☆☆(教養書)

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生き方・自己啓発

「存在消滅 死の恐怖をめぐる哲学エッセイ」高村友也 評価:2点|自己が永遠に消滅するという、その現象への向き合い方、向き合えなさ【生き方】

東大の哲学科出身という出自を持ちながら(持つからこそ?)、田舎の雑木林を購入し、自作の小屋を建てて自給自足生活を送っている(送っていた?)高村友也さんという方が「死」について考えたことを著したエッセイ本です。高村さん自身は何年も前から自作小屋暮らしブロガー/YouTuberして界隈では注目を集めておられた方で、小屋暮らしについての書籍も出版されています。そんな高村さんを幼少期から悩ませてきたのが「死」という現象への恐怖。自分時間が永遠に消滅してしまうという現象であり、避けることはできずいつかは必ず訪れるこの現象。やや内向的で思索的な人であれば、ふとした瞬間に考えたこともある「死」についての想いが淡々と綴られており、その中から自分自身の「生」についてのヒントが得られるかもしれない、という書籍になっております。目次第一章 危機第二章 永遠の無第三章 世界の神秘第四章 問いの在り処第五章 他人と孤独第六章 対処療法としての逃避と忘却第七章 執着と諦観、信頼と不信第八章 文明第九章 自己矛盾第十章 旅の動機第十一章 宗教第十二章 人生の意味第十三章 小屋暮らし、再び感想小屋暮らしを始めてから一...
生き方・自己啓発

「人生後半戦のポートフォリオ」水木楊 評価:2点|時間・モノ・カネのトレードオフを意識して時間長者の人生を歩むべき【生き方】

元日経新聞記者で取締役まで務めた後に退社し、以後、作家として活躍した水木楊さんの記した新書。タイトルは「人生後半戦のポートフォリオ」とありますが、主に30代以降の読者を想定しながら、仕事に忙殺されなおかつ浪費をしてしまいがちな人生を上手く律し、自分のための時間を多く持つことで充実した人生を送ろうという主旨の書籍となっております。著者の水木さんは1937年生まれで2021年に亡くなっているのですが、中国上海生まれで、大学は自由学園最高学部、そこから日経新聞に就職という経歴に時代の流れが色濃く表れています。いまとなっては「時間を大切に」という風潮こそ主流になりつつあり、フレックスタイムや在宅勤務の増加、さらにはFIREという概念の登場など、とりわけ労働時間を抑制しようという動きが盛んですが、2004年発売の本書はまさに先見の明があったと言えるでしょう。現代では類書に溢れた本となってしまっておりますが、下手にフリーランスやFIRE、田舎暮らしを持て囃すのではなく、サラリーマンとして家族を持ちながら働く人々がどう時間を大切にできるのかという論点で書かれている点にはまだまだ独自性があります。「時...
社会学・歴史・スポーツ

「やさしくない国ニッポンの政治経済学」田中世紀 評価:2点|人助けもしなければ社会参加もせず、それでいて貧乏な日本とその処方箋【社会学】

日本人の良いところは他人に優しくするところであり、お人好し過ぎる点が国際外交やビジネスの場面で仇になってしまうほど日本人は優しいのだ。こうしたステレオタイプ的な日本人像は、特に日本人のあいだで長く語られてきた典型的日本人像であります。(自分で自分たちのことを「優しい」と思っているなんて、個人的にはどうしようもなく気持ち悪いですが......)東京オリンピックの招致やインバウンド需要取り込みのために近年では「おもてなし」の精神が強調される機会も多く、こうした日本人の自己像はますます強化されているのではないでしょうか。そんな風潮に一石を投じた記事が「Yahoo!ニュース」に投じられたのは2019年10月のこと。本書のプロローグもまた、この記事の紹介から始まります。日本人は、本当のところ世界の中でも全然「優しくない」集団なのではないか。そんな疑念を皮切りに、日本人の利他性/利己性を社会科学的に分析。貧困問題とも絡めながら論じた著作となっております。目次プロローグ序章 人にやさしくない、貧しい国ニッポン第1章 他人を信頼しない日本人第2章 そもそも、なぜ人は他人を助けるのか第3章 日本人の社会...
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作品の感想

