法をめぐる冒険」 模造クリスタル 星3つ

1. スペクトラルウィザード 最強の魔法をめぐる冒険 「ミッションちゃんの冒険」というweb漫画で有名になり、現在は「金魚王国の崩壊」などのweb漫画を連載するほか、同人誌即売会コミティア等で作品を発表しているサークル、模造クリスタルの商業化作品。前作「スペクトラルウィザード」の続編となっております。 「スペクトラルウィザード」の感想はこちら。 中編×3と掌編×2という構成だった前作とはうって変わって、今回は一本の長編+エピローグ的な掌編という構成。副題の通り、「最強の魔法」を巡る騎士団と魔術師たちの争いが描かれます。陰謀渦巻き、敵味方が入り乱れ、裏切りに次ぐ裏切りが起こる展開でハラハラドキドキさせながらも、その裏に流れる他者との関係性についての示唆が物語に深みを与えています。 2. あらすじ 危険な魔術書の研究により魔術師ギルドがテロ組織として認定され、科学技術集団である騎士団によって多くの魔術師が逮捕・処刑された。魔術師ギルドは解散を余儀なくされ、離散した魔術師も危険人物として追われている。 そんな中、魔術師のスペクトラルウ...
☆☆☆☆(小説)

小説 「悲しみよこんにちは」 フランソワーズ・サガン 星4つ

1. 悲しみよこんにちは 20世紀後半に一時代を築いたフランスの小説家、フランソワーズ・サガン。その代表作が処女作である「悲しみよこんにちは」です。1954年に出版されるとたちまち世界的なベストセラーとなり、サガンをしてデビュー作でいきなり一流作家の仲間入りを果たさせた名作となっております。 そんな高い前評判に違わず、素晴らしい小説でした。非の打ちどころのない情景描写と心理描写に魅了されます。河野真理子さんの翻訳も絶品で、小説における美しさや切なさ描写の極致を極めた作品の一つと言っても過言ではないでしょう。 2. あらすじ 主人公のセシルは17歳。父親であるレエモンとの父娘家庭育ちである。といっても、レエモンは実入りの良い職業についていて、もう40歳を超えるというのにパリの社交界で女性をとっかえひっかえしている奔放な男性。そんな父に連れられ、セシルも遊びばかりを覚えてこの年まで育ってきた。 17歳の夏、セシルは父とともにコート・ダジュールの別荘を訪れている。父の愛人であるエルザとの仲は良好なうえ、海岸ではシリルという大学生と出会って恋仲になった。...
スポンサーリンク
☆(映像作品)

映画 「月光の囁き」 監督:塩田明彦 星1つ

1. 月光の囁き 原作は週刊ヤングサンデーに連載されていた同名漫画ですが、私が本作の名前を知ったきっかけは小説家の綿矢りささんがかつて好きな映画に挙げていたという情報を得たことです。1999年公開と20年以上も前の映画で、おそらく当時においても無名な映画だったでしょう。近所のTSUTAYAには置いていなかったため、DMMの郵送レンタルサービスを使って視聴したほどです。 さて、そんな本作の感想ですが、あまりの超展開についていけなかったというのが正直なところです。特異な性癖を持った高校生男女の一風変わった恋愛物語なのですが、全体的にかなりニッチなところを突いた映画になっていて、いわゆる映画好きの人たちには受けるのかもしれませんが、尋常の感性で楽しめる作品ではないでしょう。 2. あらすじ 高校生の日高拓也(ひだかたくや)と北原紗月(きたはらさつき)は剣道部に所属する同級生。お互いに惹かれあっていたもののなかなか進展を見せない二人の仲だったが、紗月が拓也の友人からラブレターを貰ったことを契機に好意を打ち明けあい、二人は付き合うようになる。 当初は真っ当...
政治制度・統治機構・法学

教養書 「現代日本の政党政治」 濱本真輔 星4つ

1. 現代日本の政党政治 大阪大学准教授の濱本真輔さんによる著作で、学術的な内容がふんだんに盛り込まれたいわゆる専門書にあたる本です。小選挙区比例代表制への移行を中心とした、1990年代の政治改革の効果を検証するという内容で、二大政党制を志向し、派閥を中心とした分権的党内調整によってではなく、首相や党執行部を中心とした政策決定を目指した政治改革の現時点までの経過と結果が様々な観点から論じられております。 全体的にやや散漫で決定的なことが書いていない(導出できていない)なと思う部分もありましたが、政党を取り巻く制度が各アクター(特に政治家)をどう動かすのかという学術的な視点に興味のある方で、ある程度、政治学について下積み的知識がある方にとってはそれなりに面白く読める本だと思いました。 2. 目次 序章 本書の目的第1章 選挙制度改革と現代日本の政党政治第2章 議員、政党組織、政党政治第3章 小選挙区比例代表並立制の定着第4章 政党中心の選挙環境への変容第5章 個人中心の選挙区活動、選挙運動の持続第6章 族議員の変容第7章 分権的政党内制度の変容と持続第...
安部公房

