アニメ 「響け!ユーフォニアム2」 監督:石原立也 前編(第1話~第4話) 星3つ

響け! ユーフォニアム
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1. 響け!ユーフォニアム2 前編(第1話~第4話)

高校の吹奏楽部を舞台にした青春部活物語。大学生で作家デビューを果たした武田綾乃さんの原作を、深夜アニメ界隈では大きなブランド力を持つ京都アニメーションがアニメ化した作品です。第1期の出来が素晴らしかったため、個人的にも非常に期待していた第2期でした。第1期の感想はこちら。

アニメ 「響け!ユーフォニアム ~北宇治高校吹奏楽部へようこそ~」 監督:石原立也 星3つ
1. 響け!ユーフォニアム ~北宇治高校吹奏楽部へようこそ~高校の吹奏楽部を舞台にしたアニメです。先日、第二期の第一話が放送されました。第一期がなかなか見応えあるものだっただけに大きな期待を寄せているのですが、ここではその期待の理由となっている第一期を総評したいと思います。響け!ユーフォニアム 1 posted with カエレバ黒沢ともよ ポニーキャニオン 2015-06-17Amazon楽天市場

正直なところ第1期よりは良いとは言えず、終盤の失速が残念でしたが、それでも並大抵のアニメよりは十分に良いと言える作品で、オタク向け要素を排してより工夫すれば午後7時前後やゴールデンの時間帯に流しても評価を得られるようなポテンシャルがあるのではと個人的には思っています。

2. あらすじ

主人公、黄前久美子(おうまえ くみこ)は京都府立北宇治高校に通う高校一年生。同じ中学校からの進学者が少ないという理由で北宇治高校進学を決めた久美子は、中学校で所属していた吹奏楽部に引き続き入部する気もなく、また、入学時に聴いた吹奏楽部の演奏は酷いもので、良い印象は抱いていなかった。

しかし、同級生である川島緑輝(かわしま さふぁいあ)や加藤葉月(かとう はづき)の誘いもあり、吹奏楽部に入部することになる。そして、新顧問である滝昇(たき のぼる)の指導や、新加入の部員たちにより実力をつけた北宇治高校は見事、京都府大会で金賞を獲得し、関西大会出場を決める。

関西大会に向け気合十分な北宇治吹奏楽部の部員たち。練習にも前向きな姿勢に溢れ、順風満帆かと思われたが......。

夏休みを目前にし、昨年部を辞めた傘木希美(かさき のぞみ)が復帰を願い出たことから、吹奏楽部には波乱の予感が漂い始める。

3. 感想

一応、括りは「青春部活群像劇」で合っていると思うのですが、人間関係に強くスポットライトを当てていることがこの作品の特徴で、吹奏楽部というのはそういった問題を抱えることがしばしばあると聞きます。原作者の武田さんも中学生のときに吹奏楽部に所属していたということですから、まず人間関係を主軸にしようという発想も自身の経験から来ているのかもしれません。

また、ここは完全に想像ではありますが、そういった「人間関係の円滑さ」が最も露骨に出る類の競技が吹奏楽なのだと思います。たとえチーム競技でもある程度個人技がチーム力を救えるような構造が存在するのがスポーツであり(野球など)、また、個人技の傑出した選手を中心に全体を組み立てるということもできます(サッカー、バレーボールなど)。しかし、吹奏楽は完全に「合奏」の競技であって、まさに「息を合わせること」が演奏技術と同等かそれ以上に要求されるという側面が人間関係と吹奏楽部としての実力を連動させ、「吹奏楽と人間関係」が持つ緊張感を生み出します。部活動×人間関係をテーマにするにあたって、まさに吹奏楽部はてきめんだと言えるでしょう。

さらに、公立高校がメジャー競技で全国を目指すというのも胸を熱くする展開です。昨今ではスポーツ推薦で人を集める私立高校が高校生の全国大会を制する現象がどんな競技でも当たり前となっており、むしろ「夢を与える」漫画であってもそのような現実を反映している作品が多く出てきています。野球漫画では「メジャー」や「ダイヤのA」などがその典型でしょう。