「バカの壁」養老孟子 評価:2点|現代人が囚われている愚かさの監獄について老教授が語る【社会学】

400万部以上を売り上げ、日本のベストセラーランキング5位に君臨する伝説的新書である本作。東京大学名誉教授である養老孟司さんの著作で、2006年には「超バカの壁」、2021年には「ヒトの壁」が発売されるなどシリーズ化されており、人気は現在でも健在です。本作は新潮社編集部による口述筆記によって著されており、養老さんの語りを分かりやすく文章化したもの。そのため、確かに文章としては柔らかく読み易いものになっております。ただ、だからといって内容が濃いか、あるいは理解しやすいかと言われればそれはまた別の話。社会批判についての方向性としては個人的に賛同できる部分が多かったですが、あくまで老教授の居酒屋談義という色合いの著作です。目次第1章 「バカの壁」とは何か第2章 脳の中の係数第3章 「個性を伸ばせ」という欺瞞第4章 万物流転、情報不変第5章 無意識・身体・共同体第6章 バカの脳第7章 教育の怪しさ第8章 一元論を超えて第1章 「バカの壁」とは何か第一章では本作のタイトルでもある「バカの壁」について、ある夫婦の妊娠から出産までを追ったドキュメンタリーを見せたときの男子学生と女子学生の反応の違いを...
生き方・自己啓発

「エッセンシャル思考」グレッグ・マキューン 評価:2点|絶対にイエスだと言いきれないなら、それはすなはちノーである【生き方】

シリコンバレーのコンサルティング会社CEO、といういかにもな肩書の人物によって著された自己啓発本のベストセラー。本書の主張は「エッセンシャル思考」というタイトルに凝縮されており、すなはち、本質的に重要なごく少数の事柄に集中して取り組むことで人生の質が劇的に上昇するというものです。いかに無駄を削ってやるべきことを絞り込むのか、そのためにはどのような心構えを持ち、どのような思考枠組みで物事を評価し、どのように行動するべきなのか。様々な事例を引きながら、著者は読者に「無駄」をドアスティックに削りなさいと迫ります。この「ドラスティックに」という点が本書のミソであり、著者は「90点ルール」つまり評価が89点以下の事柄はやめておけとまで言います。多少有用である程度のことはやらない、90点以上だと評価できることだけをやる。そういった主張を支える著者の論理や持ち出される例には説得力があるのですが、著者が「やめろ」と主張することは人間の性としてついついやってしまうことが多く、凡人が人間的性質に基づく誘惑を振り切って、ここまで劇的に生きることはできるのかという点に多くの疑問が残る著作でもあります。換言すれ...
黒柳徹子

「窓際のトットちゃん」黒柳徹子 評価:2点|マルチタレントの先駆けが通ったあまりにも自由で不思議な小学校【芸能人伝記】

日本における最初のテレビ放送開始(1953年)以来、常に第一線で活躍し続けている女優にしてマルチタレント、黒柳徹子さんが幼少期の生活について綴ったノンフィクション自伝です。発行部数は驚異の800万部超を誇り、単著としては戦後最大のベストセラーとなっている本作。世界でも売り上げを伸ばしており、中国でも1000万部を突破するなど、まさに世界的名作とされている作品です。とはいえ、個人的な感想としては単なる「いい話」の域を出ていないという印象でした。そもそも黒柳徹子さんという超有名タレントが出版しているという側面に加え、作中で描かれる自由で温かい学校生活の在り方が管理教育全盛だった出版当時(1981年)の状況に対する反逆として「刺さった」のも大きかったのでしょう。ただ、昨今の教育を取り巻く事情を鑑みると、本書が再び脚光を浴びる時期も遠くないように感じます。主人公のトットちゃん(=黒柳徹子さん)は多動症気味の子供で、クラスメイトにも身体障害を抱えている子供や帰国子女の子供が登場します。差別を受ける外国人(朝鮮人)の子供に纏わるエピソードも登場するなど、いかに多様性を認めあい、それを活かしてゆくの...
生き方・自己啓発

「お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 2015」橘玲 評価:2点|サラリーマンはコスパが悪い【資産運用】

