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「涼宮ハルヒの消失」谷川流 評価:3点|素敵な非日常をもたらす存在、それを肯定することの尊さを描くシリーズ屈指の人気作【ライトノベル】

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涼宮ハルヒの消失
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著名なライトノベルシリーズである「涼宮ハルヒ」シリーズですが、既刊12巻の中でも本作は非常に評価が高く、ファンの中でも本作をシリーズの最高傑作に挙げる人が多い印象です。

個人的には第1巻「涼宮ハルヒの憂鬱」を第1位に推したいのですが(おそらくファンの中では第1巻を最高傑作に挙げる人が第4巻を最高傑作として挙げる人に次いで多いのではないかと思います)、本作も手堅い面白さがあり、特に主人公が第1巻冒頭で持っていた価値観が明示的に180度転換する描写があることから第1期完結作として本作を扱うこともできるでしょう。

実際、本作による盛り上がりを最後に「涼宮ハルヒ」シリーズの面白さが減衰していってしまうのが辛いところです。

また、本作はアニメ映画化もされており、そちらもアニメファンから高い評価を得ています。

162分という長尺の映画なのですが、原作に忠実な展開が美麗な作画と意欲的な演出によってさらに面白く描かれており、映画が原作を超えた稀有な例であると言っても反発は少ないと思います。

それでは、そんな本作のあらすじと感想を述べていくことにいたしましょう。

なお、第1巻及び前作(第3巻)の感想はこちらです。

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あらすじ

クリスマスイブを一週間後に控えたその日、いつものように部室へと集まったSOS団の団員たちは涼宮すずみやハルヒからクリスマスパーティの計画を告げられ、主人公であるキョンはその無謀な計画にややげんなりとするのであった。

しかし、キョンの心情に対して真に強烈な一撃をお見舞いする事件がこの翌日に起こってしまう。

いつも通り県立北高校へと登校したキョンであったが、教室の様子がいつとも少し、いや、かなり違っている。

昨日までは全く流行っていなかった風邪が流行しており、転校したはずの学級委員長が堂々とキョンの後ろの席に居座っていて、そして、本来はキョンの後ろにいるはずの人物、涼宮ハルヒがいない。

教室中の誰に問いかけても涼宮ハルヒを知っているという人物はおらず、キョンの頓狂な発言に眉を顰めるばかり。

茫洋とした心地で学校中を彷徨うキョンだったが、SOS団副団長である古泉こいずみ一樹いつきの所属していた1年9組はクラスごと存在が消滅しており、SOS団のマスコットキャラクター的な美少女であった朝比奈あさひなみくるはSOS団などという奇怪な団体など全く知らないと言ってキョンを遠ざけるのだった。

絶望的な感情に囚われながらも、一縷の望みをかけて部室へとキョンは足を運ぶ。

そこでキョンが目にしたものとは......。

感想

いつものように学校へ行くと世界が改変されていて、自分にとって大切な仲間だけが消失している。

さぁ、キミはどうする、というのが本作のざっくりした開幕になります。

自分のお気に入りの(非公認)部活動に所属していた仲間たちが消失しているか、あるいは、姿形はそっくりであっても、自分のことを認知しておらず、自分と一緒に過ごした日々の中で培った関係性を丸々失っている。

そんな状況に投げ込まれたときの絶望感を底として、ふと発見した僅かなヒントをもとに仲間たち(特にヒロインである涼宮ハルヒ)のこの世界における足跡を辿ることで再開を果たし、一緒に過ごした日々の思い出はなくとも性格だけはかつての世界と同一なハルヒに振り回されながら消失状態の解決へと導かれるという、大作らしい雰囲気を醸しておきながら思いのほか単純な物語構造となっているのが本作の特徴だといえるでしょう。

そんな単純極まりない物語であるのに、なぜ本作は感動を伴う良作となっているのか。

その理由としては間違いなく、シリーズを通じて積み上げてきたSOS団の歴史が大きく影響しております。

主人公であるキョンが級友である涼宮ハルヒの強引な誘いを賜ってSOS団という謎の組織を立ち上げることになり、このSOS団に愉快かつ謎を秘めた仲間たちが加入。

そして、ハルヒを含む仲間たちとともに、あるいは、この仲間たちが引き起こす不思議な事件にキョンが巻き込まれながらハルヒ及び仲間たちと友情を深め、その青春な時間の中で大切な何かを育んでいくのが本作の主題となっております。

そのため、第3巻までを読破して第4巻を手に取っている時点で読者たちはキョンに感情移入しつつSOS団に愛着を持っているわけで、その愛着を利用して衝撃を引き起こそうというのが第4巻「涼宮ハルヒの消失」における冒頭の展開、つまり、ハルヒ及び仲間たちの消失というわけです。

そのような展開を持つ本作を評するにおいてよく論点になるのが、主人公であるキョンの心理的転換です。

第1巻の冒頭において、キョンは心の底で非日常的出来事を望みながらも、そんな非日常的な出来事など起こり得るものではないと決めつけています。

そればかりか、そういった妄想は子供が行う幼稚なものに過ぎないという冷淡で嘲笑的で傍観者的な態度に徹しており、そんな態度に徹する自分をやや高く評価しているような雰囲気まで覗かせます。

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