アニメ 「just because!」 監督:小林敦 星2つ

just because!
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1. just because!

2017年10月から12月まで放送された、高校生の恋愛を題材にしたアニメ作品です。2015年設立の新興アニメーション会社、PINE JAMによって制作されています。

コンセプトや大枠としてのストーリーは悪くなかったものの、物語をより切なく、より盛り上げるためのギミックがあまりにも不足していると感じました。

2. あらすじ

3年生の3学期、受験を目前に控えた時期。泉瑛太は転校生として神奈川の高校にやってくる。瑛太は4年前まで神奈川に住んでおり、父の転勤に伴う出戻りだった。

もう卒業までわずかな期間しかないということで、瑛太は別室登校を選択する。しかし、この高校にはかつて瑛太と中学校生活を共にした仲間も通っていた。瑛太と同じ野球部で、高校でも野球を続けていた相馬陽斗。そして、中学校でも高校でも生徒会長を務める夏目美緒。

陽斗は同じクラスの森川葉月に片想いしており、告白への踏ん切りをつけるため、瑛太に投手を頼んで放課後のバッターボックスに立つ。ホームランを打てたら告白する、というのが陽斗の決意だった。何球も投げた末、ついにホームランを放った陽斗は喜びのあまり瑛太に抱きつく。

その様子をシャッターに収めたのが、この高校の2年生であり、写真部に所属する小宮恵那。二人が喜びに抱き合う写真をコンクールに出したい。その許可を得るために瑛太に接近する恵那だが、やがて恵那は瑛太に好意を持つようになる。

しかし、瑛太の気持ちは恵那に向かない。瑛太がずっと好きなのは他でもなく美緒なのだ。

陽斗の恋は実るのか、瑛太は美緒に告白することができるのか、恵那のアプローチが奏功するのか、そして、美緒の気持ちは......。

このまま終わるかと思われた高校生活。
季節外れの転校生が引き起こす恋物語。

3. 感想

コンセプトは良いですね。3年生の3学期に転校生がやって来て、それがこの繊細な時期に波乱を引き起こすという始め方はありそうでなかった発想。新しいながら無理な奇抜さがなく、許容できる「意外な」展開でありながら波乱をしっかりと起こせるギミックになっています。

ただ、肝心の恋物語に魅力がありません。恵那は瑛太が好きになり、しかし、最終的には瑛太と美緒が両想いであることに気づいて恵那が涙を飲むのですが、作中の表現では瑛太と美緒の魅力がさっぱり伝わらず、なぜ恵那が瑛太を好きになったのか、瑛太と美緒がお互いのどこを魅力的だと思っているのかという点でかなり疑問が残りました。

それに対し、恵那の魅力は光ります。潰れかけの写真部を救うために奔走し、瑛太に積極的にアピールする。自分の人生を一生懸命生きている姿は多くの人の目に輝いて映るのではないでしょうか。あけすけで朗らかな性格でありながら細やかな気遣いもそつなくこなし、なぜ瑛太が恵那をあまり葛藤なく振れたのかが分かりません。

また、陽斗と葉月の物語も面白い点がありません。「遠距離になることを懸念して」告白を一時的に断り、「お互いの生活が落ち着いたら」正式に恋人になろうという提案はあまりに奇抜すぎるでしょう。加えて、作中、(地味という設定の)葉月が髪型を変え、あまりに可愛くなって登場したのでクラスメイトから驚かれるというシーンがありますが、これもかなり非現実的。高校生の髪型の少しの変化が教室をどよめかせるほどの可愛さの変化をもたらすことは基本的にありませんし、ビジュアル的にそれを表現できてもいませんでしたし(前・後どちらでも十分「可愛い」キャラクターで、変化量も僅かです)、「地味な服ばかり着る」センスの人物が途端にセンスの良い髪型にできるというのもリアリティを削いでいます。どちらかというと「等身大の高校生のリアルな恋愛」路線の作品なのですから致命的でしょう。

もっと言えば、「見た目が可愛くなったから」葉月の評価が高まる、という手法は感情表現を重視する恋愛ものであまり執るべきではないでしょう。内面で惹かれあっているという結論が霞んでしまい、感動が小さくなってしまいます。

他にも言いたいことはたくさんある作品ですが、こういった作品を土台に、オリジナルアニメーションが増えていって欲しい、特に、おふざけ満載の作品ではなく、こうした現実寄りの作品が増えていって欲しいと私は考えています。アニメーション表現の将来を切り拓くのは、日本的な「アニメ」表現を使いながらも、人類普遍の喜びや苦悩について語っている作品でしょう。そうでなければ、日本においても、もちろん、世界においてもメジャーな娯楽/芸術として定着するはずがありません。

4. 結論

いまのアニメーション界にはあまりない作風の、しかし、メインストリームになって欲しい作品の例として、その絶対的な質は高くないものの、この路線を繋いだ作品として評価できると思います。

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