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「人魚シリーズ」 高橋留美子 評価:2点|大人気漫画家が描くグロテスクな伝奇調物語【短編漫画】

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人魚の森
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「うる星やつら」や「らんま1/2」、「犬夜叉」といった代表作を持つ人気漫画家、高橋留美子さん。

本ブログでも「めぞん一刻」を評価5点でレビューしておりますが、漫画家としての極めて高い実力は改めて言及するまでもないことでしょう。

そんな高橋留美子さんの作品の中でも、かなりマイナーな位置づけにあるのがこの「人魚シリーズ」。

「週刊少年サンデー」に不定期連載されているのですが、第1話である「人魚は笑わない」の掲載が1984年、最新話である「最後の顔」の掲載が1994年となっていて、ここしばらく新しい話が出てきていません。

加えて、ややグロテスクな表現が多く、後ろ暗い作風が高橋留美子さんの普段の漫画作品とは一線を画しています。

「大衆受けを狙わず、書きたい話を書きたいときに書いた」結果の産物という印象です。

そして、そういった作品にこそ興味を抱くのが本ブログなのですが、読んでみた結果としてはイマイチな作品という感想。

単に「暗くてグロテスク」を超えるような、「物語」としての魅力を見出すことはできませんでした。

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あらすじ

1980年代の日本、浮浪者のような姿をした青年が一人、人魚を求め無人島とされている島を訪れる。

青年が島の森へと分け入っていくと、突如、老婆の集団が現れ、青年は老婆に銛で突かれ倒れてしまう。

一方、その老婆たちが住む村では、一人の少女が老婆たちの手で育てられていた。

真魚(まな)という名前の少女は足枷を嵌められ、外界と触れ合う機会のないまま、部屋に閉じ込められている。

そんな真魚の部屋に、死んだはずの青年、湧太(ゆうた)が乱入し、彼女を足枷ごと救出する。

湧太はかつて人魚の肉を食べて不老不死の身体を手に入れていたのだ。

もとの人間に戻るため、人魚の伝説を追い続ける湧太と、世間を知らずに育ってきた真魚。

二人が逃げ込んだ洞窟に現れた化物。

そして、銛を振りかざし湧太と真魚を追う老婆たち。

闘いの先に、湧太この村の秘密を知ることになるのだが......。

感想

「犬夜叉」は多少グロテスクなシーンがありましたが、それでも、この漫画ほどではないでしょう。

その辺りはさすがに高橋留美子作品だと思って読んでいたので、肝を潰しました。

主人公とヒロインが不老不死なのをいいことに、毎話毎話、刃物や銃が出てきてお互いをぐさぐさ刺します。

物語よりもひたすらに続く流血シーンがとにかく印象に残ってしまいました。

ストーリーとしては、まず、第1話で真魚が湧太の仲間になります。

その後は、二人旅の道中で出会う、人魚の力に魅せられた人々の狂気が描かれ、それが極めて後味の悪い形で終わるという形の連作短編。

例えば、不老不死の薬とも言われ、一方で強烈な毒とも言われる人魚の肉を、実験台として姉に食べさせる妹の話。

幼い頃に人魚の肉を食べてしまい、そのままの姿で800年生きながら殺しを続ける子供の話。

不老不死の身体を維持するために人間の生肝を食べずにはいられない少女の話もあります。

グロテスクさを置いておけば、一見、面白そうなストーリーにも見え、毎度、話が始まるときには期待してしまうのですが、途中でつまらなくなっていくのが不思議なくらいでした。

その理由を考えると、登場人物たちに「葛藤」が少ないことなのではないかと思います。

のっぴきならない事情で苦渋の選択を強いられた末、人魚の肉に手をつけてしまうという展開はなく、ただ自分の欲望のために人魚の肉を使ったり、あるいは生まれながらのサイコパスだったり、世間知らずで悪いことをするのに躊躇いがないという人物ばかりで、暴力シーンが多いにも関わらず「善」と「悪」のあいだで揺れ動く人間像が圧倒的に足りていません。

グロいことをするためだけに、一般人の感覚とはかけ離れた狂人ばかりが出てくるのですから、感情移入のしようもありませんし、何かを深く考えさせられることもありません。

その意味では、唯一、「夢の終わり」はいい話だと感じました。

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