さらには、こうした教育機関が選手として大成するためのエリートコースではない競技も欧米方式が輸入される形で出現してきています。Jリーグではユース出身の選手が多く活躍していますし、テニスの錦織選手は著名なテニスアカデミーで修練を積んでいたようです。そういったタイプのエリート機関で主人公が育つ漫画も隆盛しています。

スポーツ推薦校にユース、アカデミー。そうしたエリートコースで日夜トレーニングを積んだ結果としてスーパーエリート選手となり、全国大会やはたまた世界で活躍する姿は世間でも概ね好意的に捉えられているのが実情で、強豪校/強豪チームの施設や環境の素晴らしさ、長時間の厳しいトレーニング風景はマスメディアもこぞって取材を敢行するほどです。

もちろん、そういった育成方法が各選手にとって才能を伸ばすのに効率的な手段であるから普及するのでしょうし、厳しい訓練を積んでいることそのものには私も強い敬意を抱いています。とはいえ、「早期に選抜されたエリート」「エリート機関に目をつけるという家庭の文化的背景/エリート機関に入れるだけの家庭の財力的背景」という要素を必然的に持つことになる彼らが、果たして空想の物語の主人公として相応しいと言えるのでしょうか。不可ではないと思いますが、さらなる苦境を課された主人公が「より相応しい」と私は考えます。上述のような要素は多くの人々にとって当てはまらないものであって、題材となっている競技に日常では興味のない人まで感動させるような普遍性を持つ物語であるためには、まずもって共感が必要なわけですから、エリートトラックに乗っている「他人」の物語では一定以上の人気を継続的に得て、かつ、後世で古典たるには及ばないでしょう。「ファンにはたまらない作品」は「『ファンにとっては』たまらない」作品に過ぎず、誰もに愛されるエンタメ性と社会への深い洞察や人生への熱いメッセージを両立させる作品にはならないのです。

この点、野球においては春の大会に「二十一世紀枠」を設けて進学校や過疎地域の高校を出場させたりもしていますが、やはり大会での成績は振るいません。2007年の佐賀北高校の再来はなかなか実現しなさそうです。この点、「響けユーフォニアム!」はある程度の説得性を持って京都府立北宇治高校のレベルが高くなるからくりを描いているのですが、それでも後述するように全国大会出場には強豪の一角である秀大付属高校がトラブルで本来の力を発揮できなかったという理由が挿入されています。その辺り、武田さんも自覚的なのでしょう。

そうした環境の中で、「公立高校の部活を題材に『全国を目指す』熱血さと、『人間関係』というヒューマンドラマ的要素を両立させようとしている」この作品に希望を感じています。

前者は私立高校やユース/アカデミーを舞台にすると描きやすいのですが、それでは前述のように主人公への共感が薄くなる設定になってしまいますし、「人間関係」もそのエリート機関に集まった人物同士の関係になってしまいます。もちろん、頂上を目指す人物同士の人間関係にも一定の見ごたえがあり、数多くの作品で描かれてきた要素ではありますが、息が長く誰もに愛される作品と言うのは曲がりなりにも非エリートを中心人物に据えています(ドラゴンボール、ドラえもん、クレヨンしんちゃん、ポケットモンスター......。ナルトは後付けでエリート設定になりましたが、果たしてどこまで人気が続くのでしょうか)。

後者はそれ単体だとどんな漫画でも取り入れられる(ぐだぐだ日常モノでも良いわけです)要素ですが、「全国を目指す」という要素も入れつつ、非エリートではない人間関係を描くのはなかなか難しいわけです。たとえ最初はそれを目指していたとしても、結局「強さ」についての会話に終始してしまう展開になる物語も多く存在しています。

前置きが長くなりましたが、まさにこのような意味で、この「響け!ユーフォニアム2」の入りはなかなかワクワクさせるものでした。一度、部活を辞めた者が復帰を願い出るというのは各々の心情に波紋を投げかけるのにぴったりな要素であり、しかも、久々の関西大会出場を決めたという上り調子になったタイミングで帰ってこようとするわけですから、訝る気持ちも生まれます。さらに、北宇治高校吹奏楽部の現2年生の数が少ない理由、それは一年前に上級生たちとの確執から退部者が続出したことであり、その際に辞めた者と耐えきった者との間の温度差は極めて大きいものです。

