今後アニメを制作するときには、その物語は「アニメでなくてはならなかったか」、他にもっと良い方法があるのではないかということを(濫造商業作品を確信犯的に作る場合を除き)この観点から検討することは避けられず、アニメとして本作の本番シーンを超えられているかは大きなベンチマークになると思います。
また、本記事の冒頭で「TV放映の30分アニメを作成するにあたっては必ず参照されるべき作品」としているのにも意味があり、この第5話では演奏シーンが終わってすぐにいつものエンディングが流れ、その後に結果発表シーンが来ます。
発表前の胸のざわつき、高揚感。何も考えられなくなる、熱に浮かされたような気持ち。腕から胸から膝まで、無意識にがくがくと震える。自分の身体が自分のものではないような気分になる。
結果発表が後にあるタイプの競技の部活に入っていた人ならば共感して頂けるかと思います。
12分間もの演奏シーンで彼女たちの成長を存分に味わったからこそ、結果発表シーンへの感情移入度合、胸の高鳴りも大きくなりますね。
CM前のAパート、CM後のBパート、ED後のCパートを巧みに使って緊張感を持続させたり「おいしいところ」をもったいぶる手法はベタといえばベタですが、これを第5話にもってくることで1クール12話全体での中だるみを防ぎ、第4話に「本番前」という役割、第6話に「次へのスタート」という役割、そしてこの第5話が一種のプレ最終回のような役割を担わせることができています。
ただ漫然と30分のアニメを流すのではなく、全体の構成を考えていつでも「見せ場」をつくること。劇場版でもなく、単発でもないという特性も上手く使っており、こうした「制約を使ってますます面白くする」ということが様々な作品で見られればアニメももっと、大人の日常に根差したメジャーなものになっていくのではないでしょうか。
これほど素晴らしい30分に出会えることはなかなかないでしょう。
一度、この第5話だけでも見ればアニメに興味のない人でもアニメの世界を見直すことかと思います。第6話以降の感想は後編に続きます。
コメント