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【政治経済】「平成の通信簿」 吉野太喜 星2つ

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平成の通信簿
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金額(ドルベース)でみると、2010年まではそれでも増加してはいるのですが、2010年には44,674ドルだったのが2017年には38,499ドルと減少してしまっています。

最近は欧米各国の物価の高さに驚かされますが、やはり他国の物価・給与上昇についていけておらず、日本が「安い国」になりつつあるのが手に取るように分かりますね。

それにしても、1989年や2000年には一人当たりGDPランキングで北欧諸国やスイスの間に割って入っていたということは初めて知ることで感嘆いたしました。

まさに、日本経済が輝いた最後の瞬間だったのでしょう。

これ以降、ドットコムバブルやリーマンショックを経つつも新しい産業を築いて力強く成長した欧米諸国やNISE・中国とは雲泥の差がついていくのです。

なお、こちらのサイト(https://ecodb.net/ranking/imf_ngdpdpc.html)を参照すると、2018年においては一人当たりGDPの順位が26位に後退。

後ろからはイタリア・韓国・スペインが迫ってきております。

これらの国の一人当たりGDPは近年伸びていますから、日本はあと数年で追いつかれてしまうのでしょう。

巷では「先進国」という枠組みで物事が語られることが多いため、日本を当たり前のようにアメリカやイギリス、フランスなどと比較する番組や記事が多くみられますが、それはいまや「背伸びした比較」であることを意識しなければならないのかもしれません。

一人当たりGDPという観点で見れば、日本と経済的に対等なのはあくまでイタリア・韓国・スペインであり、生活水準や社会保障・福祉水準、産業育成を語る際もこの現実を見つめ、ここからどう良くしていくかを話すべきなのでしょう。

次の 「06 外国人」 では、日本で暮らす外国人数の推移や、外国人の流入数が示されております。

日本で暮らす外国人は2017年末に256万人となり人口の2%を越えたほか、20代だけに絞ると既にその割合は6%と、社会にとって重大な部分を占めるに至っております(40人クラスで2人の計算ですね)。

また、2016年度における外国人流入数は年間42万人で、OECDでは独米英に次いで4位。なおかつ、3位の英国とほぼ変わらないという事実は面白い数字なのではないでしょうか。

いま、欧米諸国が悩んでいる外国人との共存の在り方。

ここを間違ってしまうと日本でも様々な問題が噴出するでしょう。

特に、NHKでも取り上げられたこれ(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190402/k10011870201000.html)なんかは問題として大きいと考えておりまして、私たちの社会に義務教育を受けていない人々が参画してしまうこと(その割合が何十年ぶりに増加すること)はもう確実なわけです。

価値観や文化が異なる人々と前向きに共存するというお題目通りにはいかない、私たちの社会の「失敗」がこれまでの「当たり前」を打ち崩していく光景を目にすることになるのは必至でしょう。

そんな未来を冷静に受け止めつつ、より良い「当たり前」を上手く早く構築していかなければなりません。

第2章では、経済や労働に関連するデータが紹介されます。

そのうち、今回取り上げるのは「10. 国際収支」「12 農業」「13 漁業」です。

世の中には製造業のパフォーマンスだけを見て日本の「国力」を測ろうとする風潮がまだ根強く存在し、日常のニュースやインターネットの論調なんかも製造業中心の説明になりがちですが、それだけに、製造業以外に焦点を当てたこれらのデータからは平成日本を振り返るための興味深い示唆が得られます。

まず、「10. 国際収支」 では、貿易収支や経常収支といった国際取引から日本が得ている収益の推移が示されます。

1989年にはドイツに次ぐ世界第2位の貿易黒字国だった日本も、2017年には世界第16位まで後退。

黒字額も640億ドルから260億ドルまで減少しています。

1989年当時には日米構造協議が開かれるなど、日本の貿易黒字は世界に大きなインパクトを与えておりました。

為替相場自由化後のことですから、物品貿易における実質的な競争力という意味では平成元年がまさに全盛期だったといえるでしょう。

とはいえ、日本が外国から得ている収入の金額、すなはち経常収支は1989年より増加しています。

そのエンジンとなっているのはサービス収支と第一次所得収支。つまり、知財などの使用料であったり、外国の会社から受け取る配当金の増加です。

高度な研究・技術開発の成果が世界中で使用されることにより収入を得たり、これまで蓄積してきた資本を国外に投資することでその対価を得ているわけです。

主流派の経済学において、この流れは国家の経済が成熟していく中で自然な流れとされており、これからもトレンドは続くでしょう。

むしろ、こうした成熟国家間の競争、つまり、より良い知財を生み出せるか、上手く投資を行えるか、という土壌で日本は戦っていくことになるのだと思います。

製造業信仰はまだまだ根深いですが、多くの低賃金新興国が世界に存在する中で製造業の雇用を国内に呼び戻すのは難しいでしょう。

高付加価値経済・投資経済に移り変わる中でこれまで製造業が作っていた雇用をどう新産業へとシフトさせていくかという議論。

その方が、無謀な製造業回帰を狙うよりも有意義なのだと思います。

ただ、そんな状況の中でも、研究開発や投資の部門で成果を挙げられていたり、これまでの製造業に代わるマス産業が興隆しているかといえば必ずしもそうではないのが現状でしょう。

アベノミクスのおかげか雇用者数は増加しておりますし、雇用者報酬も増えております。

人手不足の中で賃上げも行われていくかもしれません。

また、企業の内部留保(会計的な定義とは異なりますが、おそらく現預金のことを言いたいのでしょう)をもっと労働者に還元すれば賃金が上がるという議論もあるようです。

しかし、究極的なところ(実質)賃金は生産性の限界までしか上がりません。

もちろん、利下げ・金融緩和によって(銀行収益と預金金利への抑圧と引き換えにですが)貸出を目一杯まで増やし、公共事業も絡めて雇用の口を増やす余地はまだあるのかもしれません。

しかし、生み出す付加価値が現在の程度である限り、政策の弾を撃ち尽くした後、限界いっぱいまで雇用と賃金を増やした先にさえ、「マシにはなった、でも、全部やってこんなもんか」という未来が待っているだけです。

次の「12 農業」 では、日本の農業従事者や農業生産額の推移が示されます。

平成という時期に限らず、戦後、農業従事者数は減少の一途をたどり、生産額も減少しています。

先進国ならばその傾向が当たり前、となればよいのですが、1990年と2016年の各国の生産額を比較するとそうもないのが肝です。

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