経済や金融に造詣がある作家として活躍している橘玲さんの著作。2002年に発売された本書は内容の画期性からベストセラーかつロングセラーとなり、「2015」や「新版」という形で改訂されながら今日でも読まれています。その内容は、資産形成を行って蓄財し、サラリーマンとしてでなくフリーランス、あるいはマイクロ法人の社長になることで徹底して節税しつつ有利に融資を得てさらに投資をしろ、というもの。当時としては斬新だったかもしれませんが、投資や節約についての情報が氾濫している現代においては凡作になってしまったかな、というのが個人的な感想です。目次Prologue 1995-2014PART1 人生を最適設計する資産運用の知識PART2 人生を最適設計するマイクロ法人の知識PART3 人生を最適設計する働き方感想Part1では、サラリーマンがなんとかお金持ちになる方法として、住居費と生命保険費用の見直しを中心とした節約と、投資の重要性が説かれます。とはいえ、インデックス投資でガンガン積み立てろ、というスタンスではないところに著者の新参者ではない感があります。20年近く下がり続けた日経平均株価の例や、IT...
生き方・自己啓発

「ビジネスマンの父より息子への30通の手紙」キングスレイ・ウォード 評価:2点|硬派なビジネス・エリートによる人生の指南書【生き方】

カナダ人の実業家、キングスレイ・ウォード氏が実の息子に宛てた手紙という形でビジネスマンとしての理想的な生き方を説く著作です。大学進学を控えた息子に贈る第一通から、会社を継いで新社長となる息子に贈る第三十通まで、ビジネスで成功する秘訣から、プライベートを含めた人生全体を成功させる秘訣までを、いかにもこの時代のアングロサクソンな父親らしい、情実のある書きぶりで語っていきます。実質的な中身としては、様々な自己啓発本やビジネス書に書かれている内容と重複するものばかりですが、平易な書きぶりと、息子の成長に合わせて段階を踏んで物事を伝えていくという部分に独自性があります。ただし、本作が善として推す価値観はまさに(カナダ人ですが)アメリカン・エリートのそれであり、いわゆるバリキャリ的で家父長的な行動原則に満ち溢れています。そういう書籍が好きな人、あるいは、エリートビジネスマンや管理職として、好んでタフな交渉に臨んだり、進んで部下を率いている人にとっては得るものがあるでしょう。ただ、文芸や映画が好きな人にとって面白い本かと言われれば、ちょっと胃もたれがするかな、といった印象です。目次第一通 敢えて挑戦...
生き方・自己啓発

「イケメンはモテない」仮メンタリストえる 評価:2点|メンタリストによる恋愛指南【恋愛心理学】

恋愛テクニックについての動画を専門とし、登録者数35万人超を誇る人気YouTuber「仮メンタリストえる」さん。彼がYouTubeで紹介した恋愛テクニックを凝縮した著作が本作となります。数多くの「モテテクニック」が紹介されており、ハウツー本として一定の価値はあるのでしょう。ただ、「恋愛慣れしていない男性」向けであると銘打ちながら不親切な部分が多く、本当に「恋愛慣れしていない男性」が本書を使いこなせるかと言われればかなり疑問です。加えて、アカデミックな心理学解説本や面白い雑学本という枠組みとしてもイマイチ。最近流行している心理学ベースの「恋愛テクニック」を知識として仕入れることができるという程度の価値しか持っていない本という評価です。目次Part1 出会いPart2 LINE編〈初デートまで〉Part3 待ち合わせPart4 ランチPart5 LINE編Part6 ディナーのお店決めPart7 水族館デートからディナーまでPart8 帰路Part9 告白前Part10 告白感想主人公であるリョウタが懇親会会場でマドカと出会い、告白して恋人になるまでの過程を追っていく中で恋愛テクニックを披...
生き方・自己啓発

【転職支援】教養書「転職の思考法」北野唯我 評価:2点【ビジネス書】

博報堂やボストンコンサルティンググループで働き、いまは就職支援サービス会社ワンキャリアの取締役を勤める北野唯我さんの著書。「転職の思考法」というタイトルの通り、転職するにあたって考えるべきことや、業界・会社選びのコツが述べられているほか、そもそもどのような環境で働くべきなのかという普遍的な「仕事論」にまで言及されている著作です。一人のサラリーマンが転職について考え始めてから実際に転職するまでの物語に沿って著者の主張が述べられていくという形式を取っており、物語自体もそれなりに面白いので、読み易さという点では万民向けになっております。ただ、全体としては凡庸なビジネス書であったというのが本ブログにおける評価。良いことを言っっておりますし、間違ったことを言っているわけではないのですが、巷に溢れる転職論や仕事論からさらにもう一歩踏み込んだ言説に乏しく、やや内容的に薄い本だったと感じました。目次プロローグ このままでいいわけがない。だけど......第1章 仕事の「寿命」が切れる前に、伸びる市場に身を晒せ第2章 「転職は悪」は、努力を放棄した者の言い訳にすぎない第3章 あなたがいなくなっても、確実...
生き方・自己啓発

