アイデアが良質で、なおかつ「涼宮ハルヒ」シリーズの持つ設定と絡ませやすい要素が多い中で、やや淡白かつ唐突感のある中編になってしまっていると感じられ、もったいなく思いました。
・射手座の日
SOS団とコンピューター研究会がゲームで対決するという完全な日常話であり、SF的要素もミステリ的要素もなく、純文学的要素もない、ただキャラクターたちが騒ぐだけの空虚な中編です。
「涼宮ハルヒ」シリーズが一世を風靡したのはSF的な要素と純文学的要素の並立もしくは融合によるものなのですから、こういった話を読まされてしまうとげんなりするというか、単に非現実的なキャラクターたちが和気藹々と楽しんでいるのを観るだけなら凡百のライトノベルでいいよねとなってしまいます。
あまり見所のない話でした。
・雪山症候群
吹雪の洋館に閉じ込められるというミステリ風の導入から始まる話で、最終的な解決もミステリ的な謎を解くことによって為されます。
洋館の中は場所によって時間の流れが違うだとか、敵対的な宇宙人・未来人・超能力者組織による企てかもしれないだとか、そういった物語を盛り上げそうな要素が時おり顔を出したりするのですが、それらの要素は最終的な解決策や物語の起伏に対して殆ど影響を与えず、専ら団員それぞれが寝室で見た夢幻の突合によって古泉が数学的(算数的?)解を発見して謎を解いてしまいます。
本格にもなり得ていない三流ミステリ話を読むくらいなら本格ミステリとして評判が高い作品を読みたいので、こういった類の話は「涼宮ハルヒ」シリーズのキャラクターが出演している以上の価値を持ち得ないでしょう。
結論
全体として、物語そのものが面白いというよりは「涼宮ハルヒ」シリーズのキャラクターが何かをするから(キャラクターのファンであれば)楽しめるという程度の話ばかりだった印象。
評価1点(少し合わなかったかな、という作品。ありていに言えば駄作)をつけるほど貶そうとは思いませんが、これが「涼宮ハルヒ」シリーズの話でなければさすがに出版されないだろうなとも思います。
過去4巻で積み上げられてきたキャラクターの魅力貯金の取り崩し分を含めて評価は2点(平均かそれ以下の、凡庸な作品)です。
コメント