「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」村瀬修功 評価:2点|普遍的なサスペンスに見せかけたガンダムオタク向け作品【アニメ映画】

閃光のハサウェイ

1979年から続く「機動戦士ガンダム」シリーズの最新映画で、1989年に発売された同名小説が原作となっております。

いわゆる「ガンダム世界内の歴史」においては「逆襲のシャア」という映画の続編にあたり、初代ガンダム(ファーストガンダム)が宇宙世紀79-80年を描いた作品であるところ、本作は舞台は宇宙世紀105年、つまり約35年後の世界。

とはいえ、私が鑑賞した限りでは「逆襲のシャア」を知らなくても鑑賞に問題はないと思われました。

しかし、本作の問題は別の場所にあります。

気取らないドキュメンタリー調の演出や素晴らしい作画は褒めることができますが、物語の筋があまりにも意味不明で、市街地戦は迫力がある一方でモビルスーツ同士の戦闘は魅力に欠けます。

また、登場人物たちの寒い言動も影響してか、どうしても「子供が考えた『大人の世界』を描いた映画」という印象を抱いてしまいます。

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あらすじ

宇宙世紀105年。

人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになって、すでに半世紀と35年が経過した世界。

地球に居住できるのは選ばれた特権階級とその生活を支えるエッセンシャルワーカーのみとなっており、不法滞在者は宇宙に強制送還されるなど、アースノイド(地球人)とスペースノイド(宇宙人)の格差は不公正な拡大を続けていた。

そんな状況に反旗を翻し、全人類の例外なき宇宙移住を掲げる武装集団「マフティー」。

彼らが連邦政府高官に対してテロ攻撃を仕掛ける事件が頻発するなか、アデレードで行われる連邦議会に参加するため、大臣たちを乗せた往還シャトル「ハウンゼン」が宇宙から地球に向かっていた。

そして案の定、恐れていたテロが実行されてしまう。

「マフティー」を名乗る集団によりハウンゼンはハイジャックされ、犯人たちに対して反抗的な態度を取った二人の要人が殺害されてしまったのである。

しかし、この「ハウンゼン」には、大臣でもその親族でもない二人の男と一人の女も搭乗していた。

一人目の男は、ケネス・スレッグ大佐。

マフティ―の本拠地があるとされる南太平洋、その地域でマフティー掃討部隊の新任司令官として着任することになっている。

もう一人の男は、ハサウェイ・ノア。

宇宙世紀70年代から90年代にかけての戦争で活躍した英雄、ブライト・ノアの一人息子。

そして、謎めいた美貌の少女、ギギ・アンダルシア。

ケネスとハサウェイの活躍によりテロリストたちは捕らえられるのだが、この事件がきっかけとなり、三人の運命は激しく交錯していくことになる......。

感想

冒頭のテロ鎮圧場面から「マフティー」によるダバオ市街地襲撃までは、脚本や台詞回しはともかく、全体的に演出が硬派で良い雰囲気を醸し出していました。

お偉方が乗る航空機がハイジャックに遭い、それを乗り合わせた青年と軍人が解決する。

青年と軍人は友情を深め、命を助けられた奔放で不思議な少女は二人に想いを寄せる。

英雄として遇される青年には高級ホテルが用意され、着陸地ダバオを出ない限りはお金も使い放題だと言い渡される。

しかし、青年の態度はどこか頑なで、美貌の少女とのロマンスにも積極的ではない。

仄めかされるのは、青年こそがマフティーの首謀であるという可能性、そして、少女はそれに気づいているということ......。

学園モノやファンタジーが主勢を占めるアニメ業界の中で、政府機関や刑事警察機構、軍隊を中心とした物語を描くというだけで良い意味での珍しさがあるというのに、現実寄りの人物作画と静かさを強調するような演出によって大人のサスペンス的な魅力がぐっと引き立てられているのが素晴らしく、そんな序盤の展開には惹かれました。

ケネス大佐のちょっと寒い色男的な言動や、ギギのいかにも「アニメの女の子」的な喋り方にはやや辟易する側面もありましたが、それでも総合的には良質な展開だったと思います。

特に、ギギはいかにも「相手の思考が読めている」ような会話を、特にハサウェイに対して行うので、この人物は「ニュータイプ(※)」 なのだろうかと推測しながら観ていました。

※ガンダム世界に共通して登場する概念。相手の思考を読んだり、物体の動きを先読みできる能力を持った人類のことで、ニュータイプ同士はテレパシーでの交感も可能。ただし、極めて限られた人数にしか発現しないうえ、戦争のような極限状況の中でニュータイプとしての能力が「開花」していくことが多いという特性上、世間的には非現実的な創作話だと捉えられており、公的機関も表向きにはその存在を否定している。

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