第6位 「1984年」ジョージ・オーウェル
【全体主義の恐怖を描いたディストピア小説の古典的名作】
・あらすじ
舞台は架空の1984年。
世界は3つの大国に分割支配されていた。
ユーラシア、イースタシア、そしてオセアニアである。
オセアニアの首都ロンドンに住むウィンストン・スミスは真理省記録局に勤める中年男性で、過去の新聞などの記録を改竄する仕事をしていた。
そう、オセアニアでは党が発信する都度都度の情報こそが「事実」であり、それにそぐわない過去の記録は全て書き換えられてしまうのである。
それどころか、国民の生活はいたるところに設置された「テレスクリーン」で監視され、少しでもおかしな挙動があれば「思考警察」に逮捕されて拷問を受けてしまう。
子供たちへの洗脳教育も凄まじく、党による独裁体制は揺るぎないものに思われた。
そんなある日、スミスは同じ真理省の創作局に勤める女性ジュリアと出会う。
ジュリアは表向き模範的な党員として振舞いながら、実は陰で党規違反のセックスを楽しむなど、党の方針に疑問を持ちつつ自分自身の快楽を追求する人物だった。
党による統治に疑問を抱く者同士として惹かれあう二人。
やがて、「ブラザー同盟」という反体制地下組織に接触し、党の統治の矛盾を赤裸々に表明した「禁書」を読むことになる。
スミスは己の地位を捨て、ジュリアと地下活動のために尽くすことを決意するのだが......。
・短評
全体主義的な支配体制の描き方という点では脱帽するばかりです。
当時のソ連やドイツの政治を見聞きするだけでこれほどの想像力を働かせられるオーウェルの小説家としての力量、それはいまさら私が言及するまでもないでしょう。
ビッグ・ブラザーやイングソック、ダブルシンクという造語はいまでも政治が全体主義に傾きかけたときに用いられるくらい一般用語となっています。
後世の政治への影響力という意味では世界史におけるNo.1小説なのではないでしょうか。
オセアニア及びこの1984年の世界を支配する政治的状況を現代社会に重ね合わせて戦慄しつつ、スミスとジュリアのサスペンス的な冒険譚を楽しめる作品です。
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