小説 「他人の顔」 安部公房 星2つ

1. 他人の顔 ノーベル文学賞の有力候補だったと言われているほか、芥川賞、谷崎潤一郎賞、さらにはフランス最優秀外国文学賞を受賞するなど、国内外で評価が高かった小説家、安部公房の作品。「砂の女」「燃え尽きた地図」と並んで「失踪三部作」の一つに位置付けられています。「砂の女」は本ブログでもレビュー済み。名作です。 圧倒的感動に打ちのめされるという経験をさせてくれた「砂の女」と同系列の作品という評価に期待を寄せて読んだ本作。悪くはありませんでしたが、その高い期待に応えてくれたわけではありませんでした。 「砂の女」と同様、都市化・資本主義化していく社会の中で人々の自己認識や他者との関わり方が変化していくというテーマそのものは面白かったのですが、「砂の女」が見せてくれたような冒険的スリルやあっと驚く終盤のどんでん返しがなく、主人公の思弁的で哲学的なモノローグがあまりにも多すぎたという印象。もう少し「物語」としての起伏や展開による面白さがあれば良かったのにと思わされました。 2. あらすじ 主人公の「ぼく」は高分子化学研究所の所長代理として研究に...
☆☆(映像作品)

映画 「時をかける少女」 監督:大林宣彦 星2つ

1. 時をかける少女 1983年公開の旧い映画ですが、近年でも話題に上ることが多い作品です。直近では本作の監督である大林宣彦さんが2020年4月に亡くなられたことで注目を集め、4月18日には追悼の意味を込めた再放送が行われたりもしました。広島県尾道市を舞台にした「尾道三部作」の一作として、同監督の代表作に連ねられる作品です(残りの二作は「転校生」と「さびしんぼう」)。 注目を集める二つ目の理由としては、原作である同名小説がメディアミックスの底本として定番化しており、近年においても度々リメイクされているからです。2010年の実写映画(監督:谷口正晃、主演:仲里依紗)、2006年のアニメ映画(監督:細田守、主演:仲里依紗)、2016年のテレビドラマ(主演:黒島結菜)、2015年の舞台版(演劇集団キャラメルボックス)と、2000年代においてもその勢いは留まるところを知りません。 本ブログでも、原作小説及び2006年のアニメ映画版を既にレビュー済みです。 リメイクされるたびに、ある種の「元祖」として注目を集めるのが今回取り上げる1983年の実写...
なんだこの人生

【なんだこの人生 日曜しか生きた心地がしない社畜OLの日常】労働に打ちひしがれ虚無な日々に絶望する新米社会人の苦悩 評価:2点【橋本ゆの】

1. なんだこの人生 奇妙なタイトルの作品ですが、調べてみるとTwitter発のコミックエッセイということでそれも納得できます。 橋本ゆのさん(@riko3_)という現時点で4.5万人のフォロワーを抱える人気ツイッタラー(インフルエンサー?)さんが出版する初の単行本とのこと。 ポップな雰囲気の表紙やタイトルに違わず気軽に読める内容ですが、反面、現代社会においてサラリーパーソンとして働くことの意義について考えさせられる作品でもありました。 社会から受ける暗黙の要請に応じて学校に通い、これまた暗黙の要請に応じて会社に入って働いているのに、まさに「なんだこの人生」と思ってしまうような生活を送っている方々には刺さる作品だと思います。 2. あらすじ 藤井香菜子(ふじい かなこ)は都心で働くOLで、社会人二年目。 しかしながら、キラキラした生活とは縁遠い日々を送っている。 「毎日満員電車に乗りつらい思いをして働き、土曜は一日中寝ていて活動しているのは日曜だけ……という1週間を過ごす。こんな生活が1年後も5年後も10年後もずっとずっと続く...
政治制度・統治機構・法学

