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「ぼくは愛を証明しようと思う」藤沢数希・井雲くす 評価:2点|恋愛工学を駆使してモテ男になろう【恋愛ハウツー漫画】

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僕は愛を証明しようと思う
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外資系銀行出身で現在は作家として活躍する藤沢数希さん。

そんな藤沢さんは「恋愛工学」と題した恋愛術も発信しており、その技術を纏めた著作として小説「ぼくは愛を証明しようと思う(幻冬舎刊)」があります。

本作はその漫画版であり、藤沢さんが提唱する「恋愛工学」理論が物語に絡めて紹介されていくという作品になっております。

先日紹介した漫画「ピックアップ」が「成長物語」を描くための道具として恋愛技術を用いていたのに対し、本作は「恋愛工学」という恋愛技術を紹介することが漫画の目的であり、そのための道具として物語形式を用いている点が対照的です。

「ピックアップ」真鍋昌平・福田博一 評価:3点|ナンパを通じて描かれる青年の成長と男同士の友情。現代社会特有の歪な男女関係を添えて【青春漫画】
「ナンパ」を題材とした全2巻の短編漫画。「闇金ウシジマくん」の作者として有名な真鍋昌平さんが原作を務めております。とはいえ、チャラいナンパ師がコリドー街や江ノ島で女性を「ピックアップ」してはセックスする様子を描いた漫画、というわけではありません。主人公はいかにも「陰キャ」な新卒社会人であり、そのバディとなるのがデキる先輩という構図。この先輩が主催する「魁ナンパ塾」に主人公が入塾し、様々なナンパ術を学びながら社会を生きる「漢」としての技量を高め、仕事でも成功していくというサクセスストーリーです。へたれ主人公が「師」の導きで成長し、強さを身に着けながら自立して一人前になっていく。そんな少年漫画を彷彿とさせる大枠ながら、自由恋愛と「男女平等」が隅々にまで行き渡った現代社会の闇を何でもないことのように描くことで却って生々しく表現しているという面白い作品。都市部で生きる若手社会人なら共感できること請け合いでしょう。あらすじ主人公の南波みなみ春海はるうみは都内の出版社に勤める新卒社会人。配属希望はマンガアプリの開発部門だったが、実際に配属されたのは女性誌の編集部。当然ながら、おしゃれ感が振りまかれ...

そんな本作ですが、まさに「恋愛工学入門」という位置づけに相応しい漫画であると思います。

一般的な発想ではまず思いつかない「恋愛工学」の理論と技術が次々と紹介され、主人公による実践を通してその具体的な方法と成功までの道筋が描かれていきます。

聞き慣れない用語が心理学的な補足を伴って上手く説明されており、そんなに都合よく「モテ」を解決してしまえるのか、と疑問に思うこともなくはないのですが、それなりに理解・納得しながら読み進めることができますので、「恋愛工学」という未知な世界への入門書としては優れています。

主人公の心理描写がやや浅く、また、「恋愛工学」の成功率が高すぎて試行錯誤や葛藤といった物語としての面白さは平凡なものですが、恋愛工学の用語や雰囲気を一通り掴むのにはうってつけでしょう。

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あらすじ

主人公の渡辺正樹(わたなべ まさき)は26歳、東京の弁理士事務所で働く若手弁理士である。

そんな渡辺には麻衣子(まいこ)という彼女がおり、結婚まで考えていた。

しかし、麻衣子にはそんな気などさらさら無く、渡辺には貢がせるだけ貢がせておいて自分は浮気に耽り、最後は縋りつく渡辺を手酷く振るような女だった。

あれだけ尽くしたのに、どうして女性はこんな酷いことをするのか。

思い悩む渡辺の前に現れたのは、永沢という男。

渡辺の前で華麗なナンパテクニックを披露した永沢に、渡辺は「モテ」のテクニック、すなわち「恋愛工学」を教わることになり......。

感想

これまでの恋愛理論で主流だった「お友達から」始めようとする手法を「フレンドシップ戦略」と呼び、そのようなやり方は「非モテコミット」だと断じるところから始まる本書。

全く新しい恋愛理論である「恋愛工学」を標榜するだけあって、内容はやや過激ながら非常に具体的です。

「オープナー」「ラポール」「イエスセット」「ペーシング」「ミラーリング」「ACSモデル」「ボーイフレンドクラッシャー」

全3巻と短いながら、次々と「恋愛工学」の用語が紹介され、渡辺がそれらを駆使しながら次々とベッドインに成功する様子が描かれます。

そんな「恋愛工学」の思考枠組みを私なりにまとめると、「優しいだけの男」が一番ダメで、「面白くて頼りになり、積極的でときに強引ですらある男性」が最良なのだ、といったところでしょうか。

女性の心理を半ば支配し、陶酔感と安心感を与えて距離を縮めながら、セックスへの罪悪感を減らしていく。

なんとなくですが、少女漫画のヒーローになるにはどうしたらよいか、という感覚に近いかもしれません。

しかしながら、このような「恋愛工学」手法が世間ウケすることには隔世の念を感じます。

おそらく、本書が勧める手法自体は、公表されていなかっただけで古くからあるものなのでしょう。

ただ、こういった手法を使って女性を誑かす男は軽薄な遊び人であり、最終的には女性を幸せにしない。

だから、男は「恋愛工学」的に振る舞いたくても我慢して、女性に対して「誠実」であるべきだ。

女性を騙すように篭絡する「ナンパ」への誘惑を断ち切り、実直な「硬派」であろう。

それがこれまで主流の価値観だったと思います。

「恋愛工学」的には振る舞わず、「誠実」な態度で女性に尽くす態度こそ、「他の男とは良い意味で違う」というメッセージを発するのがフィクション作品に与えられた使命なのだという暗黙の了解さえあったと言えるでしょう。

しかし、本書はそんな「誠実」こそ「非モテコミット」なのだと断じて退けます。

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