スポンサーリンク

「ピックアップ」真鍋昌平・福田博一 評価:3点|ナンパを通じて描かれる青年の成長と男同士の友情。現代社会特有の歪な男女関係を添えて【青春漫画】

スポンサーリンク
ピックアップ
スポンサーリンク

男性は積極的に女性を口説かなければ関係性を築けない一方で、女性はそれなりに声をかけられる機会が多い。

すると、男性は「努力」を積むようになる。

何度も困難な「口説き」に挑戦し、失敗し、その教訓を仲間内で共有して技術を高めていく。

まるで卓越したスポーツチームのように。

一方、女性はそれなりに声をかけられるので、向上心を得る機会を失いがちである。

誘われるがまま、受け身なままにしていても「自由恋愛」を楽しめるのだから、声をかけてくれた男性たちの中から最も良い人を選ぶことで気楽に質の高いセックスに興じることができるのだから。

本作ではナンパ塾で得たスキルがそのまま仕事にも反映されるという描写が採られておりますが、これが東京のエリート職場における現実を反映しているのであれば、度胸や交渉術、自分を魅力的に見せる術を積極的に磨く男性たちだけがますます仕事の場で活躍していくようになるでしょう。

そして、そこにはサポート役としてさえ女性の姿はないのです。

男性たちの「成功」の踏み台として、肉体だけの存在としての女性があるだけです。

最終盤、南波が「恋」をしている女性と南波たちの上司が付き合っている(何人もいる愛人の末端)ことが発覚します。

愛人関係こそが、派遣社員からのし上がって編集者になりたい彼女の採る手段というわけです。

もちろん、まともな努力でキャリアを積み上げている女性も世の中には多く存在しているでしょう。

しかし、努力せざるを得ない男性たちと、安易な道を選ぶ誘惑のある女性たちとが直面する環境の圧倒的な違いの中で、平均的努力量には差が出てきてしまうような気がします。

いまは大企業を中心に女性の積極採用や幹部登用を推奨する雰囲気が見られますが、そういった「追い風」がいったん止んだとき、果たして「活躍する女性」がどの程度残っているのでしょうか。

ナンパや愛人関係において簡単に「ピックアップ」されてしまう女性たちが被ナンパ者や被愛人者として(もしくは専業主婦として)「養われる」以上のことができるのか、より価値の高い手段で社会に貢献することができるのか、ごく一部のスター女性以外の、ごく普通の女性が男性と同等の活躍を社会でするときなどやって来るのか。

これから到来する社会を観察することが空恐ろしくもあり、少しばかり楽しみでもあります。

スポンサーリンク

当ブログを訪問頂きありがとうございます

応援クリックお願いします!

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
このエントリーをはてなブックマークに追加

おすすめ漫画ランキング

コメント