そして、その確執の原因として公立高校の部活に常に存在する熱意の差が設定されているところにこの作品の面白さがあります。「部活なんか趣味で適当にやっておけばいい」とする当時の3年生と、地元の強豪中学校である南中学校出身者が多く、しかも、南中学校が久々に京都府大会を勝てなかった世代ということで、「勝つ」ことに並々ならぬ意欲を燃やしている当時の1年生(現2年生)世代の対立というわけです。

こうした確執は「エリート機関」ではまず起こらないものであり、だからこそ、多くの人の生身の人生に迫るものなのではないでしょうか。大手を振って反旗を翻す者、淡々と自分の練習をこなす者、実は3年生の緩い態度の方が好きだがなかなか口には出せない者。それぞれの立場が微妙な空気感の中で混じりあうことこそ「高校の部活だった」と感じる人は少なくないと思います。きっと、三年生の中にも少数派として真面目熱心派がいたのでしょう。しかし、部活動というものは、在籍するそれぞれの学年(特に最上級学年多数派)の「空気」が色を作ってしまうものなのです。

反旗を翻した挙句辞めていった希美に対する態度は人それぞれで、冷たく拒絶する田中あすか(たなか あすか)から、必死に引き入れようとする中川夏紀(なかがわ なつき)、そして無関心の振りを決め込む多くの部員までグラデーションが存在して、どこまで相手の立場に踏み込むかも含めて各人の個性が出るわけです。「気まずさ」を描く作品として出色だと思います。希美が復帰することになろうと、復帰が果たせないことになろうと、誰かの「望み」は叶わないためにしこりが残るはず。一直線の解決はなく、いったいどう転んだらハッピーエンドに結びつくのかさえ分からない。そんなジレンマが視聴者をはらはらさせるところがこの作品の上手い点です。

しかし、この話をそういった派閥対立のような「大きな物語」に収束させず、むしろそれは周縁的要素として、リアリティを出すための緻密な「背景」として表示しておいて、実質的には「鎧塚みぞれと傘木希美の個人的関係」に焦点を当てるのも面白いところです。親友だと思っていた希美が部を辞めるという重大決断を自分に前もって伝えてくれなかったことを気にして、希美を避けるみぞれ。承認欲求や特定の関係への過度な依存といった高校生の感覚がよく出ていると感じました。人間関係の破綻にこの理由を持ってきた作品は意外と本邦初ではないでしょうか。

さらに、夏紀が希美の復帰を支援しようとする理由も面白く、「悩んでいるときの希美に何もしてやれなかったから」。人間関係に対する考え方やアプローチの違いがいい味を出しています。しかも、結局のところ「親友」としての関係を取り戻すのはみぞれと希美であり、こうした考えを持てる夏紀には何の心理的報酬が与えられないのも妙味のある構成に思われます。それでいいんだと思っている夏紀が素敵ですよね。

ただ欠点を挙げるとすれば、みぞれが希美に執着する理由がやや凡庸すぎたこと。孤独で内気で陰気な自分を吹奏楽部に誘ってくれて、いつも相手してくれるから、というのは使い古されたパターンで、確かにコミュニケーションが苦手な自分をいつも引っ張ってくれる存在が大きいというのは理解できますが、そういった一般的な理論よりももう少し踏み込んだ、みぞれー希美特有の関係や個性を表すような捻りが欲しかったところです。

また、演出面ではやや芝居がかったところが目につきました。特にみぞれと希美が仲直りする一連の流れは「あり得なさ」が強すぎ、「ああこれはフィクションだった」と我に返ってしまいました。リアリティとフィクション性のバランスの中で視聴者は夢中になる(現実ありのままを淡々と見せられても引きこまれないしフィクションを見る意味もないが、かといって非現実的なことばかりだと共感できずにしらける、「どうせ嘘の話」となる)わけですから、もう少し配慮があればと感じました。

以上が第1話~第4話の感想です。おそらく、希美・みぞれ編と銘打つべき4話だったのではないでしょうか。次項は中編になります。

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