【生き方】「人生の短さについて」 セネカ 星2つ

1. 人生の短さについてローマ帝国時代に活躍したストア派哲学者、ルキウス・アンナエウス・セネカの著作。人生論とでも銘打つべき随筆であり、過激な衝動を抑え、理性によって生きるべきだというストア派哲学の思想を基盤としつつ、「よい生き方」とは何かが語られております。とはいえ、その内容は現代の自己啓発本と比しても凡庸というレベル。随所に顔を出す面白い表現に感心させられることはありましたが、特段に斬新で心に響く書籍というわけではありませんでした。2. 目次章分けなし。岩波文庫版では、表題作「人生の短さについて」のほか、「心の平静について」と「幸福な人生について」を収録。3. 感想「人生の短さについて」というタイトルに反し、本書におけるセネカの主張は「人生は本来、十分に長いものだが、多くの人々は人生の時間を浪費してしまうため人生を短いものだと感じてしまっている」というもの。古典にしてはなかなかタイトルの付け方が上手いですよね。「人生の長さについて」なんてタイトルにするより、よほどキャッチーで煽り文句としては優秀だと思います。そして、本書の主旨はもちろん、「人生は本来、十分に長いものだが、多くの人々...
住宅・土地政策

【空き家問題を考える】教養書「老いた家、衰えぬ街」野澤千絵 評価:2点【住宅政策】

明治大学政治経済学部の教授で、都市計画やまちづくりを専門とする野澤千絵氏の著作です。近年は報道番組等でも取り上げられることも多い「空き家」の問題について、その現実的な弊害と解決の難しさ、講じられている方策、そして、一人一人が住まいの「終活」をする重要さが説かれています。各論的な項目が多く、包括的な枠組みに欠ける点がやや難だとは思いましたが、空き家が解消されない要因と、関係ないと思っていても思わぬきっかけから当事者になってしまう可能性についての言及、そして、日本や世界で行われている様々な解決策についての紹介など、この分野における多様な知識を得るのにはそれなりに有用な新書でした。目次第1章 国民病としての「問題先送り」症候群第2章 他人事では済まされない相続放棄第3章 世界でも見られる人口減少という病第4章 空き家を救う支援の現場から第5章 さあ「住まいの終活」を始めようはじめに住宅政策は本ブログが継続的に関心を持っている分野であり、これまでも「住宅政策のどこが問題か」や「新築がお好きですか? 日本における住宅と政治」といった著作を取り上げてきました。こうした著作の中でしばしば指摘されてい...
創作論・物語論

【小説を売る工夫の数々】教養書「拝啓、本が売ません」額賀澪 評価:2点【ビジネス書】

タイトルからは内容が判りづらい本なのですが、発行部数の伸びない作家が編集者と一緒に「本を売る」ことを得意とする人々にインタビューをして回るというもの。そのインタビュー記録とそこから著者が得た気づきが載っている、いわばインタビュー集&著者エッセイのような本です。そんな本を書く著者のプロフィールなのですが、こんな人が「本が売れない」ことに悩むなんてという経歴を持つ作家さんです。私立の中高一貫校から日芸(日本大学芸術学部)の文芸学科に進学。卒業後の就職先は広告代理店で、在職中に若くして松本清張賞と小学館文庫小説賞という二つの新人賞を別々の作品で受賞してデビュー。翌年発売した「タスキメシ」は高校の課題図書に選ばれるという、まさに文芸の王道を進んできた人物。高校在学中にも全国高等学校文芸コンクール小説部門で優秀賞を受賞しているなど、まさに「野良育ちとは違う」感のある小説家だといえるでしょう。しかし、こんな黄金ルートを歩んできた作家でも「拝啓、本が売れません」を書かなければならないほどの窮地にあることが本書の序盤で明らかになります。それでは、どうやったら「本」が売れるのか調べましょう、という流れで...
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