「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」の感想はこちら
あらすじ
エヴァ初号機と第10使徒との交戦により発生したニア・サードインパクトから14年が経過。
葛城ミサトは反NERV組織WILLEを率い、NERVによる人類補完計画を阻止するべく戦いを続けていた。
そんな中、14年振りに目覚めた碇シンジはWILLEの旗艦Wunder内部で葛城ミサトや式波・アスカ・ラングレーと再開する。
ところが、二人がシンジに向ける言葉や行動は非常に冷たく、シンジは異常を感じ取る。
WILLEの艦隊がNERVによる強襲を受けると、シンジは綾波レイ搭乗のエヴァ初号機と接触。
初号機に連れられてWunderを脱出し、レイとともにNERVへと向かうのだった。
NERVでレイとも顔を合わせ、新しい友人である渚カオル(なぎさ かおる)とも親しくなったシンジ。
ようやく元気を取り戻しかけたシンジだが、4年前に起こったニア・サードインパクトとその後の顛末を知ることになり……。
感想
何もかもぶち壊しにしてしまったという印象です。
シンジがエヴァンゲリオンのパイロットという経験を通じて大人になっていく物語としての、ヒューマンドラマとしての魅力に溢れた物語から一転、あまりに粗雑な脚本の作品となってしまいました。
14年間のあいだに起こった出来事の系統だった説明はされず、エヴァの呪縛や使徒たち、2種類の槍などといった鍵となる要素もそれっぽい雰囲気の言葉が乱発されるだけで意味不明のまま放置されます。
尋常の頭脳と精神力で物語の筋書きを終える代物ではありません。
登場人物たちが不思議でよく分からない抽象的な会話を物語内用語を駆使しながら行い、視聴者を混乱に陥れたまま戦闘が始まって、その戦闘もぐちゃぐちゃな結果で終わるという、気持ちの悪い自己陶酔的なサブカルチャー作品になっております。
渚カオルという新登場人物がシンジに対して意味不明な説明をしたあと、シンジが「カオルくんが何を言っているのか、わからないよ」と言い放つ場面があるのですが、まさにその通りで少し笑ってしまいました。
しかも、その分からなさが作中で解消されることはなく、登場人物たちが謎の動機で戦闘を始めるため、戦闘中に醸し出されるシリアスさに共感できず置いてきぼりになってしまいます。
ドンパチをぼんやりと眺めていると敵味方ともに全滅して、最期はシンジがレイやアスカと一緒に砂漠を歩き出すという、絵面だけ見れば感傷的ではあるもののなぜそうなったのかは分からない場面で終幕という残念さ。
物語を面白く引っ張るため「謎」はあってしかるべきですが、何もかも意味不明では思考を放り出してしまう人が多いでしょう。
登場人物たちによる説明らしき何かについていこうとしてもあまりにヒントが少ないため、視聴者が想像力を膨らませて脳内で辻褄を合わせなければならないという、どうしようもない不親切設計なのです。
「序」と「破」がそれなりに良作だったため落胆も大きく、思わず溜息が出てしまう作品。
前作からの落差に対する失意も込めて評価は1点です。
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