1. アルモニ
文化庁の事業である「若手アニメーター育成プロジェクト」の一環として開催された、「アニメミライ2014」で公開された30分弱のアニメーション作品。
現在はスタジオ・リッカの代表を務めていて、当時は「イヴの時間」などの作品により新進気鋭の若手アニメーターとして注目を集めていた吉浦康裕さんが監督です。
30分弱という短い時間の中に巧妙な起承転結とアニメーションによる不思議な世界観を詰め込まれており、隠れた名作という言葉がぴったり当てはまる作品でした。
2. あらすじ
本城彰男(ほんじょう あきお)は高校二年生。
普段はクラスメイトである吉田や渡辺とアニメやラノベについて語り合って過ごしている。
そんな彰男とは別世界にいるのが、クラスメイトの真境名樹里(まきな じゅり)。
マユミやリョーコ、後藤とともにクラスの最上位に君臨する存在だ。
そんなある日、授業中に真境名の携帯電話の着信音が鳴ってしまい、真境名は携帯電話を教師に取り上げられてしまう。
そして、聞いただけで曲の音をすぐに覚えられるという特技を持つ彰男はその着信音を暗記し、気まぐれに学校で演奏してしまう。
しかし、その演奏を聞いた真境名の反応は意外なもので......。
3. 感想
授業が終わり、起立・着席・礼の号令があり、その後、生徒たちが雑談を始める。
教室での何気ない日常がアングルやカットに工夫を凝らされながら丁寧に描写されることで、冒頭から本作が魅せるアニメーションに惹きこまれていきます。
そして、吉田・渡辺・本城彰男の陰キャグループと、マユミ・リョーコ・後藤・真境名樹里の陽キャグループの対比が描かれた後、彰男と樹里の邂逅があり、彰男は樹里の秘密を知ることになります。
それは、樹里が色彩と音楽に溢れる不思議な世界の夢を見るということ。
そんな夢を見るということを誰にも信じてもらえず、幼年期には精神異常を疑われ、医者にも診てもらっていたという樹里。
いまでも同じ夢を見続けているものの、そのことをクラスメイトや両親にはひた隠しにしています。
そして、彰男はその夢の中に出てくる液体の色を偶然に知ってしまい、その色について樹里に話します。
すると、自分と彰男は同じ夢を見ているのだと誤解した樹里が、彰男に仲間意識を感じるようになるのです。
夢の中に出てくる「色」を共有できた瞬間の感動(それは誤解なのですか)から心理的な接近が始まるというのも、アニメーション作品らしさ表れていて面白いなと感じました。
二人のあいだの勘違いが解きほぐされないまま、樹里がどんどん彰男に惚れていくという展開のコミカルさが面白く、また、そんな青春喜劇とは対照的なほど美麗で劇的に描かれる夢の世界のアニメーション表現にはつい没入してうっとりとしてしまいます。
確かに、こんなにも美しい夢を毎日見るのに、それを他人と共有できないのはもどかしいでしょうし、共有できる相手が現れたとなればその感動はひとしおでしょう。
吉浦監督が持つ、「若手アニメーター育成プロジェクト」という事業に相応しいアニメーション技術と、映画を作っていく人間としての確かな脚本力。
その二つを短い時間でたっぷりと味わうことのできる作品です。
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