本ブログで紹介した純文学小説の中からベスト5を選んで掲載しています。
「純文学」の定義は百家争鳴でありますが、本記事では、社会や人間について深く考えさせられる作品や、人間関係の機微を描いた作品、という緩い定義のもとでランキングを作成いたしました。
第5位 「老人と海」アーネスト・ヘミングウェイ
【老漁師と巨大魚の対決 武骨な冒険小説】
かつては名を馳せたものの、いまや衰えの激しい老漁師サンチャゴが主人公。
数ヶ月もの不漁に悩むサンチャゴが、それでもめげずに出漁すると、その釣針に巨大なカジキマグロが食らいつく。
一世一代の大勝負。勝つのはサンチャゴか、カジキマグロか、という物語です。
潮風と太陽、大海原を描く雄大な自然描写と、力と力・技と技がぶつかり合う人間対巨大魚の対決描写に圧倒されます。
また、後半3分の1ほどは勝負が終わったあとの物語となっており、あっと驚く展開と哀愁漂う感動のエンディングが待っています。
情熱とは何か、栄光とは何か、誇りとは何か、人生とは何か。
それらを描ききった不朽の冒険小説。
永遠の古典という言葉に相応しい小説です。
・感想記事はこちら
第4位 「悲しみよこんにちは」フランソワーズ・サガン
【初めての感情に出会う真夏のバカンス】
主人公は17歳の少女セシル。
遊び人の父親レエモンとの父娘家庭育ちで、自由を謳歌する生活に満足していた。
そんなある日、レエモンからアンヌと結婚するのだということを知らされる。
アンヌといえば勉強大好きの堅物であり、このままでは自分らしい生活を壊されてしまう。
そこで、セシルは二人の結婚を阻止するための作戦を考えるのだが、という物語です。
耽美な筆致が特長の作品で、舞台となっている南仏の避暑地が持つロマンチックな雰囲気と、少女が抱える若者らしい繊細な葛藤が丹念に描かれております。
これまで何不自由なく過ごしてきた少女が、父親とその結婚相手の仲を引き裂くための作戦を実行した結果、初めて本物の「悲しみ」を知る、というのがタイトルの意味。
社会の決して甘くない側面や、これまで見えなかった自分自身の嫌な側面を知っていく過程はまさに子供から大人になっていく過程そのもの。
大人になっていくセシルが体験する苦い感情と、その過程で喪われる幼い純情に胸を揺さぶられます。
純文学的な内容でありながら非常に読みやすい、青春小説の名品です。
コメント