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【税制】新書 「日本の税金 第3版」 三木義一 星3つ

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日本の税金
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消費者一人一人が毎月どれくらい消費したかを自分で数えてその10%を役所に納めに行くなんてことは物理的に不可能なので、各会社が「自分たちがどれだけ売り上げたか」と「自分たちがどれだけ仕入れたか」を計算して、その差額に税率を掛けた金額を政府に納めているわけです。

しかし、この「事業者が納める」という制度に様々な特例や計算方法の仕掛けが設けられることで、特定事業者に事実上の優遇措置が図られたりしています。

本書ではその点に対する指摘が鋭く、消費税の「裏」の部分が分かる解説となっております。

また、軽減税率についても豊富に言及されており、消費税の課税品目と非課税品目を各国がどう分類しているのか、そして、どのような手法が合理的だとされているのかについても論じられています。

第4章のテーマは相続税。

相続税がかかるほどの遺産がない庶民から見るとあまり親しみのある税金だとは感じませんが、本書で述べられているように、相続税を意地でも回避しようとする富裕層の振る舞いを見ると妬みを感じてしまいますし、財務省/大蔵省が場当たり的な規制で追いかけまわしているのを見ると大変そうだなぁとも感じます。

遺産総額に課税するのか各人が貰った金額に課税するのかという論点もこれまで気づかなかった点でありまして、関心のなかった分野だけに参考になる情報が多くありました。

第5章のテーマは間接税等。

酒税やたばこ税、自動車関連税といった、特定の品目にかけられている税金の話です。

奇妙な政治過程が生んでしまった不条理な税目の数々を見ると確かに問題があるなぁと感じる章ですね。

特に、お酒は麦芽の含有量やアルコール度数によって税率が変わるのですが、こういった複数税率並立の中で巧妙に価格を抑えようとする奇天烈なインセンティブを飲料メーカー各社に与えてしまっているのは問題でしょう。

ジュースに9%のアルコールを突っ込んだだけの「ストロング系」が非常に売れておりますが、なぜアルコール分が9%なのか、なぜジュースのような原料を使うのか、という点は本書を読んで税制を理解すると納得できます。

個人的な見解としても、「ストロング系」の流行が糖類やアルコールの摂り過ぎによる健康被害増加を招くのではないかと心配しておりますし、他国よりも複雑で不条理な税制を敷くことによって国際競争力のあるアルコール飲料の開発が疎かになっているのではないかという点でも懸念を抱いております。

日本のアルコール飲料は一部の日本酒を除けばほとんど国際的に普及していないので、国内市場縮小の中でガラパゴス製品ばかりをつくった結果、日本の飲料メーカーが次々と倒れていくのではないかと危惧しています。

第6章のテーマは地方税。

地方自治体が自律的に政策決定するための税金として、住民税や事業税、地方消費税(消費税の地方自治体の取り分)が存在しております。

とはいえ、それらから得られる税収は地方自治体の収入の3割程度で、他は様々な理由をつけて国から貰えるお金になっています。

それでも、貴重な自主財源として、地方自治体は安定的に税収を確保するための様々な施策を行っており、本書では外形標準課税が紹介され、導入の経緯が語られます。

それ以外の点では、やはり固定資産税における評価制度の話が面白かったですね。

時価と合わせるべきなのか、それ以外の尺度を用いるべきなのか、そもそも「時価に合わせる」ことは可能なのか。

課税逃れや固定資産取得インセンティブの歪み、自治体の処理能力の限界など、様々な論点を孕んだ問題です。

こういった、いかにも問題が起こりそうな課税種類の話は人間社会のやるせなさを感じて面白いですね。

第7章のテーマは国際課税。

といってもページ数が極端に少なく、タックスヘイブンを使った国際的な課税逃れについて簡単に触れているだけです。

パナマ文書やケイマン諸島といった単語を知っている人にとって新しい情報はないでしょう。

4. 結論

ときどき挟まる感情的表現や「国民一人一人が意識を持たなければならない」的な謎の説教(その方法を考えるのが現代の学術研究に課せられた役割のはずです)には辟易とさせられますが、タイトル通り「日本の税金」を概観するのには丁度いい分量で適度な内容だと思います。

給付付き税額控除など、たまに顔を出す著者の税制アイデアも興味深く、まさに入門書としてうってつけだといえるでしょう。

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