つぶしが効くからといって、自分が本当にやりたいことを投げ出してはいけない。
学習性無気力に囚われ、挑戦心を失ってはいけない。
逆に、なんでも引き受けてしまって日常をノイズだらけにしてもいけない。
この3点は、誰もがどれかの傾向を持っているでしょう。
私も色々な事柄に手を出しすぎる傾向にあるので(本ブログの雑多感がまさにそうですが)、もう少し自分の趣味嗜好について深く考えて本当に好きなことは何なのかを見つめなおしたいなと思いました。
PART2 見極める技術
PART2で論じられるのは「見極める技術」つまり、そもそも良い選択肢と悪い選択肢をどのように峻別するのかという論点です。
そう書くとなんだか難しい話のように思われるのですが、著者は非常に簡単で基礎的な助言を読者に投げかけます。
肝要なことは、「考える」ための時間をつくりだし、「考える」ことに集中できる環境をつくりだし、よく睡眠して頭の冴えを取り戻し、そして遊びの中で創造性と探求心を磨いてより良い選択肢を見つけることだというわけです。
そんなありきたりとも言える助言の中で少しだけ異彩を放つものがあるとすれば、第9章「選抜ーーもっとも厳しい基準で決める」において言及されている「90%ルール」でしょう。
「悪くない程度の選択肢は、すべて拒否したほうがいい」
「絶対にイエスだと言いきれないなら、それはすなはちノーである」
「『これしかない』と思えることを選ぶ」
こういった基準で人生における物事の選択ができている方は少ないと思いますし、もし採用したら生活が劇的に変わってしまうでしょう。
そんな劇的な変化を起こせというのが本書の主張であり、ここに本書全体のエッセンスが詰まっております。
PART3 捨てる技術
これは選ぶべきではないという選択肢が定まっても、なかなかそれを捨てることができない。
あるいは、組織において選ぶべきではない選択肢が恒常的に選択されてしまう。
そんな事態を防ぐために、PART3では実践的な「捨てる技術」が紹介されます。
企業難度の組織においては、目標の最終形を明確にすること。
個人においては「断る技術」やサンクコストを切り捨てる技術を習得し実践することが重要だと述べられます。
精神論的な部分も多いのですが、第11章「拒否ーー断固として上手に断る」では「直接的でない表現を使う」「肯定を使って否定する」など、微笑ましいまでに俗っぽいテクニックも紹介されていて面白く感じます。
PART4 しくみ化の技術
努力や根性で物事を解決せず、常に「エッセンシャル思考」を用いて省力的で効率的な解決を自動的に行うにはどのようにすればよいか。
その方法がPART4では論じられます。
とはいえ、するべきとされている事柄はありきたりなものばかり。
時間に四湯を持って取り組むこと、成果を生まない仕事を削減すること、毎日一歩ずつでもこつこつ前進すること、良い習慣を持つこと、「今、この瞬間」に集中すること。
どれも様々な自己啓発本に書いてあることばかりで、やや新鮮味に欠けるのが正直なところ。
本書も結局はここに行き着くのだな、というのが素朴な感想です。
まとめ
冒頭にも記載しましたが、主張自体はありきたりで、まさに自分を励ますための「自己啓発」本だと言えるでしょう。
主張を補強するために引用される事例の数々は実にアメリカンで面白いものが多いですが、例示そのものは本作の「本質」ではないため、面白い小話を読むために買うほどのことはないと思います。
とはいえ、間違ったことは書いておらず、本当にこう生きられたら人生は幸福だろうなという説得力はあり、そのうえ読み易い著作ではあるので、電車や飛行機での移動時間にさらりと読むことで人生における日々の決断や習慣の改良を自分に促すための道具としては悪くないと思います。
本ブログでの評価は2点(平均的な作品)といたしますが、手に取りやすい自己啓発本のベストセラーであり、まだ自己啓発本というものを読んだことがない人が1冊目として手に取る自己啓発本としては悪くないのではないでしょうか。
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