・リリアとトレイズⅠ&Ⅱ
1. そして二人は旅行に行った
「一つの大陸の物語」シリーズの第2幕にあたり、第1幕である「アリソン」の続編になります。
「アリソン」のレビューはこちら
活躍するのは「アリソン」で主人公だったアリソンとウィルの子供世代。
「アリソン」が「世界を救うアドベンチャー」だったのに対して、「リリアとトレイズ」は突発的に起こるテロと対決する内容がメインのため、物語全体がスケールダウンしてしまった印象です。
加えて、「アリソン」では主人公の二人が共に孤児院育ちの幼馴染であり、「孤児院出身の二人が知恵と勇気と自ら身につけた能力で困難を突破する」という部分が魅力だったところ、「リリアとトレイズ」では「豊かな階層出身の二人が両親から授けられた特殊技能を振るって問題を解決する」になってしまったのが痛いところ。
ワクワクドキドキを呼ぶような作品にはなっていませんでした。
2. あらすじ
大きな海に一つの大陸が浮かぶ世界。
その大陸では、山脈と大河を挟んで二つの国が対峙していた。
東側がロクシアーヌク連邦。通称ロクシェ。
西側がベゼル・イルトア王国連合。通称スー・ベー・イル。
長年の対立状態にあった両国だが、とある「お宝」の発見により対立も解消の兆しを見せ始め、世界は久方ぶりに平和を取り戻しつつあった。
そんな中、ロクシェ首都の第四上級学校に通うリリアは、母親であるアリソンとの旅行を夏休みに計画していた。
しかし、軍人であるアリソンには急な訓練の予定が入り「母親と」行く計画は挫折。
その代わり、幼馴染であるトレイズと一緒に行くことに。
二人が目指したのは伝統ある観光地、ラーチカ。
しかし、近年は他の観光地の興隆により観光客が減少しているようだった。
そんな中、街を散策する二人は遊覧飛行を体験する。
その途中、遭難した機体を発見。
救助に向かう二人と遊覧機パイロットのマテオ。
しかし、遭難機の主はマテオを撃ち殺してしまい......。
3. 感想
世界が平和になってしまったうえ、主人公であるリリアとトレイズが中産階級の娘と王子様だからかいまいち物語に緊迫感がありません。
「孤児院出身の幼馴染二人が世界を救う」というワクワクがあった「アリソン」から感じられた冒険活劇の高揚感はどこかに行ってしまったようです。
作中ではリリアとトレイズを筆頭に様々な人間が命の危機に陥りますが、登場人物に対する思い入れをあまり持てないのでハラハラするような興奮を感じることが難しかったです。
読者にとって応援したい人物か否か、そこが「命がけの冒険」というジャンルにおける面白さの命運を分けるのにもかかわらず、いまいち魅力的ではないところが残念。
物語自体も一本調子なうえ、伏線の張り方や回収が上手いわけでもなく、結局のところ、重要な局面では主人公たちが物語の最初から持っている飛行機操作技術だけであっさりと勝負がついてしまいます。
これでは一部の航空機マニア以外面白くないでしょう。
シリーズとしては失速を感じました。
リリアとトレイズⅢ&Ⅳ
1. イクストーヴァの一番長い日
「一つの大陸の物語」シリーズの第2幕である「リリアとトレイズ」の第2話にあたります。
ⅠとⅡで第1話、ⅢとⅣで第2話、ⅤとⅥで第3話という変わったナンバリング構成ですね。
コメント