例え話はそのほとんどがローマ時代固有のネタであるため、現代人がその光景を想像して深く共感するのは難しいものばかりなのですが、一つだけ、個人的に感銘を受けた文章がありましたので、ここに紹介いたします。
たとえば或る人が港を出るやいなや激しい嵐に襲われて、あちらこちらへと押し流され、四方八方から荒れ狂う風向きの変化によって、同じ海域をぐるぐる引き回されていたのであれば、それをもって長い航海をしたとは考えらないであろう。この人は長く航海したのではなく、長く翻弄されたのである。
いま自分は人生を航海できているのか、それとも、人生に翻弄されているだけなのか。
なんとなく後者の気がしてしまうのが非常に悔しいところです。
4. 結論
結局のところ、「雑事や凡事に惑わされず自分の人生を生きろ」ということが書いてある本です。
確かにその主張は良いものなのですが、特段、本書だからこそという側面は見られず、世に溢れる自己啓発本と同様の内容というのが総合的な感想です。
セネカという哲学者に興味がある、あるいは、「自分らしい人生」のような主張が古代ローマ帝国においてどう語られていたか知りたい。
そんな人ならば手に取ってみても良いのではないでしょうか。
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