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「ビジネスマンの父より息子への30通の手紙」キングスレイ・ウォード 評価:2点|硬派なビジネス・エリートによる人生の指南書【生き方】

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ビジネスマンの父より息子への30通の手紙
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カナダ人の実業家、キングスレイ・ウォード氏が実の息子に宛てた手紙という形でビジネスマンとしての理想的な生き方を説く著作です。

大学進学を控えた息子に贈る第一通から、会社を継いで新社長となる息子に贈る第三十通まで、ビジネスで成功する秘訣から、プライベートを含めた人生全体を成功させる秘訣までを、いかにもこの時代のアングロサクソンな父親らしい、情実のある書きぶりで語っていきます。

実質的な中身としては、様々な自己啓発本やビジネス書に書かれている内容と重複するものばかりですが、平易な書きぶりと、息子の成長に合わせて段階を踏んで物事を伝えていくという部分に独自性があります。

ただし、本作が善として推す価値観はまさに(カナダ人ですが)アメリカン・エリートのそれであり、いわゆるバリキャリ的で家父長的な行動原則に満ち溢れています。

そういう書籍が好きな人、あるいは、エリートビジネスマンや管理職として、好んでタフな交渉に臨んだり、進んで部下を率いている人にとっては得るものがあるでしょう。

ただ、文芸や映画が好きな人にとって面白い本かと言われれば、ちょっと胃もたれがするかな、といった印象です。

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目次

第一通 敢えて挑戦を
第二通 教育の設計
第三通 成功について
第四通 惰性的な生き方には
第五通 実社会での最初の日々
第六通 誠実さの代価
第七通 「企業家」とは何か
第八通 経験の重みに代えて
第九通 部下との衝突
第十通 共同事業への誘惑
第十一通 結婚を気軽に考えないで
第十二通 事業を拡大する上で重要なこと
第十三通 金銭感覚はどうなっているのか
第十四通 講演は自信を持って
第十五通 礼儀正しさにまさる攻撃力はない
第十六通 銀行融資をとりつけるには
第十七通 政府の検査官について
第十八通 多角経営は会社を安定させるか
第十九通 読書の価値
第二十通 効率的な管理とは何か
第二十一通 人生の幸福とは
第二十二通 社員を解雇するとき
第二十三通 友情は手入れしよう
第二十四通 批判は効果的に
第二十五通 自分の財布の管理も計画的に
第二十六通 常に備えよ
第二十七通 ストレスと健康
第二十八通 優れた指導者の条件
第二十九通 生活のバランスを保とう
第三十通 あとは君に任せる

感想

目次をご覧になって、これは自分が読むべき本だと合点した「ビジネスマン」な方々もいらっしゃれば、こんな意識高い系の言うことなんかやってられない、自分はもっと自由奔放に生きるんだ、という方々もいらっしゃるでしょう。

上述の通り、端的に申し上げれば、アメリカン・エリートの父親が意識高く息子を諭しつつ一人前のビジネスマンに育てていく本となっておりますので、本書を読んでいると怒涛のように人間かくあるべしという言説が降り注がれます。

ただ、その中でも、まだ大学生の息子に宛てて手紙を書いているうちは万民の共感を得られる内容だと感じました。

十八歳の君は、十年後にどんなことをしたいのかビジョンを持つべきである。

二十歳から三十歳のあいだに、将来の仕事に必要なことを学ばなければ一生学ばずに終わる。

三十歳を過ぎれば君の生活は妻子のものになり、キャリアのための学習はできない。

この辺りは、それを実行してきたにしろ、してきていないにしろ、身につまされる人が多いのではないでしょうか。

自分の息子にそう言い聞かせてやりたいと思う人も多いでしょう。

とはいえ、一般的な「息子」さんはこんな高尚な諭言に耳を貸すこともないだろうというのも一般人である私の思うところです。

本書については、父親も父親ならば息子も息子で、高校ではバスケットボールチームの主将であり、なおかつ、軍事教練隊の隊長も務め、学業成績も優秀だという、出来過ぎた息子なのです。

性格も誠実に仕上がっており、大学時代に少し勉学で手を抜くことはありますが、ビジネスの世界に入ればいつも実直に仕事をこなしていくような人物です。

そんな精神年齢が実年齢よりも十歳は上だろういう息子さんに向けて書かれる手紙なのですから、一般人からすれば、まさに社会人としてしばらく仕事に従事したあとに読むと理解が追いつき納得できる内容となっております。

さて、大学を卒業した息子は新卒の会社員となり、そのまま順調に出世街道を駆けのぼっていきます。

そんな息子に、著者が伝えるのはまさに人生全般に関わる事柄たち。

お客さんとの交渉方法、部下との接し方、結婚相手の選び方、金銭感覚についての指導、講演の仕方 礼儀の重要性、 社員の解雇に際して気を付けること、銀行からの融資の受け方、優れた指導者の条件。

読んでいると尤もだと思うことが多いのですが、同時に、こんな立派な人間にはなれないよと感じてしまう内容ばかりです。

ただ、本書の著者は1932年生まれであり、篤実な父親でもあります。

それゆえ、新自由主義的で現代的な経営学を嫌っている節がある点は面白いと思いました。

例えば、田舎のホットドッグ・スタンドの例を引いて著者が経営を語る場面があります。

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