1. あずまんが大王
「よつばと!」で有名なあずまきよひこさんの出世作。女子高生たちを主人公にした4コマギャグ漫画、というジャンルは1999年の連載開始当初において斬新であり、現在の日常系4コマの基礎となっている作品だといえるでしょう。
とはいえ、近年の粗製乱造な漫画群とは違います。主に男性読者に媚びた「萌え」に走りがちな漫画や、「メタ」「パロディ」でニッチな笑いばかりを狙いにいく漫画とは一線を画し、ギャグはいたって王道。むしろ、「よつばと!」に通じる普遍的な笑いと感動がある作品です。
2. あらすじ
舞台は都市部のいたって平凡な高校。
ずぼらな女性教師谷崎ゆかり(たにさき ゆかり)が担任を務める1年3組には変わった面子が勢ぞろい。
10歳ながら飛び級で高校に入学してきた美浜ちよ(みはま ちよ)、スポーツ万能で成績優秀だが寡黙で猫好きな榊(さかき)、元気だけが取り柄の滝野智(たきの とも)、常識人ゆえにからかわれがちな水原暦(みずはら こよみ)、大阪からの転校生なのにいつもぼんやりとしている春日歩(かすが あゆむ)、運動神経がよくふざけることも多いが根は真面目な神楽(かぐら)。
風変りな女子高生たちが送る、愉快な学園生活の記録。
3. 感想
めちゃくちゃ面白い作品です。「ボケ」と「ツッコミ」による掛け合いと「間」で笑いを取りに行くスタイルが特徴で、傑作漫才を延々と見させてもらっているような気分になる作品。
「萌え」や「お色気表現」を用いず、かといってマイナーな分野の知識披露系になることなく、誰もが知っている題材をもとに笑いを取りに来ます。キャラクターも性格設定自体はフィクション性が強いのですが、人間味がある点では共通していて、誰もが共感できるような感情の動きが表現されているのが特徴。
日常系4コマの元祖であり、後々の作品に大きな影響を与えているとされている作品ですが、近年の日常系4コマがニッチの袋小路に迷い込んでいくのを見るにつけ(いわゆる「まんがタイムきらら系」や「ポプテピピック」)、この作品が普遍的な笑いという点で未だにナンバーワンの地位を占めているのではないかと思う次第です。
また、「よつばと!」によるあずまきよひこさんの活躍もあってか近年になっても人気は衰えておらず、2009年には全編描き直し(オチ変更有)+オリジナル話追加の新装版が発売されているようです。
しかし、新装版は「よつばと!」の綺麗な絵に寄せていることもあり、この作品の魅力を減じているように思えます。笑いには「雑」だからこその笑いがあり、この作品では絵柄や背景の「雑さ」が笑いを助けている側面があるからです。漫才でも、敢えての適当さ、おざなりさが笑いに繋がったりしますよね。そのような「計算された雑さ」が丁寧な絵によって減じられている気がしまして、個人的には原版を手にとって頂く方が良いと感じています。
4. 結論
4コマ漫画ばかりの全4巻で気軽に読めます。日常に笑いが足りない方は是非。
さんざん笑った挙句、意外にも郷愁を残すような描写で終わる最終巻を読み終えたとき、儚く短かった高校生活と永遠に続く少女たちの友情との対比は何ともいえない感動さえもたらしてくれることでしょう。オススメです。
ちなみに、個人的にお気に入りのオチは、「引き分け」(第1巻 いい勝負だったわ)、「利発そうなお子さんだ」(第2巻 木村家の人々)、「やな心だな」(第3巻 大阪心)、です。
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