教養書 「コラプション なぜ汚職は起こるのか」 レイ・フィスマン他 星3つ

1. コラプション なぜ汚職は起こるのか ボストン大学の経済学者レイ・フィスマン教授とカリフォルニア大学の政治学者ミリアム・A・ゴールデン教授による「汚職」についての共著。二人とも異なるアプローチから「汚職」を研究してきたこの道の大家であり、それでいて本書は一般向け(といっても「汚職」の普遍的構造に関心を持つ「一般」向けですが)の著作になっております。 学術書ではないことから事例中心の記述となっておりますが、個々の汚職を個人の道徳的資質の問題として矮小化するのではなく、様々な汚職の事例を「均衡」という思考枠組みの中で捉え、学術的な視点から論じていくのはまさに本格派といったところ。度肝を抜かれる面白さとまではいきませんでしたが、この分野に興味がある方にとって知的な興奮をもたらしながらも肩の力を抜いて読める本だといえるでしょう。 2. 目次 第1章 はじめに第2章 汚職とは何だろう?第3章 汚職がいちばんひどいのはどこだろう?第4章 汚職はどんな影響をもたらすの?第5章 だれがなぜ汚職をするのだろうか?第6章 汚職の文化的基盤とは?第7章 政治制度が汚職に...
☆☆☆(教養書)

教養書 「戦争の世界史」その4 ウィリアム・H・マクニール 星3つ

1. 戦争の世界史 その4 「戦争の世界史」レビュー最終編になります。「その4」ではついに第一次世界大戦と第二次世界大戦が取り上げられ、いわゆる国家総力戦体制が世界市場に登場する過程が明らかにされていきます。前編「その3」はこちら。 2. 目次 ・上巻第1章 古代および中世初期の戦争と社会第2章 中国優位の時代 1000~1500年第3章 ヨーロッパにおける戦争というビジネス 1000~1600年第4章 ヨーロッパの戦争のアートの進歩 1600~1750年第5章 ヨーロッパにおける官僚化した暴力は試練のときを迎える 1700~1789年第6章 フランス政治革命とイギリス産業革命が軍事におよぼした影響 1789~1840年 ・下巻第7章 戦争の産業化の始まり 1840~1884年第8章 軍事・産業間の相互作用の強化 1884~1914年第9章 二十世紀の二つの世界大戦第10章 一九四五年以降の軍備競争と指令経済の時代 3. 概要 第九章では、第一次世界大戦、第二次世界大戦を通じて総力戦体制が構築される過程が説明されます。 第...
☆☆(小説)

小説 「容疑者Xの献身」 東野圭吾 星2つ

1. 容疑者Xの献身 ミリオンセラーを連発し、ドラマ化・映画化作品も多数。受賞した文学賞も数知れずという現代の大人気大衆小説家、東野圭吾さんの作品で、彼の代表作だと言ってもよいでしょう。直木賞を獲得したほか、国内の主要なミステリ賞を五つ受賞。発行部数は驚異の1000万部を誇ります。 さて、そんな世間的評価の高い作品なのですが、個人的にはありきたりで普通の作品に思われました。ミステリーのトリックは凄いといえば凄いのですが、そういったトリックの精巧さよりも人物の心理描写や脚本に重きを置く性格だからかもしれません。やや感情移入しづらい登場人物たちと、あざとすぎる「劇的」な展開には少し興醒めで、著しく悪い点はないものの、かといって凡庸の域を出ない作品だと感じます。 2. あらすじ 小さなアパートに暮らす花岡靖子・美里母娘。平穏な日常を送っていた二人だったが、元夫である富樫慎二がこのアパートにやって来たことから彼女たちの運命は大きくねじ曲がっていく。ストーカーのように纏わりつく富樫に二人は辟易しており、二人はついに、富樫を殺してしまうに至るのだった。 そん...
ロミオとジュリエット

映画 「ロミオとジュリエット」 監督:フランコ・ゼフィレッリ 星3つ

1. ロミオとジュリエット 1968年公開の映画で、言わずと知れたシェイクスピアの名作「ロミオとジュリエット」の映画化作品です。近年流行りの「新解釈」などではなく、原作に忠実な脚本となっているのですが、それでいて当時は大ヒット。 アカデミー撮影賞、アカデミー衣装デザイン賞、ゴールデングローブ賞外国語映画賞など様々な賞を受賞しました。 そんな作品を2020年に鑑賞してみたわけですが、なかなか良かったというのが率直な感想です。 シンプルでハイテンポな恋愛劇というまさに古典王道を感じさせる作風で、しらけるような場面もなくずっと見ていられます。 凝った作品が見せる深い感動はありませんが、ハラハラ、ドキドキ、いちゃいちゃ、そして胸を衝く悲しみという要素が揃ったエンタメの良作でした。 2. あらすじ 部隊は中世イタリアの都市ヴェローナ。 この街では、モンタギュー家とキャピュレット家という二つの名家が長年にわたって抗争を繰り広げていた。 そんなある日、モンタギュー家の嫡男ロミオは、友人たちとともにキャピュレット家のパーティーに忍び込む。...
スポンサーリンク