小説 「アリソン」 時雨沢恵一 星3つ

アリソン
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第1巻

1-1. アリソン

「キノの旅」シリーズで有名な時雨沢恵一さんの作品で、後続のシリーズ作品群と合わせて「一つの大陸の物語シリーズ」と呼ばれています。

戦闘機が出始めごろの時代における架空の大陸を舞台に、孤児院育ちの青年男女が国を跨いで活躍する冒険活劇、というなかなか珍しいジャンル。

「剣と魔法」ならぬ「銃と戦闘機のファンタジー」という形容が相応しいかもしれません。

深い感動、というわけにはいきませんでしたが、ライトノベルというよりは往年の児童向けファンタジーを思い起こさせるポップな文体でスラスラ読むことができました。

1-2. あらすじ

舞台は東西二つの国家に分断されている大陸。

東側の「ロクシェ」にある名門校、ロウ・スネイアム記念上級学校の広い庭でウィルが読書をしていると、突如、そこに二機の戦闘機が降り立った。

そのうちの一機から降りてきた女性の名前こそ、アリソン。

孤児院でともに育った、ウィルの幼馴染である。

休暇を一緒に過ごそうとするウィルとアリソンだったが、その初日から、偶然出会った老人が目の前で誘拐されてしまうという事件に出くわしてしまう。

その老人が語った言葉、「西側と東側の国境にはすごい『宝』がある」。

長い間戦争を続け、ようやく休戦協定締結にまで至った両国。その「宝」は、そんな両国の戦争を完全に終結させられる「宝」だという。

老人を攫った犯人を追うため、そして「宝」を見つけるため、二人は空へと旅立つ。

1-3. 感想

孤児院で育った二人が主人公格。

一方は上級学校(高校)の学生で、一方は空軍の戦闘機乗りというのは時代設定を上手く活かせていますね。

知識階級が少ないので主人公の頭脳が光りますし、17、8で職業(しかも、軍人!)に就いているというのもこの世界観と設定ならでは。

単純な学園モノでは、登場人物が中高生でなければならないという制約から物語の舞台が狭く、登場人物も小粒な人物になりがちです。

そして、それを打破するため、非現実的なお金持ちや、ありえない特技を持った生徒を登場させなければならないという状況に陥ってしまいます。

しかし、本作品ではその時代・空間設定により物語の舞台を広げており、なおかつ、上級学校の生徒と若い戦闘機乗りという組み合わせをある程度の自然さで出現させています。

また、物語の分類としては「ファンタジー」なのですが、魔法や超能力的な事象は出現せず、科学技術等は相当に現実準拠なので、その意味でも幅広い層が楽しめる設定になっています。(もちろん、女性の職業軍人の存在や都市の貧困度の低さ、清潔さなどはファンタジー的です)

物語の筋もあまり奇抜な点はなく、知恵と勇気で困難を突破し、宝を見つけるという王道モノ。

敵の拠点に変装して潜入したり、ドラマティックな空戦があったりと、これでもかと定番を押さえてきます。

ただ、定番すぎて驚きや感動も少ないというのが本作の欠点。スラスラ読めますが、スラスラのままあっさりエンディングに到達してしまいます。

また、ヒロイン(主人公?)であるアリソンがウィルに最初から露骨な好意を持っているというのもややご都合主義的で面白くないですね。

もちろん、下手なハーレムや非現実的な下ネタ展開はありませんが、恋の緊張感があまりにもなさすぎるのが惜しい。

恋愛要素を出すならそこにもひと工夫も受けて欲しかったです。

とはいえ、そういった不満要素が「読みづらさ」につながっていないのが本作の良い点。空き時間や電車で読むのにはうってつけではないでしょうか。

時雨沢 恵一 (著), 黒星 紅白 (イラスト)
 

第2巻

お話は相変わらず、銃と戦闘機の青春冒険譚。

2000年代前半における電撃文庫の幅広さを感じさせる作品でもあります。

シリーズの重要人物であるイクストーヴァの女王フランチェスカが登場し、前回は「イイ奴」兼「かませ犬」だったベネディクト少佐が活躍するこのお話。

やはり2巻のジンクスか、1巻と比べるとやや物足りない印象でした。

2-2. あらすじ

冬休みを迎え、イクストーヴァ(イクス)への旅行に参加していたウィルは、空軍の訓練のため同じくイクスに来ていたアリソンに捕まり、一日を共に過ごすことになる。

そして、ひょんなことから山奥の谷に迷いこんでしまった二人は、なんと村人たちに捕縛されて監禁されてしまう。

なんとか牢屋を抜け出した二人を待っていたのは、フィオナという女性。

「わたしを首都に連れてって」

そう懇願する彼女とともに、ベネディクトを加えた一行は飛行機を操り首都へと向かう。

この女性の正体とは、そして、政治的危機に陥っているイクスの将来はいかに。

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