最終盤に訪れるハナとの切ない別れと、その後に西片と高木さんのあいだで交わされる愛の告白(本作らしい柔らかいやり方でしたが)にはまずまず感動しましたが、こういった、友達→家族のような移行をせざるを得ない点がやはり、本作が絶対に大作となり得ない、本作の弱点なのだとも感じられました。
というのも、本作は当初から、情欲抜きの純情な関係を前提として西片と高木さんの関係性を描いてきましたし、情欲以外の思春期における内面の葛藤だったり、中学生あたりから出てくる人間関係の悪辣さ、あるいは、熱中している競技等における悩み、もしくは、熱中できることがないという悩みといった要素にも焦点を当てていません。
必然的に、心理的成熟の過渡期における恋愛のシリアスで烈しい側面などは描けないわけで、それではどのように長編の物語をつくるかというと、「穏やかで安心感のある家族」へと一足長に跳ぶという選択肢しか残されていません。
そうなってくると、物語に緩急をつけ辛いと言いますか、山あり谷ありの「谷」の部分がどうしても緩くなってしまいます。
(とはいえ、本作の主たる読者は本先の小品感に良さを感じていると思われるので、大作である必要などまるでないのだとは思いますが)
さて、順調でしかない西片と高木さんの恋路が主たる物語として展開される横で、日々野ミナ、天川ユカリ、月本サナエという仲良し三人組の夏休みもサブストーリー的に展開されます。
内容としては、三人のうち陸上部に所属する月本サナエがより良い陸上競技の環境を求めて都会の高校に進学先を決めてしまうかもしれない、という噂をきっかけに、三人が「やりたいことリスト」をつくって最後になるかもしれない三人の夏を謳歌するという話するのですが、こちらも大きな谷もなく円満解決となってしまうため、もう少しハラハラ感というか、シリアスな展開が欲しかったと思いました。
西片と高木さん組では構造的にシリアスな事件を起こしづらいぶん、こちたで青春のジレンマ的な事件が用意されていれば一つの映画で二つおいしい、という構成になったのになと、少し残念に思われました。
なにせ結局のところ、三人の女子中学生が夏休みを遊んですごす風景を見せられただけでしたからね。
というわけで、総評としては2点(平均かそれ以下の、凡庸な作品)といたします。
特筆するべき悪い点があるわけではないのですが、それが冒険しなさの裏返しになっている作品となっております。
「からかい上手の高木さん」という作品のコンセプトを外してはいないですし、むしろそれに従順で上手く纏まっているという意味では、冒頭に述べたテレビスペシャル的な良さはあります。
「からかい上手の高木さん」原作の純粋なファンにとって、抵抗なく鑑賞できる作品ではあるのでしょう。
しかし、そこから一歩踏み出した魅力には欠ける作品であり、映画としてはどうなの、と思ってしまう側面を考慮して3点にはしないという結論です。
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